第47話 指導室に呼ばれたのである
「リリス・ヴァリアント。指導室に来なさい」
と、コーデリア・セイジクラウン先生が言ったので思わずガッツポーズを取った。
「喜んで!」
ザワッとクラスがざわめく。
「待ってください先生! リリスは自作自演なんてしていません!」
フレイヤが立ち上がり叫んだ。
コーデリア・セイジクラウン先生は、苦い顔をしてうなずいた。
「知っています。ですが、誰かが悪意を持って噂を巻いたことで、リリス・ヴァリアントおよび数名の生徒がそれに便乗して退学騒動を起こそうとしています。噂のまま沈静化したのなら静観しましたが、騒いでいる者たちからは話を聞かねばなりません」
あれ?
私も騒動側の人間らしいよ?
フレイヤはそれ以上何も言えずに黙って座った。
私はフレイヤに礼を言う。
「私をかばってくれてありがとう。でも、いいの。……フレイヤ、落ち着いたらいつか連絡するわ。元気でね……」
「絶対に、抜け駆けなどさせませんわ……!」
おかしいな、礼を言ったら呪詛を吐かれたぞー。
*
コーデリア・セイジクラウン先生と一緒に指導室へ行った。
椅子に座ると、学園長もやってきた。
「ようやく退学ですね。短い間でしたがお世話になりました」
私が挨拶をすると、学園長が即否定した。
「残念だろうが違う。……女子寮、続いて男子寮に君の中傷が書かれた文が貼られたのだが、やった人間に心当たりはあるかね?」
えー……。
「そんな騒ぎを起こした私を退学にしなくていいんですか?」
コーデリア・セイジクラウン先生がため息をつく。
「もし、本当に自作自演を行ったとしたら、退学どころの騒ぎではないんですよ、リリス・ヴァリアント」
私は肩をすくめながら両手を広げる。
「だって、証拠がないでしょう? 誰だか判らない誹謗中傷の貼り紙は、単なる中傷で証拠になりません。ですが、学園内で騒ぎを起こしたという事実だけは残ります。騒ぎを起こした程度では、刑罰を与えられるわけがないですよね?」
「もちろん。騒ぎを起こした程度では、退学にはなりませんよ。もしそれで退学処分になるというのであれば、アドリアン・ソル・ユニウス第一王子殿下、オーレン・レグナード侯爵令息、そして貴女の姉のケイラ・ヴァリアント男爵令嬢も対象になるでしょう」
……別にそこは対象になってもいいんだけど……。
私がどうでもよさげに首をかしげると、学園長とコーデリア・セイジクラウン先生がため息をつく。
「君の姉はともかく、第一王子と宰相の息子が君を退学にしようと騒ぎ立てているのが問題だ。心当たりはないのか?」
学園長に尋ねられたので、私は答えた。
「友人が言うには、彼ら、私の気を引きたいそうですよ。好みじゃないので困ってます」
マジで好みじゃない。
当主様より強くなってから出直してこい。
学園長が額に手を当てる。
「……解って言っているんだろう? 貼り紙をしたのは彼らだ。困ったことに、彼らはこのまま順調にいけば次期国王と次期宰相なのだ。その二人が、君が自作自演で行ったと主張している。貼り紙に関しては、君を恐れている者が非道な行いに目をつぶったままではいられないからと正体を隠して貼ったのだろうと推論を立てているのだ。……その主張に対しての反論は?」
私はキッパリと返す。
「証拠がないですよね。やったという、確たる証拠を提示しなければ、誰でも犯人に仕立てあげられますよ。それこそ、第一王子がやったということにも出来ますけど。あと、その証拠がなければ父が出てくるでしょう。父がソレっぽいことを言ってました」
あ、学園長が深刻なため息をついた。
「……君は、少々変わった魔法を使うね? 詠唱すると魔法陣が現れ、そこから武器などを取り出せるそうだが」
「はい」
なんなら、ガチの召喚も出来ますよ。言わないけど。
「彼らは、そこから魔物を出したのではないかと主張しているのだ」
へぇ。
うまいこと考えたな。
「なるほど。私が『魔物は召喚出来ない』と答えても、『召喚出来ない』という主張だけなら証明にはならない、ってことですね? ……何せ、聖魔法でそんなのを使うのは私一人。同じ魔法を使える人がいないかぎり、証拠はないということか」
私が言うと、二人が苦い顔をした。
「私の魔法、植物以外の生き物は入らないんですけどね~……。ま、その証明は難しいんですけど、魔物に関しては証明出来るんですよ」
それを聞いた学園長は目を見開き、コーデリア・セイジクラウン先生はホッとした顔をした。
私は笑顔で告げる。
「私のこの『聖納』という魔法は、聖なる場所へ物を入れたり、そこから出したりする魔法です。聖なる場所ってどこか知らないんですけど、そこは聖なる場所なので、他の属性……特に魔を嫌うんです。例えば、呪われた魔剣なんかを収納すると、呪いを解呪し、さらには聖属性を付加して返してくるんですよ~」
「「ハァ!?」」
学園長とコーデリア・セイジクラウン先生が、声を揃えて驚いた。
「父に、『魔剣を保管しといて』って頼まれてブチ込んでおいたんですけど、どうなったのかなと思って試しに取り出してみたらそうなってました。なので、この魔法に関しては証拠があるんです。物証は、父が持ってますし、呪われたアイテムがあったらやってみせますよ。……有料で」
最後にそっと付け加えた。
無料でやるなと父に言われてるからね!
「私が狩った魔物を魔法で収納しないのは、その理由があるからです。違うものになっちゃうんですよ。魔石なんかも変わってしまうので、冒険者として依頼された場合は絶対に収納しません。依頼された魔物じゃなくなっちゃうから~」
料理……ギリで食材まで加工してあると変質しないんだけど、そうじゃないと、下手すると消えちゃうからさ〜。
「『聖納! 魔石……だったもの』」
詠唱すると、魔法陣が現れて、手に透明でキラキラした石が落ちてきた。
「これが、コボルトの魔石だったものです。こういう感じになっちゃうんですよね……。これはこれで使い途があるけど用途が違うって父が言ってました~」
学園長が、見せてというので、手渡した。
コーデリア・セイジクラウン先生も一緒になって見る。
「……これは、浄化のクリスタルか?」
「聖石かもしれません。……水に入れたら聖水が出来そうな……」
うん。そんな感じに使ってたよ。
井戸の中に放り投げると、水がおいしくなるってさ。
あと、たとえ毒を入れられても大丈夫とか言ってたような?
私の水魔法の聖水とはまたちょっと違うらしいけど、よくわからない。
「これを、証拠として提出しないかね?」
と、学園長に言われたのでニッコリ笑顔で告げた。
「父と価格交渉してください。私の一存では無理でーす」
私がそう言ったら魔石を返してくれた。




