第45話 皆と打ち上げで盛り上がったのである
なんとかレイヴンを引き止めた。
というか、気をそらせた。
「蛇のフライは、本物の方がきっとおいしいって! ……それより、王家の騎士団が強制的にケルベロスの肉を召し上げないよう、とっとと『竜の角亭』に持っていこうよ!」
「そうだな。急ごう」
いや~、ヤバいね。レイヴンの食に対する執念が怖い。
そのうち絶対にケルベロスの肉をかっぱらった奴を見つけそう。
――そして現在、魔法クラス全学年で打ち上げイン『竜の角亭』です!
貸し切り状態かと思いきや、知らない冒険者さんが交じってたりする。
いや、奢りませんよ?
……って思ったら、マスターが私に言った。
「安心しろ。学生にたかるような真似はさせねーよ。むしろ、多めにぶんどるからよ」
「わぁ! さすがはマスター!」
分かってらっしゃる!
いや、魔法クラスってさー、わりと貧乏貴族が多いのよ。
というより、高位貴族は貴族クラスに行っちゃうんだよね。
魔法で戦ったり魔法を研究したりしているのは、低位貴族。
長男以外でも、伯爵より上は貴族クラスに行ってしまうのよ。
じゃあ、高位貴族にお抱え魔法士団がないのかというと、ある。
だけど、子息子女は貴族クラスで、魔法の授業を取るくらい。
どうしてかというと、戦わないから。
低位貴族は自ら先頭に立って戦うんだけど、高位貴族は指示をするけど戦闘はしない。フレイヤのように戦いたいなら魔法士団に入れ、って言われなければ入らない。
就職先が決まってるっていうのは、こういうこと。
低位貴族の魔法クラスにいる人たちは、どこかの高位貴族の寄子だったり、なんなら親戚関係にあったりして、そこで話がついちゃっていたりするのだ。
考え方の違いで、魔法クラスに入る子たちは、貧乏貴族で魔法士団に入ることが当たり前って考えで、高位貴族の場合……伯爵以上は指示を出すけど戦わないのが当たり前、って考え。
もっと言うなら、魔法士団より騎士団行けって考えらしいよ?
ケルベロス戦でもあったけど、魔法士団は魔法を撃ちまくって敵を弱らせて、騎士団に倒させるのがセオリーっぽい。
「……だからさー、実際は使い潰しよ。魔法士団ってのは、騎士団に花を持たせるための前座。騎士団の連中は『いなくてもいいけどいるなら攻撃させてやるよ』って思ってるね! そのわりに、魔法士団を必ず連れていくくせにさ~」
一位の先輩がくだを巻いてます。
「だから、よくやった! リリス・ヴァリアント! アレ、魔法とは到底思えないけど、でも間違いなく魔法だ! 魔法でやっつけた! 騎士団の連中の鼻を明かしてやったぞバーカ!」
……働くのって大変なんだなぁって思いました。
私はやっぱり冒険者になろうと思います。
それはさておき。
ケルベロスの肉は、マスターによりサイコロステーキになりました!
「すっごく、おいしい!」
ジューシーで、嚙むとじゅわっと肉汁が溢れる!
ステーキソースはさっぱりめで、こってりしたお肉によく合ってる!
「うぅ、うまいよう……!」
泣きながら食べている人もいるわ。
「……胴体も回収出来ていたら、あばら肉も手に入ったのに……! 盗んだ奴、絶対に許さん!」
あ、レイヴンがまだ呪詛を唱えているわ。
私は、んー……と考えてから、マスターに言った。
「ここ以外で、ケルベロスの肉を仕入れたって店があったら教えてくれない? 頭と胴体、盗まれちゃってさー」
「マジかよ。……よし分かった、任せておけ」
マスターが請け負ってくれた!
魔法クラスの皆さんも、『竜の角亭』が気に入ったモヨウ。
「父が、『貴族は魔物を食さない』って言ってたけど」
私がボソッと言ったら、皆さん顔を見合わせている。
「……うーん。建て前的にはね」
「しょっちゅう食べるというわけじゃないけど、動物の肉より手に入りやすいからね……」
「まるきり食べないっていう貴族は、高位貴族か裕福な貴族だね。特に魔法士団や騎士団に所属していると、魔物肉が手に入りやすいから、食べたりするよ」
って教えてもらった。
……そういえば、当主様がヴァリアント男爵家は裕福だって言ってたな。
ということで、貴族でも魔物肉に抵抗がないのでコッソリ来るらしい。
なんでコッソリかというと、やはり貴族なので体裁が悪いそうだ。
今回は、学園に現れた大型の魔物を討伐し、祝いとしてその肉を食すためという大義名分でここに来たけど、親にバレたら怒られるってさ。
貴族って大変だなぁ。
*
翌日は、騎士クラスの大会。
もちろん魔法クラスは誰一人として観に行かなかった。
魔法クラス的に、騎士クラスは敵っぽいよね。
ケルベロス事件があったため、魔法クラスはお休み。
部屋でのんびりと過ごしつつ、セラフに語りかけた。
「そういえば、昨日は助けてくれてありがとね。……でも、部屋にいたはずなのにどうして現れたの?」
「なーん」
え?
私が呼んだって言ったんだけど、この子。
「いや、呼んでないって」
「なわーん!」
呼んだって言い張ってるし。
「えぇ……? そんな魔法知らない……」
……って思ったけど、待てよ?
そういえば、セラフがどっかに行っちゃったときに呼び出せればいいなーとか考えて、召喚魔法を考えたことがあったっけ……。
「いやアレ、成功してなかったし。詠唱してないし」
「うなーん」
いやいや詠唱は知らんけど呼び出しましたし、ってセラフが言う。
私は考え込み、立ち上がるとセラフに行った。
「ちょっとそこで待ってて」
そして部屋を出ると階段を下りて、中庭に出る。
「『聖呼! セラフ』」
おっと、ちょっと離れたところに魔法陣が出来てセラフが飛び出てきたわよ。
「手品のようだぜ……」
「なわーん!」
ホラ呼んだじゃん、って言われました。
「うーむ。これがバレたらもしかして私が犯人にされるかも?」
自作自演で危険な魔物を召喚したとか言われそう。誰にとは言わないけど。
「……いやコレ、もしかしてケルベロスの胴体も召喚出来ちゃうか? でもやめとこ」
絶対に犯人にされるわー。
というか、もう食べられちゃってるかもねー。お肉おいしかったし!




