第42話 お肉を上手に焼いたのである
トップバッターの三年生は凄かった。
「――我、気高き雷光の剣を持ち汝の罪を問う。その剣、汝の罪を暴き身を焦がさん。かくて汝、雷光の剣をその身に浴びよう――ここに終焉を示せ! 雷光の剣!」
何その詠唱……。
考えたの? すごくない?
魔法もめっちゃ派手だし。
恐らく威力的にはそうでもなさげなんだけど(的に当てただけで、黒焦げになるとかはなかった)、魅せプレイというものが解ってやっているという感じ。
思わず控え所にいる全員が拍手してしまった。
お、観客席や、審査員も拍手しているな。
トップバッターの三年生、面目躍如。
以降は、ショボい。
というより、やる気がない。
これは……アレだね、レイヴンが言っていた「手の内を隠す」ってヤツだ。
恐らく、トップバッターの三年生も威力はたいしたことがなく派手な魔法を研究して、それをお披露目したんだろう。
そして控え所は最後の肉パで盛り上がっている。
追加で三年生が肉を買ってきたし。
「打ち上げしようよ」
「肉を焼くの、いいよな。これから一年生の代表が最後に肉を焼く魔法をやるってことにしない?」
「火魔法、一学年に一人はいるはず。よし、研究させよう」
「後輩に申し伝えていこう。最初のオリエンテーションのときに言うか」
と、とんでもない伝統が出来上がりそうな……。
ちなみに私は火属性ではないんですよ?
「……フレイヤ、貴女が申し伝えないとですわよ? 私、属性が違いますもの」
「うぅ……。リリス、教授していただけません? 私、火力の調節は難しいんです……」
二人でコショコショ話し合った。
肉パを期待しているのか、先輩たちのピッチが速い!
余韻もへったくれもなく、次々と入れ替わる。
観客も審査員も若干戸惑っているわよ!
あっという間に一年生まで回ってきた。
トップバッターはフレイヤ。
なんか緊張しているな……って思ったら失敗したよ。
そして、次々と失敗していく一年生。
もしやわざとか?
「なんで失敗してるのよ!?」
「威力調整って難しいのよ……」
「意識すると、失敗するのよね」
ホントか!?
ワザとじゃないの!?
そしてレイヴンの番になった。
特に気負わず、スッと弓を構え、
『風魔法。追い風』
短く詠唱して矢を放った。
スターン!
……と、確かに速いかな? って感じに的に刺さる。
観客は、どう反応していいかわからないようだ。
審査員は、ゴニョゴニョと審議に入りました。
レイヴンは即引き返してきて、蕩けるような笑みを浮かべて私に言った。
「さぁ、君の番だよリリス。……私は君の素晴らしい魔法を間近で見たいのだが、その栄誉を得られるだろうか?」
「ダメに決まってるじゃん。コーデリア・セイジクラウン先生がサポートについてくれるし、審査員に運ぶ前にキミ、食べちゃうでしょ」
一刀両断した。
私がどうみてもバーベキューセットを運んでいくと、観客も審査員も戸惑った。
……オイオイオイ、全員が控え所から出てきたんですけど。
マジで肉パする気?
コーデリア・セイジクラウン先生が呆れてるじゃん。
「……新しい伝統で、一年生の最後の生徒が肉を焼くお披露目をして、そのまま打ち上げをするってことになったようですよ?」
コーデリア・セイジクラウン先生が目をつぶる。
が、すぐに目を開いた。
「……いいでしょう。そういうことなら私もそういう方針でいきます」
あ、コーデリア・セイジクラウン先生が開き直った。
戸惑う観客と審査員に知らん顔しつつ、肉を並べる。
「いきまーす。『聖火』」
片手に火を灯す。
というか、別に炭とか入ってないんだけどね。
バーベキューセットのコンロ下に火を置いた。
薄いし小さいのですぐ焼ける。
「『魔物肉なので、嫌なら食べなくていいです。後ろに控えている誰かが食べますから』と、お伝えください」
「わかりました」
コーデリア・セイジクラウン先生が呆気にとられている審査員に持っていって説明する。
……あれ?
意外と全員が受け取ったな?
国王陛下も来てるとか言ってなかったけ?
貴族の頂点である国王陛下が、毒味もされていない肉を食うとな?
現時点で、誰が国王陛下かわからない。
全員が偉く見えるし同じに見える。
……とか考えつつもじゃんじゃん焼きます。
あれほど近くに寄るなと言っていたレイヴンはそばに来ているね。キミ、ホンットーに食に関しては我慢がきかない性格だね!
私は諦めて、焼いた肉を小皿に盛るとレイヴンに差し出しつつ言った。
「……コレ持ってったら、後ろの皆さんにも勝手に取ってと伝えてよ?」
「君の願いならなんでも聞こう」
言葉のチョイスを間違えてるよ!
レイヴンは焼いた肉を受け取ると後ろに下がり、伝えたらしい。一斉に囲まれた。
観客がブーイングを飛ばしている。
「ずるい!」
「食べたい!」
とか言ってるけど、普通にそこから出て食堂に行けばいいじゃん。
先輩方が、持ってきた肉まで焼きだした。
肉パだ。
……ん? 先輩方の持ってきた肉、魔物肉っぽいんだけど……。
「これは、動物の肉?」
「ううん、魔物肉。動物の肉、高いもん」
……そっか。
貴族といえども金銭の問題で、魔物肉が平気な人もいる……というか多いのか。
「うっわ、おいしい!」
「臭みが消えてない?」
「なんかこう……元気が出るような味」
ブーイングもなんのその、肉をつつく魔法クラスの面々。
いやー、打たれ強いね!
そして、ちゃっかりコーデリア・セイジクラウン先生も食べている。
あ、審査員からお代わりを所望されたよ。
ちょっと待って、先輩方と審議に入ります。




