第41話 お肉を上手に焼く決心をしたのである
さて。
打ち合わせ続行。
「就職先が決まってなくて、アピールしたい人~」
尋ねたらいなかった。
「え、マジ? みんな決まってるの?」
私が驚いたら、全員に苦笑された。
「そもそも、魔法クラスに入る実力がある時点で引く手あまたなんだよ」
と、クリス君が教えてくれた。
「今年は一クラスでしょ? それだけしかいないんだから、入学前に打診されているのが当たり前なのよ。むしろ、フリーの人がいたらスカウトしろって言われているわ!」
と、シエラが添えたら、全員がうなずいている。
私はフレイヤを見た。
「フレイヤは? 冒険者になるって言ってたけど、そうなるとフリーなんじゃ?」
「冒険者になりますけど、阻止されていますわ。なら、家の魔法士団に入れって言われてますの。どちらにしろ戦うのだから同じでしょう? ……って」
「同じじゃないでしょ」
ツッコんだよ。
フレイヤもうなずく。
「私は、パーティを組むくらいならいいですけど、組織の歯車は嫌なんですの! 英雄ガレス様のように自由に生きたいんですわ!」
フレイヤが高らかに宣言したよ。
「……父を見習うと、おなかをぽっこりさせて早々と冒険者を引退することに……」
「あああ~! やめてくださいまし~!」
フレイヤが両耳を塞いで突っ伏した。
定期的に夢を潰しておかねばね!
シエラが苦笑しながらフレイヤの頭をポンポン叩いて慰める。
「はいはい、分かったから。……でも、リリスは火の魔法でいいの? 観客は期待しているんじゃない?」
「期待を裏切り、待遇を悪くさせて退学になりたいからね~」
とたんにフレイヤが、
ガッ!
と、私の腕を掴んだ。
「……絶対に退学になどさせませんわ……」
怖いよ!
相談した結果、全員が全員ショボい魔法を使うことになった。
三年生を差し置いて、一年生が目立つのも良くないしってことでね。
ただ、三年生も就職先が決まってるはずだってことだ。
むしろ、決まってなかったらスカウトするわと言う。
「家に魔法士団がある貴族はそこへ入るでしょうし、家が研究職の貴族ならばそこで研究するでしょう。魔法クラスでフリーの存在は、リリスくらいでしょうね」
おっと、それを言ったらレイヴンが入ってないぞ。
チラリとレイヴンを見たけれど、全員が無言で首を横に振る。
頭数に入れてはいけない人のようだ。
「私も頭数に入れないでよ。誰にも雇われないわよ、冒険者になるんだから」
そう言ったら、クリス君に心配された。
「……でもいいの? コーデリア・セイジクラウン先生があんなことを言ったってことは、陛下がご観覧されるってことだと思うよ? しかも、目当てはリリス」
「なら、よけいに絶妙な火加減でお肉を焼くわよ! ガッカリさせてやるから!」
冗談じゃない。
冒険者になるんだから、囲い込みされたらたまらないわ!
特に第一王子とやらにさんざんインネンつけられてんだからさ、より王家の囲い込みはお断りするわよ!
*
そして、とうとう魔法クラスの大会が開かれた。
三年生、二年生、一年生の順番に披露する。
基本的に三年生の卒業のお披露目の要素が高い。
なので、三年生は(談合の結果、一位を取ることになった代表が)ちょっとだけ気合いを入れて魔法を披露するのだ。
――昨日、打ち合わせしていたら三年生が現れて、こういう魔法を披露するので被らないでほしい、もし被ったら威力を弱めてほしいという打診があったのよ。
念のため、こちらも「こういう魔法にしますけど大丈夫ですか」という話し合いがなされ、オッケーということになった。
私の肉焼きに関しては、
「え? 肉を焼くの? いいけど……」
という、なんとも言えない反応だったわ。
私は最後にされた。
最初に肉を焼いたら、ずっといい匂いがしてるでしょ、ってことだ。その通りね。
魔物のお肉を用意したよ。
腐りにくいから!
貴族は魔物肉を食べないみたいだから、その辺も考慮したよ。……食べたくないって言わせるためにね!
拒否られたらレイヴンが全て平らげるでしょう。
全力で貴族の反感を買い上げ、評価を下げる方向に向かってやる!
訓練場に魔法クラス全学年が集まる。
トップバッターは、一位予定の先輩だ。
これってもう、「この人を一位にしなさいよ!」って言っているようなモンなんだよねー。
審査員ってさ、途中退場は出来るけど途中入場は出来ないときたもんだ。
トップバッターに票を入れて帰っていいですよ~的な!
観客は、票を入れられない代わりに入退場自由。
……ま、本気を出さない魔法クラスの大会を見たいって奇特な人はいないだろうねって思ったら……。
「うわ、凄!」
満員御礼じゃん。
控え所から観客席を仰ぎ見たけど、空席がないんですけど。
「今回は〜、シルバーウインド様とリリスがいるから~」
レティシアが苦笑気味に言う。
「リリス……。本当に肉を焼く気ですの? 絶対に期待されていますわよ?」
フレイヤが私に問いかけたので、笑顔で答えた。
「最後の最後で肉を焼き、空腹の観客に暴動を起こさせますわ~」
「私が暴動を起こしそうなんだが。一枚だけでいいから私の分を焼いておいてくれ」
レイヴンが訴えてきたよ。
コヤツ、マジで暴動を起こしそう。
「……魔物肉でよかったら、居残った全員に振る舞いますわよ」
審査員が何人いるかわからなくて、たくさん買ってきたから!
見たところ、十名くらいしかいなかったのでいけるでしょう。




