第35話 パーティを組んで討伐したのである
「パーティだから、レイヴンって呼び捨てにするね」
「かまわない。私もリリスと呼び捨てにしているからな」
レイヴンは、なかなか距離感がつかみづらい上に秘密が多いので仲良くしづらいんだけど、レイヴンのほうがそうでもないのかもしれない。
天然か、あまり他人に頓着しないってタイプか。
両方かもな~。
道中、尋ねた。
「なんで辺境伯令嬢の肩書きが使えないの?」
辺境伯の習わしとかかな?
「私が勝手にやっていることだからな。下手に名を出すと、家名に影響する」
「……そうなんだ?」
ヴァリアント男爵家は、気にしないどころか積極的に出せと言ってますが……。
私は首をかしげながら言った。
「……高位貴族だから? 低位貴族は、積極的に家名を使っていこうって考えだから」
「たぶんな。辺境伯ともなると、家名に泥を塗るような行為は出来ない。なので、なるべくは使わないようにしている」
「なるほどね!」
高位貴族は大変だ……。
「ただし、食がからむのなら別だ。辺境伯という肩書きをべったり塗りたくりながら大いに使うね!」
唐突に力説しだしたレイヴン。
「そ、そう……」
やっぱり変な奴だと思った。
「辺境伯令嬢ともなると、冒険者稼業はアウト?」
隠しているっぽかったので聞いてみた。
「いや、推奨されるかな。辺境伯領は、国に仇なす者は魔物から人まで容赦せず倒す。腕試しで冒険者として働いてみるのはよくあることだ。ただ、辺境伯という肩書きでギルドや他の冒険者を威圧するのは品がない」
品がないのか……。
さすがというか、上品だなぁ。
「そっか。私はガンガン品のないことをやるつもりだけど」
って私が言ったらレイヴンが肩をすくめた。
「別に止めないよ。リリスにはリリスの事情があるだろ。私は貴族の権利をほとんど使えないというだけさ」
話してみると、普通に話せる。
探し物以外はタブーじゃないらしい。
前まではとっつきにくい感じで、無駄なおしゃべりに「黙れ」とか言いそうだったけど、そうでもないのか。
で、話しているうちに目的地に到着。
「意外と近いのが怖いよね」
前回は、セラフに乗って移動しないといけなかったのに、歩いて行けちゃう距離に出没とか……。
「冬だから餌が減って、人が集まるところまで出てきたんだろう」
オゥ……確かにそうかもしれない。
ブラブラ歩いているとセラフが唸りだしたので、現れたのが分かった。
レイヴンがチラリとセラフを見る。
「役に立つ従魔だな」
「そういや、レイヴンは従魔を飼わないの?」
「守りきれる自信がない。うっかりにでも戦闘に巻き込んで大怪我を負わせたらと思うと、手が出ないんだ」
そういうことか……。
「まぁ、こういったのは出会いかもしれないね~。セラフは、たまたま裏庭に迷い込んできて、懐いちゃったので当主様の厳命で飼うことになったんだよね。そういう縁があったらレイヴンも飼うといいよ。――というか、懐いたらもう飼わないとダメみたいだし」
……とか話している間にも魔物がすごい勢いでやってきた。
私は手をかざしてワーグを確認した。
「おぉ! けっこういるね! うんうん、いい感じ」
「半分もらうぞ」
「はーい。じゃあ、私も暴れようかな。『聖納。リリスメイス』」
槌矛を出したら、レイヴンの目が見開かれた。
「……なるほど。言うだけあるのか。じゃあ、全部狩られないようにしないとな。お先」
すごい勢いで敵のほうへ走っていったわよ。ずるい!
私も慌ててあとを追いかけた。
「『聖杖!』」
走りながらリリスメイスに属性付加魔法をかける。
つーか、レイヴン速い! なんで!? 足の長さの差なの!?
「『聖闘!』」
身体強化魔法をかけ、突っ込むことにした。
というか、レイヴンはすでに突っ込んでいる。
長剣を使い、鮮やかに倒している。……マジか、言うだけあるね!
「リリース、ダーッシュ!」
思いっきり地面を蹴り、弾丸のごとく敵に突っ込み……。
「ォラァッ!」
リリスメイスを振り抜いた。
ボーリングのピンのように吹っ飛んでいくワーグ。
何頭かには避けられてしまった。チッ!
避けたワーグをレイヴンが斬り伏せる。
「後ろ!」
レイヴンが注意を促したので、タイミングよくサマーソルトキック!
着地すると、リリスメイスを回転させて襲いかかってきたワーグを一網打尽に吹っ飛ばした。
セラフも参戦してしまい、あっという間に片づいてしまった……。
「簡単に終わったね~」
「まぁな。狩り慣れている二人に加えて、中型の魔物まで参戦しているんだから、余裕だろうな」
セラフは魔物じゃないらしいんだけど、じゃあなんなのかって聞かれると困るので訂正しないでおく。
死体を眺めながらレイヴンが尋ねてきた。
「さて。これらを持ち帰るんだけど……。マジックバッグは持ってるか? ないなら私が入れていくが」
「小さいのしか持ってないんだよね。でも平気。セラフが運べるから」
ロープで縛る手間はあるけれど、その程度だもんね。
レイヴンは大きな巾着袋へワーグを放り込み、私はロープでワーグを縛っては、セラフに咥えてもらうということを繰り返した。
「じゃあ、帰ろっか」
「…………そうだな」
セラフが咥えているワーグが宙に浮いているのをガン見しながら、レイヴンがうなずいた。




