第33話 感謝祭を楽しんだのである
その前に、冬期試験。
私は五位。
レイヴン・シルバーウインド嬢が一位。
三位にケイラお嬢様がいた。
「……リリスって、頭が良かったんですのね……」
とか、意外そうな顔をしてフレイヤが言ったよ。
「失礼な! これでも家庭教師には褒められたんだから! あと、勉強は嫌いじゃないよ。学ぶことは好き」
憤ったわよ。
一部、習ってない問題が出たのよね。
恐らく、貴族クラスでしか習わないんじゃないかと思った。
なので、こんなもんかなーという順位だったんだけど……なぜゆえ魔法クラスに編入してきた彼女が一位なのだ?
レイヴン・シルバーウインド嬢が横にいたので尋ねたよ。
「……習ってない問題、出なかった?」
「授業ではね」
というお答え。
「……むむ。そういうことか。伊達に図書室に通っているわけではないと」
「そういうこと」
普通に自慢してきた。
キャラが読めない子だと思ってたけど、案外普通なのかな。
順位を確認したので引き上げようとしたら……。
「なぜ、リリス・ヴァリアントが五位なのだ!? おかしいだろう!?」
って、王子サマがインネンつけてきたわよ。
はぁ~っとため息をついたら、レイヴン・シルバーウインド嬢が冷やかすように言う。
「ずいぶんと彼に好かれているな。構ってほしくてちょっかいをかけられてるぞ」
「あー……そういう感じなのかー。子どもすぎて無理だわー」
無視しようっと。
ギャーギャー騒ぐ王子サマをサクッと無視して立ち去った。
レイヴン・シルバーウインド嬢もついてくる。
パーティーをやると決まってから、孤高の麗人はクラスメイトに歩み寄りを見せている。
食べ物で懐柔出来るタイプだったらしい。
「そういえば、レイヴン・シルバーウインド嬢ってランチは食堂で食べてるの?」
「やめた。大量に取ったら怒られたんだ」
「……そ、そう……」
どんだけ取ったんだ。
クールではあるけど、思ったよりもだいぶ変わった子だなーと、レイヴン・シルバーウインド嬢の横顔を見ながら考えた。
*
とうとう冬期休暇の日になった。
ラウンジに集まり、めいめい持ち寄った料理を出す。
とはいえ、ほとんどが屋台で買ってきたもので、なんなら買い出し途中でばったり会うので相談して買ってきた、みたいな感じだった。
私? もちろん作ってきたよ!
クリスマスをイメージして、果物入りのパンプディング。冬場に採れる、甘酸っぱいベリーのような赤い実を入れてみた。
カラメルがパリパリなのがポイント。
それと、ピザを作ってきた。
具を変えて五種類ほど!
前世じゃピザなんてテイクアウトの代名詞だったけど、この世界にはない。似た料理が存在するけど、お店で食べるものだね!
レイヴン・シルバーウインド嬢が、意外そうな顔をして私と出した料理を五回くらい見合わせているんですけど。
「ホホホ。ワタクシ、男爵家の庶子ですのよ。小さい頃からメイドの子としてあちこちお手伝いしておりまして、厨房で料理の手伝いも行っておりましたわ。この程度の料理、余裕ですのよ?」
頬に手を当てて高笑いしつつ答えてやったわ!
「……ふーん。いただくよ」
「いや、無理せんでええよ? あ、冷めるとチーズが固まってイマイチかもね」
と、そっと付け加えておいた。
レイヴン・シルバーウインド嬢は、かなり大量に持ってきた。
屋台を全制覇したんじゃないかってくらいに。
……彼女、かなりの大食いなのかもしれない。
全員がドリンクを手に取り掲げる。
本来、乾杯の音頭は一番爵位の高い人がやるんだけど、レイヴン・シルバーウインド嬢は絶対にやらなさそうだし別の人がやっても怒らなさそうなので、フレイヤ・ストームハート嬢が音頭を取った。
「では、僭越ながら……神の恵みに感謝を」
「「「感謝を」」」
カップを掲げ、一気に飲み干す。
神への感謝を示すため、小さな杯に酒を入れて全て飲み干すのが習わしらしいよ。
杯なんてないので、カップに少量ジュースを注いで飲んだ。
村の祭りだと子どもでも酒なんだけど、酒は高いしおいしくないしでジュースにしたのだ。
本格的なのは皆、帰省したらやるでしょ。
そのあとは、めいめい好きなものを……って、一気にピザに向かった!
確かに、温かくないとおいしくないと言ったけれども!
一気になくなったじゃん!
「……まぁ、いいや。冷めるとおいしくないから、売れ残らなくてよかったって思っとこ」
出遅れた私は食べられなかったけどね。
他の料理をつまみながらなんとなく尋ねた。
「皆さん、帰るんでしたっけ?」
シエラが答えてくれた。
「そうね。寮にいても食事が出ないので、帰ったほうが楽なのよ」
あー……。
低位とはいえ貴族だと、さすがに料理は作れないか。
学園に通う前は着替えも一人で出来ないらしいよね。
寮に使用人を入れるのは禁止らしいし。
「リリスは~、残るんでしょ~?」
「もちろん! こっちに来て魔物を一頭しか狩ってないので、ここらで勘を取り戻さないと!」
腕が鈍ってしまう!
……っていうのは言い訳で、『変なのにからまれても殴れない』というストレスを発散させるために、狩らねば!
フレイヤが心底うらやましそうに私を見ているのでなだめた。
「まーまー。両親の許可が出たら、ついてってあげるから」
そう言ったら、抱きつかれた。
「リリスーーー‼ お願いしますわーーー!」
「はっはっは。任せなさい!」
狩りならいくらでも付き合うわよ!
ふと見ると、レイヴン・シルバーウインド嬢が優雅に休みなく食べている。
「今のところ、どれが一番なの?」
恐らく屋台を制覇しているであろう彼女に尋ねると、こちらを見た。
「君の作った、チーズのかかったパンだ」
と、臆面もなく言ってのけた!
……こ、これは……。
「父のライバルだな!」
絶対、あの女好きが言いそうなセリフ!
全員が噴いた。
私は早口でまくしたてる。
「いや、気を遣ってくれてありがと。でも、どこの屋台がおいしいのかなって思ってさ。参考までに聞いたから、ちゃんと答えてほしいなーって」
レイヴン・シルバーウインド嬢は軽くうなずいて答えてくれた。
「それぞれだな。この屋台のこれがうまいってのはあるが、飛び抜けて一番うまいっていうのは、君の作った」
「ありがと! そう言ってもらえるとうれしいよ」
被せて言った。
やめてよ!
私、けっこうチョロいんだから!
攻略しようとしないで!




