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脳筋聖女は、すべてを物理で解決する。(web版)  作者: サエトミユウ
3章 聖属性の魔法使い、攻略対象をしばき倒す!

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第27話 仲裁に入ったら言いがかりをつけられたのである

「レイヴン・シルバーウインドだ」

 自己紹介されて、あ、串焼きの子だと判明した。

 向こうも気づいた様子だが、とぼけているようなので私も知らないフリをした。

 うーん、確かに中性的だ。

 魔法クラスの制服ってローブだから、ユニセックスなんだよね。

 魔法使いだと男女共に長髪が多いので、髪の長さも当てにならないし。

 ぶっちゃけ性別はどっちでもいいんだけど、ただ、普通は自己紹介で爵位もつけるのよ。

 貴族の学園では爵位が重要。低位貴族が高位貴族に失礼をしたら(普通は)とってもヤバいと奥様から聞かされている。

 ……言わないつもりかな?


 他のみんなもそう考えたらしい。

 フレイヤが代表して尋ねてくれた。

「あの……失礼ですが、爵位をお願いしますわ。間違いがあると困りますもの」

「爵位は、気にしなくていい」

 とか言いだしたので、みんなが困った顔をした。


 辺境伯は、爵位としては伯爵。だけど実質的に侯爵家と同等に位置することになる。

 つまり、ここのクラスの最高位なのよ。

 言わない、ということは、最下位になる。後出しジャンケンで「俺は実は辺境伯の子なんだ気を遣え」って言ってくるかもしれなくて、それがたとえ今更感満載でも、そう言われて無礼にされたと言われても、低位貴族は何も言えないのよ。

 しかたない。私が説明するか。

「あのー……。ここは、貴族の学園で、爵位を隠されるということは最底辺と扱われていい、ということになりますよ?」

 私が怖ず怖ず、といった雰囲気を出しつつ言うと、レイヴン・シルバーウインド氏は気にした様子もなく返す。

「別にかまわない」

「……食堂は、高位貴族から順に好きな料理を取っていきます。最下位は、全員取り終わってから余りを取ることになりますが……最悪、パンのみということもあります」

 レイヴン・シルバーウインド氏はキリッとした顔で皆に告げた。

「辺境伯家の娘だ。よろしく頼む」

 手のひら、くるっと返したな!

 ――出会ったときから解ったのよ。

 コイツ、食い意地張ってるなって!


          *


 レイヴン・シルバーウインド辺境伯令嬢は、孤高の人だった。

 群れるのが嫌いらしい。

 そしてかなりの読書家なのか、ちょっとした休み時間は図書室へ足しげく通っている。

「真面目なご令嬢だね」

 つぶやくと、シエルにツッコまれた。

「まるで私たちが真面目じゃないみたいじゃないですか」

 確かに。

 真面目とは違うか。

 なんて言うか……。


「……学生生活を楽しむ気がないみたい?」

「それだ」

 シエルの言葉に同意した。

 そんな感じがする。


 冒険者と名乗っていたので、実際冒険者をやっていたことがあるのだろう。

 途中でここに入ってきたのは、何かしらの目的があるんだと思う。

 私なら、冒険者をやっていたら学園に編入しようなんて思わないし、若い頃の当主様も思わなかった。

 ……となると、長くいることはないんだろう。目的を終えたら学園を辞める。そんな気がする。


 そんな彼女は、とても人気がある。

 中性的な美形だからだろう。

 女性にしては背が高いし。


 シエラにコソッと言われた。

「今、女子の人気はリリスとレイヴン様とで二分しているのよ?」

 それはどういう情報?

「……もし私が父なら、レイヴン様に決闘を申し込むんでしょうけど……あいにくと私、父のような女好きではございませんので……」

 そう言ったら笑われた。


 いや実際、レイヴン・シルバーウインド辺境伯令嬢ってめっちゃモテるわよ。

 しょっちゅう女子生徒から声をかけられていますからね!

 一人、熱心な女子生徒がいて、よく見かける。

 私はあんまり貴族に関して詳しくないんですが、この国、貴族の同性婚は認められなかった気が?

 平民に縛りはなかったはずなので、貴族籍を抜ければ大丈夫だろうけど……。


 ――と、レイヴン・シルバーウインド辺境伯令嬢が、彼女の胸ぐらをつかんだ!

「貴様、何を知っている!?」

 えええええ?


 私はノエルやフレイヤと顔を見合わせ、そちらへ向かう。

「レイヴン様、落ち着いてくださいまし。どうなさったのですか」

 フレイヤが声をかけるが、レイヴン・シルバーウインド辺境伯令嬢は彼女の手を離さない。

 そして胸ぐらをつかまれている彼女、なぜか私を見て怯えた顔をした。


 ……よく分からないけど、こう言った。

「えっと? 事情が分からないけど絵面は悪いので、手は離したほうがいいかな? と、思うんですけど」

「…………」


 それで、レイヴン・シルバーウインド辺境伯令嬢は手を離す。

 相手の女子生徒は、とにかく私を見て怯えている。

 私の後ろかなと思い、ススス、と移動したが目が追ってくる。


 ノエルが私の挙動を見て、不思議がっている。

「……リリス、何をしているの?」

「いや、あの彼女、私を見ているような……」

 指をさしたら「ヒッ!」とか言われたし……。

「そりゃあ、騎士団長のご子息を拳一つで倒したり、宰相のご子息を魔法で細切れにしようとしたりするんですから、普通の令嬢なら怯えてもしかたがありませんわ」

 と、フレイヤがバッサリ言い放った!

「……く、クリティカルヒットした……」

 胸を押さえてよろける。

 なるほど、当主様も私が指摘したときはこんな気持ちだったのね……。

 怯えられないよう、ノエルの後ろに隠れた。


 ……そんな話をしている間も、レイヴン・シルバーウインド辺境伯令嬢は彼女に詰め寄る。

「言え! 何をどこまで知っている!?」

 彼女が(なぜか私を見ながら)怯え震えていたとき。

「何をやっている!?」

 叫び声が聞こえてきたと思ったら、バタバタと誰かが近づいできた。

「……アドリアン様!」

 くだんの女子生徒は、走り寄った男子生徒にヒシとしがみついた。


 ……え、恋人がいるのにレイヴン・シルバーウインド辺境伯令嬢に言い寄ってたの?


 私たちは展開についていけずポカーンとしていたら、女子生徒と男子生徒が小芝居を始めた。

「……私……。もしかしたら、レイヴン様もお救い出来るかもと説得していたのですが……すでに時遅く……」

「メデリア、君は聖女のように心優しいが、すべての者が救えるわけではない。自分を責めるな」


 ……なんかバカらしくなってきたな?

「行こっか?」

「え? そ、そうね、落ち着いたようですしね」

 レイヴン・シルバーウインド辺境伯令嬢はまだ彼女に用があるだろうけど、恋人が来たからには迂闊なこともしないだろう。


 私たちはそう結論づけて、去ろうとしたら……。

「貴様! リリス・ヴァリアント! よくも私の婚約者に手を上げようとしたな!」

 とか言いだしたよ?


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2026年2月16日 電撃の新文芸より発売
脳筋聖女は、すべてを物理で解決する。


著者:サエトミユウ / イラスト: とよた瑣織



― 新着の感想 ―
何が見えてるんだ?クスリでもやってんのか?w
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