第25話 魔法の実技で杖をお披露目したのである
コーデリア・セイジクラウン先生が来た。
「実技では、選択で魔法を取っている生徒とも合同でやることがあります。仲良くやりましょう」
と、釘を刺された。
最初は、杖の使い方だそう。
魔力をこめて杖を振ると、魔法が飛ぶそうな。
それを的に当てろと言われた。
ふむふむ。これは……アレを試せるとな?
私は挙手した。
「私は最後にしまーす」
「いや、私が最後だ」
と、私を睨んできた男子が遮って言ってきた。
コーデリア・セイジクラウン先生はチラリと私を見ると、
「リリス・ヴァリアントが最後になります。オーレン・レグナードは最初に行ってください。他、魔法クラス以外の生徒は、先に行うように」
オーレン・レグナードと呼ばれた生徒は赤くなった。
「先生、私は」
「学園では、教師の指導は絶対です。もしも従わないというのであれば、習う必要はない、と解釈しますよ、オーレン・レグナード」
コーデリア・セイジクラウン先生に言い負かされ、奴は唇を嚙んだ。
……なんかさー、魔法クラス以外って、コドモが多くない?
あるいは、高位貴族がワガママ坊ちゃんばっかりなのか。
マジ、大人になれと言いたい。
そして当主様のモテ要素がもう一つ分かった。
「父のモテ要素、今、もう一つ判明しました。……こんなワガママ坊ちゃんばっかりなら、そりゃあモテるわよ。父は鷹揚な大人だもん」
とたんに女子生徒がウットリした顔になった。
「英雄様、鷹揚な大人なんですのね……」
「格好よくて強くて大人、素敵ですわ……」
他クラスの女子生徒までがウットリしている。
あ、当主様のファンの方ですか。そうですか。だけど女癖悪いですよ? チン道中の話、聞きます?
オーレン・レグナードとやらは、怒り心頭に発す、といった顔で杖を思いきり振った。
……と、魔法が飛び出して的に当たる。
「いいですね。合格です」
コーデリア・セイジクラウン先生がうなずくと、フン、とこちらを見て鼻で笑うんですけど。
なんのアピールなんだろう?
もしや、こじらせ気味の父のファンとか? 娘に当たるタイプの。
その後、続々と他クラスの生徒がチャレンジしたが、当たらない。
杖との相性が悪いのか、魔力の込め方が悪いのか。
……いや、違うな! 手首のスナップだな!
ちょい、ってやるからでしょ!
もっと振りかぶれ!
その後は魔法クラス。
意外と当てられなくて驚いた。
当てられたのは、フレイヤと、男子生徒二人のみ。
順番が回ってきたので気合いを入れた。
「よっしゃ」
手にペッと唾を吐くと、わぁっと盛り上がる。
「リリス、格好いいですわ……」
「本当に、中身は英雄様に似ていらっしゃるのですね」
「間近で見たいばかりに、魔法を選択しましたの」
と、女子生徒にモッテモテの私。
これが、血は争えないというヤツか……!
とか、考えながらも詠唱します。
『聖納。リリスロッド』
魔法陣が現れ、長杖がそこからゆっくりと出てくる。
「なんですの、アレ!?」
「格好よすぎません!?」
フッフッフッ。
魅せるためだけの無駄仕様!
魔法陣に手を突っ込んで取ればいいんだけど、こっちのほうが格好いいからね!
コーデリア・セイジクラウン先生も啞然としているが、ハッと気づいて慌てた。
「リリス・ヴァリアント。手加減なさい。貴女の内包魔力は測定不能なほど大きいのです。少ーしだけ込めて振るだけでいいのですからね!」
指導がきてしまった。
ちぇっ。
「いや、全力でいけ。貴様が判定機を誤魔化して偽の情報を見せ、殿下や私を籠絡しようとしていることはすでに掴んでいる。ここには、貴様の正体を暴くために来ているだけだ。今日、ここで、貴様の正体を暴いてやる!」
……と、オーレン・レグナードとやらが宣った。
…………。
私は長杖に魔力を注ぐ。
「リリス・ヴァリアント! 落ち着きなさい!」
コーデリア・セイジクラウン先生がめっちゃ慌てているわ。
「全力が見たいって言ったね? なら、もっと近くへ来なよ。そんな遠くじゃ見えないだろ、寄りなよ!」
杖に魔力を注ぎながらオーレン・レグナードとやらに近づくと、なぜか怯えた顔で下がる。
「何下がってんのよ? もっとよく見なよ」
「そ、そんな真似して、私の気を引こうと……」
「下らねぇこと言ってないで間近で見ろっつってんだよ、このいくじなし!」
「ヒィ!」
杖が白金にかがやき、さらには先に付いていた輪が凶悪に大きくなっている。
あ、セラフが興奮してグルグル回っているわよ。
必死に逃げようとするオーレン・レグナードを追いかけ回す。
「まだ全力じゃないんだけど? 半分以下……って、なんで逃げんのよ。近くに寄って確かめるべきでしょ、大口叩いたんだから! 逃げんな!」
コーデリア・セイジクラウン先生が必死に止める。
「リリス・ヴァリアント! それ以上大きくしたら、学園が吹き飛びます! やめなさい!」
「だってコイツ、私が判定を誤魔化したって言ったから。なら、実力を見せつけいないと」
コーデリア・セイジクラウン先生が叫んだ。
「オーレン・レグナード! 直ちにリリス・ヴァリアントに謝罪し、二度と疑わないことを誓いなさい! 全ては貴方のせいですよ!」
「なっ……!?」
反発しようとしたので、トドメを刺してやった。
「判定を誤魔化したってことは大したことない魔力なんでしょ? なら、アンタにコレをぶつけたってどうってことないよねー? 誤魔化した程度の魔力だもんねー?」
そう言って振りかぶる。
「わぁあー! やめてくれー! 悪かった! 私が悪かった!」
「よく聞こえませーん」
「ごめんなさい! 許してください! もう言いません!」
……まったく。
ここまでやらないと、謝らないのか。
「次に同じことを言ったら、マジで当ててやるからね!」
そう締めくくり、魔力を注ぐのをやめる。
杖に注いだ魔力は……あ、セラフがもの欲しそうにしているので、大半をあげる。
「よし、こんなもんならいけるかな? ……ではいきます。リリース、ムーンリング!」
そう言いながら杖を思いきり振った。
白金の三日月型の刃が飛んで行き、的を真っ二つ……いや、もっと切り刻んでるな、バラバラに裁断した。
バラバラになった的を見ながら、コーデリア・セイジクラウン先生が尋ねた。
「……リリス・ヴァリアント。他の杖はないのですか?」
「父に買ってもらったのはこれと……あと、コレです!」
リリスメイスを出して自慢したら、なぜかコーデリア・セイジクラウン先生が額を押さえて首を横に振った。




