第24話 従魔と使い魔契約したのである
私は、ちょっとだけ人気が出てしまった。
英雄ガレス・ヴァリアントの娘、ということが広まったらしい。
いや、もう一人正妻の子がいるんですけどね。
そちらはまったくもって広まってない。
「父は人気があるんだな~。なかなかのクズ男なのに」
「それは言わないでくださいまし。……そりゃあ、憧れますわよ。強くて、頼りがいがあって、権力になびかず屈せず、しかも容姿もよろしくていらっしゃるもの」
「でもって、それを餌に女を食いまくり、挙げ句結婚しているというのに綺麗な少女メイドを襲って赤子をこさえてしまう、と」
「やめてください!」
フレイヤが耳を塞いだ。あ、ノエルとレティシアとシエラも塞いでかぶりを振っている。
「ははは。まーまー。英雄は人気があるからしかたがないんだって」
男子は寛容ね。同じ男だから気持ちが解るのかも。
「確かに、父に教わっていたからモテ要素は分かります。ですが、不義の子の私としては絶対にこんな男と結婚はしないと固く決意した所存であります」
「ははは……」
男子はもう、笑うしかないといった感じの乾いた笑い方をしていた。
*
いよいよ魔法の授業が本格化してきて、学園に使い魔を持ち込む許可が出た。
使い魔とは、魔法使いが使役する動物もしくは魔物である。
ちゃんと訓練されていることが条件で、基本的にはショップで売っているのを買うらしい。
例外としては野良で出会い、懐いたため使い魔にしたというのがある。
授業では、使い魔にする動物もしくは魔物と契約することを行うとのこと。
もちろん、セラフを連れていったよ!
ものすごい注目を浴びた。
「冒険者ギルドで従魔として登録していますけど、大丈夫ですか?」
コーデリア・セイジクラウン先生に尋ねたら笑顔でうなずかれた。
「もちろん大丈夫ですよ。冒険者ギルドは単に、倒すべき魔物か否かの識別をしているだけですから。使い魔は違います。本人と使い魔との契約です。どのような契約を結ぶかはそれぞれですが……基本は、使い魔に魔力を与え、特別な力を授けます。代わりに、使い魔は契約者の指示を聞きます。例外もありますが、それは現時点では教えられませんし、使いません」
ふーん、そうなのか……。
となると、もしかしてもう契約は済んじゃっているか?
「契約を終了している生徒もいると思います。その確認もしましょう」
さすが教師だ。先回りして考えてらっしゃる。
契約は、簡単と言えば簡単。
使い魔を両手で触り、契約の詠唱をして魔法を流す。
魔法が弾かれず、使い魔が受け入れたら、使い魔に簡単でわかりやすい命令をいくつかしてみる。
使い魔が従ったら、契約が完了しているということらしい。
『我は契約す。其が我の命に従う限り、対価としてこの魔力を与えん』
詠唱して、エイッと魔力を流すと……。
ビカーッ!
はい、お約束の光ですね!
「リリスの魔法はなぜいちいち光るんですの!?」
フレイヤがとうとうキレて怒鳴る。
「聖属性だからかなぁ!?」
私も知らんがな。
その後、命令してみる。
「お手!」
「なーん」
キョトンとしたセラフが抗議した。
「お手が分からない? ここに前足を乗せるのよ」
「なーん」
「それの意味はって? 契約してるかどうかの確認だって」
「なーん」
「え? 違うことがいい? 別にこれでいいじゃない、やって!」
しぶしぶ、といった感じで前足を乗せた。
「ぅなーん」
「大きくなって、リリスを乗せて校舎を走り回るのはダメなのかって?」
「ダメですね」
コーデリア・セイジクラウン先生が間髪を容れずに言った。
そして、他の生徒に向かって言った。
「このように、契約が深まると意思疎通が出来るようになります。皆さんも使い魔との親睦を深めましょう」
「「「はい!」」」
みんな、元気よく返事した。
使い魔の契約が終わり、次は魔法の実習だ。
皆で話しながら訓練場へとゾロゾロ歩く。
聞けば、魔法クラスの全生徒は、そもそもが魔法使いの家系で小さい頃から魔法の訓練をしていたそうな。
「そうでもなければ、魔法クラスには入りませんよ」
「あの、泣いていた方は魔法に憧れていたのでしょうけれど、魔法はやはり幼少からなじんでいないと……」
「リリスだって、英雄様から教わったのでしょう?」
「ええ、まぁ……」
でもたぶん、その前の独学がものを言ったのかもしれない。
当主様だって、属性なしでも低級ならなんでも使えるって言ってた。
それは、独学でもずっと努力していたからだと思う。
「……父は、属性なしなんです」
私がポツリと言った。
「でも、低級魔法はなんでも使えるって言ってました。だからきっと、魔法使いの家系でなかろうと、使いたいなら使えるようになるまで独学でも努力するべきかなって思います。そうしたら、使えるようになったかもしれないのに」
私だって努力した。
死にたくない一心で得た属性かもしれないけど、魔法が使えることに気づいてからはずっと使うようにしてきたし、当主様から話を聞いてから、創意工夫していろいろ使えるようになったんだ。
ケイラお嬢様は、れっきとした男爵令嬢なんだから、魔法が使いたいならちゃんと習いたいって言えば良かったのに。
……とか考えていて、ハッとして周りを見たら、感動している。
「英雄様は、属性なしなんですか!?」
「なのにあんなすごい魔法を使えるのか……!」
「そういえば、魔法使いの家系ではなかった!」
「私も努力しなくては!」
……何やら、やる気の火を付けたみたい?
皆で訓練場に着くと、知らない生徒がチラホラいた。
しかも、こちらを睨んでくる奴もいる。
なんだなんだ?




