第23話 騎士団長の息子と決闘騒ぎを起こしたのである
はぁ、やれやれ。
諦めておとなしく授業を受けるか。
あの第一王子とやらは納得いかないだろうから、そのうち私にくってかかってくるでしょ。
……と、予想してたらビンゴだった。
ただし、本人じゃなくて別の奴が現れた。
「お前が嘘つき女か!」
とか怒鳴ってきた奴がいたけど無視したら、追いかけてきた。
「おい、ちょっと待て!」
「あ゙?」
思いっきり低い声で言ったらビビっている。
「な、なんという声を出すのだ!」
「そちらこそ、貴族とは思えない粗雑さな話し方ですね。入学前に習わなかったのですか?」
そうしたら、鼻で笑ってきた。
「ハッ! お前にはこれでじゅうぶんだ」
「あ゙?」
カチンと来て睨むとまたビビる。
「……お、お前が殿下に失礼なことをしたのは分かっているのだぞ、この嘘つき女!」
「アンタ、頭おかしいの? それとも喧嘩売ってんの? 出来損ないのコボルトが」
思わずつぶやいたら目玉が飛び出るほどに見開かれた。
「……今、何と言った?」
「頭と顔のおかしいコボルトが、なんかしゃべってますわー」
棒読みで言うと、歩き出す。
なんなのコイツ? つーか、あのバカ王子、自分が相手にしたくないからってコイツに言わせようとしてんのかね。
「お前! 俺を侮辱するか!?」
また追いかけてきたので振り向いた。
「なら、どうする? 決闘でもする?」
正当防衛でぶちのめしたくなってきたー。
「ハッ! お前と? どうせ卑怯な真似をするのだろう」
私も鼻で笑った。
「ハッ! 頭の悪いコボルトのくせに、戦う前から負けたときの言い訳を考えてるってワケね。コボルト以下だわ。虫だね、弱虫って名前の」
煽ったら顔を真っ赤にさせた。
「……貴様。女だからと手加減はせんぞ」
「それも負けたときの言い訳にする気? ホンット、ヨワムチ~」
「訓練場に来い!! ビービー泣いても許さんぞ!」
「望むところだ! 半殺し程度で許してやる!」
ハイ、見事猫が脱げました~。
周り中、口を開けて私を見ているわ。
ま、これで退学になるでしょう。
ついでにいけ好かないコイツをぶちのめせるぞーやったー。
訓練場に来て、対峙した。
「逃げないのは殊勝だね、ヨワムチくん?」
「それはこちらのセリフだ! それに弱虫ではない! 私はバルトス・ブレイブハウンド! 栄えある騎士団長の息子だ!」
そう弱虫が言い返すと、私の足下に何かを投げてきた。
「そら、それを使え。稽古用の木剣だ」
私はゆっくりをそれを拾い……両端を持って、力を入れた。
ボギッ!
と、音を立てて折れたので、弱虫の足下に投げ捨てた。
「こんなのを使ったら、アンタを殺しちゃうからねー。素手で撫でるに留めておいて、ア・ゲ・ル。ほら、とっととかかってきな!」
そう言い放つと、目が点になっている。
現在のワタクシ、アドレナリンが駆け巡っているせいか詠唱なしでもちょっとした身体強化がされているのである。
「お、お前……」
「だから、かかってこいっつってんのよ。……こないなら、コッチから行くよ!」
早くしないと教師が来て止めちゃうでしょ! それが作戦か!?
棒立ちになっていてかかってこないのにイライラして、大股で歩いて近づいた。
弱虫君はオロオロして、後ろに下がる。
私は怒鳴って走り出した。
「喧嘩売っといて下がるな! かかってこい!」
「う、うわぁああ!」
情けない声をあげながら剣を振りかぶり、振り下ろすタイミングで拳に殴りかかる。
拳は剣を折り、そのまま奴の顔面にヒットした。
ものすごい勢いで吹っ飛んでいった。
「やっぱりコボルト以下だわ。弱すぎる」
大の字になってひっくり返っている弱虫にそれ以上構わず、私は訓練場をあとにした。
騎士団長の息子を殴って気絶させたってのは、なかなかのやらかしだよね?
さーて、退学になるかなー?
訓練場を出たところで、魔法クラスの生徒たちに捕まった。
フレイヤが、私の肩をガッとつかむ。
「あ……あなた! なんてことを!」
「これで退学になるかしら」
「どうしてそんなに退学を狙っているのよ! あと、猫をかぶってましたわね!?」
エヘヘと笑う。
「しょせんはメイドの子なのよー。それに、父だって元冒険者だよ? 言葉遣いは完全に父寄りだから。中身は父の若い頃にソックリって言われてるからー」
「そんなことを言われたら、惚れてしまうでしょう!?」
フレイヤが錯乱しているわ。そんなに父のファンなのか。
他のみんなには引かれるかと思いきや、
「かっこよかった~」
「ファンになりましたわ!」
「す、素敵でした……」
「親近感が湧いたよ!」
「仲良くなれそうだ!」
って……男子にまで距離を縮められたよ。
いや、いいけど。
……男を殴り倒す女子に親近感が湧いて仲良くなれそうって思うのって、どうなの?
クラスの皆から「猫を被らなくていい」と説得されたので、口調を戻した。
いや、いいの?
「なんか、こう……英雄様がこういうしゃべり方をするのかなって思うと、身近に感じられてグッとくる」
……だそうです。よくわからん。
退学の通告を待っていたけれど、「騎士団長の息子が怪我の治療のため休学になった」という噂しかなく、何もなかった。
どうなってんだ、この学園は。




