第22話 魔力検査を受けたのである
騎士クラスは早かった。
ほぼ全員が属性なしで内包魔力小。基本らしい。
「さて、私たちの番ですわよ!」
意気揚々とフレイヤが言った。
あ、ちなみに女子は全員愛称で呼ぶような仲になってます。
フレイヤが最初、私がトリになった。
やはり大目玉は聖属性なので、ということだそうで……。
フレイヤがそう言って、全員が賛同していたよ。
全員が申告通り、火属性、土属性、水属性、珍しいところでは緑属性……と判明し、内包魔力は現時点でフレイヤがダントツだった。
とはいえ、全員が基準値以上だそうだ。
ちなみに基準値は、『上級魔法を一回使用出来る』らしい。
私以外の全員が終わり、トリの私が、装置に手を突っ込む。
とたんに、
ビカー!
と箱が光った。
「「「目が! 目がぁあ!」」」
全員がお約束をやった。
ちなみに私は予測して目を閉じていた。
……だって、当主様が、私の内包魔力はとてつもなく大きいだろうって言ってたんだもん。
「うぅ……リリス・ヴァリアント、手を抜いてください」
検査している教師の人が言うので手を抜くと、光が徐々に収まっていく。
なんとか目を開ける程度の輝きになったところで、教師が言った。
「聖属性、内包魔力は……もう判定不能。少なくとも上級ところか特級魔法を何回も繰り出せるほどです。低級なら休みなく何回も使用できるでしょう」
だよねー。
実際、そんな感じだったもん。
「さすがですわ!」
とフレイヤが言う。
この子は、ホントまっすぐでいい子だな~。
いや、当主様が好きすぎて、その娘の私のことも全肯定なのかも?
「ありがとう。これで聖属性なのが確定――」
「その判定に異議がある!」
と、唐突に後ろから叫ばれた。
振り返ると、知らん顔の男子生徒が立っていた。
「私の気をひくため、装置の故障させ判定を狂わせたのだ! 装置を修理し、再度判定せよ! ……あらかじめ言っておく。私はお前のような者に誑かされたりはしない。そうそうに諦めるんだな」
…………何言ってんのコイツ?
「ねぇ、アレ、何? バカ?」
思わず素で訊いたら周りから目を丸くされた。
フレイヤが慌てて止める。
「アドリアン・ソル・ユニウス殿下です! この国の第一王子ですわよ!」
「えぇ!? 嘘でしょ? 第一王子って、バカでもいいの?」
「「「リリス!」」」
周り中から止められた。
バカ王子は、呆気にとられた後、肩を震わせて怒っている。
「……き、きさ、貴様……」
「やだ、いっけなーい。正直に言い過ぎちゃった!」
テヘペロした。
「貴様!」
「はーい、みんな、目をつむりましょう」
そう促して、もう一度装置に手を突っ込む。
ビカー!
「ぐわぁっ! 目が、目がぁあ!」
「さて、検査が終わったことですし、帰りませんこと?」
目を押さえて暴れる第一王子を無視しつつ、みんなを促してさっさと教室へ帰った。
*
さて、第一王子がイチャモンつけてきた件について。
入学早々退学になるかな、よっしゃ冒険者デビューだ!
……と喜んでいたものの、何事も起きない。
思わず教師を捕まえて訊いてしまった。
「あの……。私、退学になるんですよね?」
「いいえ?」
魔法クラスの担任のコーデリア・セイジクラウン先生がキョトンとしている。
いやいやいや、王族に無礼を働いて、なんで退学にならないの!?
私がポカンとしたら、コーデリア・セイジクラウン先生がニッコリ笑顔になった。
「装置の故障の疑いは、正規の機関を呼び、正常に作動していることを確認し、保証していただきました。ですので、判定の間違いはあり得ません。また、学園内でのみ、身分の差はさほど問題視されないようになっています。でないと、教師が生徒に注意が出来ませんからね。ましてや、入学早々の生徒の言葉遣いに多少の問題があっても、相手の生徒も問題視しないでしょう」
問題視してたよね!?
口を開けて呆けていたら、コーデリア・セイジクラウン先生に肩を叩かれた。
「第一王子の肩書きのある生徒も、この国唯一の聖属性の魔法使いに対して疑いを持ち、虐げるような真似はしませんので安心して授業を受けてくださいね」
ワーヲ。
聖属性の魔法使いって、第一王子より上なのかよ!?
私がトボトボと教室に入ると、フレイヤがすごい勢いで飛んできた。
「まさか……何かお咎めがありましたの!?」
フレイヤが尋ねてきたので、ゆるゆると首を横に振る。
「私、てっきり退学になるものだとばかり思っていて……。冒険者として活躍しようと思っていましたの。……ですが……。学園にいる間は、身分の差はあまり重要視されなくて、入学早々なら言葉遣いに問題があるのも当たり前だそうで……相手の生徒も理解しているはず、のようなことを言われてしまい……」
私はガクリとうなだれる。
「……退学になりませんでしたの……」
「「「「退学になりたかったんですか!?」」」」
全員が声を揃えて尋ねてきた。
私はうなずく。
「もともと、冒険者になりたかったんです。もっと言うと、あちこち旅をしてみたくて。私、もともとおいしい料理に興味がありまして、旅をしながらおいしい料理を食べ歩きしよう、なんて考えていたんです。でも……聖属性の魔法が使えることがバレてしまい、貴族籍に入れられてしまいました。……実は、腹違いの姉とはあまり仲が良くなくて……まぁ義姉の気持ちは分かりますけど。なので、本当に家から出て旅に出たいんです。母は……あ、実母のほうですが、まだ若いのでとっとと違う男と結婚したらいいと思っているんですが、私がいたらそれも無理ですし」
――と語っていたら、周りが涙ぐんでいる。なぜに?
「あの?」
「そんな悲しいことをおっしゃらないで! 私たちはいつでもリリスの味方です!」
「そうですよ~。私たち、味方です~」
「……げ、元気を出してくださいね、リリス……」
と、シエル、レティシア、ノエルに言われたので、戸惑いつつも礼を言う。
「そ……それはどうもありがとうございます。悲しくはないのですが、出来れば早く冒険者になりたいです。なので退学になったほうが私としてはありがたいと」
「絶対退学になどさせませんわ!!」
あ、フレイヤがガッチリと肩をつかんできた。
これは恐らく、イチ抜けさせてたまるもんか私も冒険者になりたいんだよ! ってことですね、わかります。
たぶん、この辺りで「おや? 第一印象と違うな?」とクラスの皆が感づいてきた。
そして、決定的な事件が起きるのだった。




