第16話 カッコいい魔法を披露したのである
当主様とセラフとで冒険者ギルドに向かう。
「領で討伐に向かう時よりちょっとだけ冒険者寄りの格好ですね」
と、当主様に話しかけた。
当主様、領だともっと軽装。
腰に長剣二本のみだもん。
「王都は場所によってはもうちょい大物が出るからな。領にはもう大物は出ねぇだろうよ。俺が狩り尽くした」
コボルトしか出ないのって、それでなの……?
「だから冒険者ギルドが出来ないんじゃ……」
そう言ったら当主様が慌てた。
「い、いや、それは違うだろ! コボルトだって魔物だし、しょっちゅう出るじゃねーか!」
もしや、狩り尽くさないようにしてるんじゃないかしらと思った。
魔物肉が普通に食料になるので、領民たちのメインディッシュを全滅させないようにしてるんじゃないか?
「アレですね、当主様のお好きななんとかボアも山にいたら良かったんですけどね」
私の言葉で当主様がうなだれた。
「好物だったから狩り尽くしたんだよ……」
あらららら。
なんと言えばいいか……そうだ。
「王都で捕まえて、領の山に放して繁殖させればいいんじゃないですか?」
当主様がまじまじと私を見る。
「お前……いいこと考えるじゃねーか! ……あー、でもなー。ビッグボアは領民たちだけだと、ちと荷が勝ちすぎているかなー……」
そうなんだ?
当主様、なんも考えてないようでいろいろ考えているんだなー。
そんな話をしていたら冒険者ギルドに着いた。
「いよいよですねー!」
「テンションを上げすぎるな。怖いわ」
理不尽なことを当主様から言われつつ、冒険者ギルドに飛び込んだ。
「たのもー!」
元気よくあいさつし、受付に飛んでいく。
「ギルドマスターに、いい感じの魔物討伐を見繕ってもらいにきました!」
受付のお姉さんに言うと、後ろから当主様が追加した。
「保護観察は俺だ。ワーベアよかちょっと強いくらいの魔物がいたら教えてくれっつってくれ」
「かしこまりました!」
受付のお姉さんが奥へ飛んでいき、ギルドマスターがやってきた。
「やれやれ……。ビッグボアはどうだ? お前なら楽勝だろ」
「俺はやらねーよ。娘が戦う」
当主様が私を指したので、私は指を二本立ててギルドマスターに説明した。
「昨日、当主様にとても素敵な杖を二本買っていただきまして! ぜひとも使いたいんですよね!」
鼻息が荒かったせいか、ギルドマスターに引かれた。
「ま、まぁいいか。お前がついてくんだろ?」
「指導役としてな。元冒険者の父親として、アドバイスはする。手出しはしねーよ」
ギルドマスターが口をあんぐりと開ける。
「これも修行です!」
私は声高らかに言った。
というわけで、当主様と一緒に討伐に出かけます!
ギルドマスターが見繕ってくれたのはビッグボア。
「図体がデカいからあんまり討伐されないんだよな。お前だったら一頭まるまる持って帰ってこられるだろ?」
「だから、やるのは娘だっつーの」
「頑張りまーす」
笑顔で言ったら、ハァ~とギルドマスターにため息をつかれたよ。なぜゆえに?
「……まぁいいか。魔石だけは取ってくれよな」
って言われました。
「そんなに常識知らずそうですかねぇ、私」
「ギルマスなのに見る目がないんだよ。俺はお前の真価を一目で見抜いたから、稽古をつけてやったんだ」
「おぉー! さすが当主様!」
そうか、見る目がないのかー。ならしょうがねいね!
当主様は分かりやすくご機嫌になった。
「まずはお手並み拝見だ。アドバイスなしで倒してみろ。雑魚は倒したきゃ倒していいが、到着が遅くなりそうになったら引き返すからな」
ちなみに行きはセラフに二人乗りです。
セラフ、通常スタイルのときはまだ子猫っぽいのに、それなりに成長はしているようで当主様と私を乗せても余裕そう。軽やかに走っています。
「現着!」
「あー……確かにこりゃ、いるな。しかも、かなりデケェぞ」
北東の山林にいるということで来たのですが、林がめちゃくちゃです。
開発途中みたいになってるよ。
当主様が現場を見て考え込んでいるすきに、私は武器を取り出す。
「『聖納! リリスメイス!』」
そう詠唱すると、魔法陣が現れ、鎚矛がそこからゆっくりと現れた。
そう! これがアレである!
これをちっちぇー杖でやったらカッコ悪いでしょ!
私は、どーーーしても鑑定とアイテムボックスの魔法を使いたかった。
だけど私の使えるのは、どーーーやっても聖属性の魔法。
なら、聖属性でそんな魔法を探せばいいじゃない!
ウンウン悩み、鑑定はなんとかソレっぽいのを獲得。
だけど、アイテムボックスは難しい。
『亜空間に隔離』ってのがもう聖属性じゃない。
ならどうするか……と悩んでいたときにハタと気づいた。
亜空間に隔離するからダメなのよ。
『聖なる場所に一時保存する』って考えればいいのよ!
そうしたら獲得した。
「『聖納』」
これを唱えると魔法陣が現れる。
この魔法陣の中にブチ込むと、聖なる場所に収納される。
取り出すときは、取り出したいアイテムの名前も詠唱すれば、なんと魔法陣の中から出てくるのである!
『聖なる場所』が何処なのかは分からない。
でも、どうやら普通の場所じゃないみたい。時間停止がついていたから。
そして、マジで聖なる場所っぽくて、呪いのアイテムを入れると解除されて聖属性が付加される。
当主様が「管理していたんだがソッチのほうが安全そうだからその中に入れといてくれないか」って頼まれた魔剣を、試しに取り出してみたところ……。
「当主様ぁ〜!」
驚いた私が魔剣だったモノを振り回しつつ当主様のもとへ走ったら、当主様が仰天している。
「お前、このバカ! なんで取り出した!?」
「聖なる場所に呪いのアイテムを入れたらどうなるか、ちょっと確認したくて! なんと! 呪いがとれて聖属性が付加されました〜!」
「ハァ!?」
ですよねー。私もそう思います。
「これは、アレですね。聖なる場所が、自分以外の属性の存在を許さない、みたいな!」
「お前は、そんなとんでもない場所に昼飯を入れたりしてんのか」
当主様が頭を横に振って嘆いた。
……という、ガチの聖なる場所なのである!
「はぁ~。なんでこんなに俺に似ちゃったんだかなぁ~。俺のガキの頃もこんなんだったよなぁ~。痛々しい詠唱とか、剣の技名とか、考えまくって叫びまくってたもんなぁ~」
いや、それよりはマトモだと思いますけど!?
私、武器とか技名に自分の名前を入れるくらいじゃん! そこまでじゃないじゃん!




