第14話 朝食に説教を喰らったのである
おはようございます。
起き抜けにセラフに『聖浄』をかけ、さらに聖水を飲ませてから部屋を出た。
誰も起きてない……。冒険者の朝は遅いらしい。
昨日買った食材を使って、朝食を作る。
昨日はさんざん奢ってもらったけど、私はメイドですし朝食くらいは作らないといけないでしょう。
まずは……。
「『聖浄』」
ピッカピカにしました。
さて、簡単なものでいいかな。
「セラフも簡単なものでいいよねぇ?」
「なーん」
おいしければヨシ! と、言っているようです。
聖火で炙った厚切りハムに目玉焼きを乗せ、聖水でボイルした野菜を添える。残った聖水のお湯はスープに変化。今日は、ニンジンのポタージュにしよう。
あとはパンを焼いて――と、気づいたら後ろに人がビッシリといた。
「リリスちゃん、出来すぎだろ」
「見た目は満点、料理も上手いって、サイコーじゃんか」
「でも、ガレスさんの娘なんだよなぁ……」
「そういうことだ。不埒な真似をしたら、娘に買い与えた槌矛で頭をかち割られるぞ」
当主様がギャラリーの後ろに立って、腕を組んで睨んでいた。
「なんでそんなのを娘に買い与えてんだよ!」
「アクセサリーとかにしろ!」
ギャラリーがやいやい当主様に言う。
「俺だって娘にそんなんを買い与えるよかアクセサリーをプレゼントしたいわ! 娘が喜ぶのが、そういうのなんだよ! しょーがねーだろ、中身は俺に似ちまったんだからよ!」
当主様の言葉に、全員が肩を落とした。
「ハッハッハー。襲ってきてくれていいですよ~? 当主様に買っていただいた武器を、ぜひとも試用をしてみたいところですからね~。楽しみだなぁ!」
そう言いながら盛りつけた。
「当主様、おはようございます。朝食の準備をいたしました」
「おう、ありがとよ。……じゃ、食ったら冒険者ギルドに行くか」
「今日は平民の食べ方にしましょう!」
今すぐ行きたい!
当主様の食事を運び、そして私の分とセラフの分をよそって、
「よかったら、残りは食べてくださいな。これは当主様のお金で買ったものなので!」
と、言ったら、ギャラリーがいっせいに厨房に詰めかけた。
「おい、平民の食べ方でいいから、俺と一緒に食えよ」
端で食べようとしたら呼ばれたので、向かい側に座る。
セラフの分はお盆ごと床に置いた。
「食べながらでいいから聞け。まず説教だ。施しはやめろ」
施し?
首を傾げると、当主様が親指で店子さんたちを指す。
「連中は、お前よりも稼いでいる。そしてお前は貴族ではあるが、その立場は微妙だ。何かを与える場合はちゃんと金を取れ。特に、冒険者になるのなら絶対に無料で何かするな。一度無料で行ったら、次も無料でやらなきゃならなくなる。いいか、安請け合いもするな。むしろ断られるくらいの高値でいけ。……これは、貴族同士でも同じだ。施す場合は利益になる場合のみだ。貴族連中は、平民よかむしり取ってくるぞ。絶対に無料でやるな。高位貴族もしくは王家からの命令なら、必ず褒賞の話を出せ。難癖つけられたら俺からそう教育されている、って言え」
当主様が真剣に言う。
……当主様は何か先を見通して言っているようなので、私も黙ってうなずいた。
「……とは言っても自分の価値がいくらか分からねぇだろうから、俺が帰るまでにだいたいの金額を渡す。渋りそうな相手の場合は、契約書を書け。そして相手の名前を聞き出し、支払先はお前じゃなくて男爵家にしろ。俺がガッツリ回収してやる」
わー、頼もしーい。
まぁね、持ちつ持たれつと言うけれど、むしり取られるばっかりじゃあね。
ただ。
「……恩を売りつけたい場合はどうしましょう?」
私が声をひそめて言ったら、
「高値で売れそうな場合はガンガン売りつけろ。回収する際は、売りつけられたのを後悔するくらいに思いっきりやれ。回収出来そうになかったら、それも言え。俺が回収してやる」
当主様も声をひそめて返してくれた。
……なんというか。
当主様って、男爵なのに権力を持ってる?
高位貴族どころか王家でも、当主様から教育されている、って言えば通じるくらいにある、と当主様は思っている。当主様が叙爵されて始まった成り上がり男爵家なのに。
何か秘密があるんだろうなーと思いつつ、
「……ケイラお嬢様は正妻の娘なので、その呪文は私よりも効力がある気がします」
って言ったらキッパリ否定された。
「ない。……まず一つ目、ケイラには教えてない。もしもどこかで聞きかじって威張りちらすようになったら、コンスタンスに手紙を書け。俺の前にコンスタンスが許さない」
まぁね、奥様はとても厳しい方なので。
「次に二つ目。お前は稀少な聖属性の魔法使いだ。お前自身にその自覚はないだろうし、そもそもお前の近くに年近いガキがいなかったからピンときてねぇだろうが、お前の属性も、その魔法も、ハッキリ言って規格外だ。そこは俺すら超えている。だから、それがわからねぇ相手には俺が教えてやるんだよ」
と、旦那様が言ってくれた。
ありがたいようなありがたくないような……。
被害妄想ケイラお嬢様、私が虎の威を借る狐のごとく自分の父親の名を使っていたら、ブチ切れるんじゃないかしら?
「……あのー。私が当主様の名前を使って牽制するのって、ケイラお嬢様には伝えてます?」
ハイ、当主様がヤベッて顔をしましたー。
「問題にしかならないですね!」
私がキッパリと宣言したら、当主様が慌てて返した。
「だ、大丈夫だ。俺は言ってないけど、コンスタンスにはそれを通してあるし、そうしないとお前がヤバいってのも話してある。アイツが説得するだろ」
「そうですか……」
セラフ事件の二の舞は嫌なんだけど。
でも、それで揉めたら学園を出奔するから、いっか。
私がそこに着地したら内心を読まれたようで、
「コンスタンスとケイラは、俺たちに遅れてこちらに来る。その時コンスタンスに聞いておくよ。話してないようなら、その時に話す」
って言われた。
別にいいけど……なんか、前回もそうだけど、なんで直接当主様が言わないんだろなーって思うのよねー。




