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脳筋聖女は、すべてを物理で解決する。(web版)  作者: サエトミユウ
2章 聖属性の魔法使い、貴族学園に入学する!

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第13話 夕飯をご馳走になったのである

 その後、武器屋に寄ったけど……うん、確かにいただいた武器のほうがいいって分かったので何も買わずに出た。


「アクセサリーでも買ってやろうか?」

「どうせ、浮気相手の女に買ってやった店ででしょ? いりません」

 冷たい目で見ながら言ったら、当主様がまた胸を押さえてよろめいた。


「……そ、そうだ。じゃあ、冒険者用のグッズも買ってやろう。お前の魔法は目立つし、ある程度は冒険者用のグッズを使ったほうが目立たず済むぞ」

「わぁ! ほしいです~。当主様、ステキ!」

 とたんにヨイショする私です。


 定番の冒険者グッズ初心者用プラス重量軽減のマジックバッグなるものを買ってもらった。

 マジックバッグは、魔力を流して本人登録するのだと。また、定期的に流さないと解除されて普通のバッグに戻ってしまうとな……。

「学園にも持っていこう!」

 私が浮かれて言ったら、当主様もうなずいた。

「いいんじゃねぇか? あんまり入らねぇけど、学用品なら余裕だろ」


 あんまり入らないんだ?

 いや、確かにポシェットよりは大きいけどハンドバッグ程度だよね、ってサイズだけれども。

 首をかしげたら、当主様が説明してくれた。

「容量と間口が小さいから、売れ残ってたんだよ。本来はマジックバッグなんて冒険者垂涎のアイテム、売ってないからな」


 そうなんだ!

 良かった、売れ残ってて!


 もう一度丁寧にお礼を言った。

「ありがとうございます~」

「いいって。……アクセサリーより喜ぶってのが、複雑な気分だが……」

 私の頭をポンと叩いた。

「まだ小さいからな。アクセサリーは早いか」

「早さの問題かどうかはわかりませんが、お高いアクセサリーを買ってもらったら換金しますね」

 そう答えたら何とも言えない顔になってしまった当主様。

「うん、俺以外からもらった場合はそうしろ。俺からもらったのは、一応取っておけよ。何かの場合に使えるからな」


 ……ん? 含みのある言い方。

「もしや……『解毒のネックレス』や『治癒の指輪』などの、効果付きのアクセサリーが存在するのでしょうか……?」


 なら、アクセサリーをねだればよかった!


 震える声で尋ねたら呆れられ、

「あるけど、そーゆーモンは出回らねぇし、第一お前には必要ねぇだろうが」

 ツッコまれた。


 最後に、『竜の角亭』という、当主様イチオシの大衆食堂に連れていってもらった。従魔も入れるお店だそう。

 当主様はマスターに私を紹介した。

「俺の娘だ。これから三年間この辺りに住むから、ここにも食べにくると思うんでよろしくな。変な男に絡まれていたら、娘がその男をミンチにする前に半殺しにしてやってくれ」

「リリスです、よろしくお願いしまーす。絡まれても手助け無用ですよ~。食材としてそちらに提供させていただきますから~」

「よ、よろしくな。……周りによーく言っとくわ」

 引き気味に返された。冗談なのにな。


 席に座り、さっそく黒板に書かれたメニューを見ると……。

「……ん? これはもしや……!?」

 バッと勢いよく当主様を見ると、当主様が笑ってる。

「好きそうだから連れてきた。貴族様は嫌がるだろうけどな。魔物肉を食わせる店だ」

「当主様、大好きです!」

 どうしてそんなに私のツボを突くセレクトをするかな!


「よっしゃ! これで俺の名誉は挽回されたな。どんどん頼め!」

 当主様がご機嫌になった。チョロい。

 私のチョロさは父親似なのね~。


 悩んだ結果、『コボルトの骨付きあばら肉~ワインソースがけ』っていうのにした。

 この国のワインはけっこう酸味が強いのでサッパリ食べられると思ったのと、コボルトはうちの領の産地だし!

 おいしかったら、帰省したとき絶対に食べるぞー! って思ったのよ。

 当主様は、『ビッグボアのステーキ~バター乗せ』という、コッテリなメニューを頼んでいた。

 野菜もほしいので、『ブロウカクタスのチーズがけ温サラダ』というのも頼んだ。たぶんサボテンサラダだと思われるが、肉だったらどうしようね?


 セラフ用に皿を借りて、そこに聖水を入れ飲ませていると、料理が現れた。

 うん、とってもおいしそう! 間違いなく匂いは合格!


 豪快ながらもキッチリと貴族のマナーで食べる当主様。

 私もキッチリと貴族のマナーで食べました。


 コボルトのあばら肉ですが、思ったよりも脂身が少なくてサッパリしている。けど、ちょっと固い。

 クセがあるのかもしれないけど、ワインソースとよく合っていてとてもおいしい!


「これ、とってもおいしいです。次に帰省したとき、コボルトの肉を分けてもらいましょう」

「俺はいいけどな。ただ、魔物肉はコンスタンスとケイラが嫌がると思うぜ?」

 ケイラお嬢様は別にいいけど、奥様が嫌がるのならダメか。

「……じゃあ、内緒で食べます。料理人のオッチャンは一緒に料理して食べてくれるはず!」

「いや、俺にも食わせろよ。俺はイケるんだからよ。……あと、領民も食ってるぞ。魔物肉は腐りにくくて保存が容易だ、腐りやすい普通の動物の肉をわざわざ捌くよか、退治したコボルトを食べたほうが楽だからな。連中が動物の肉を食べるときは、俺たち用に捌いた肉の余りだ」


 ほうほう。そうなのか。


「王都は半々だよ。貴族向けの店は動物だが、こういった大衆食堂はほとんど魔物肉だ。安いしうまいし。ただ、ちょっとクセがあるから、そこは好き好きなんだろうけどな」

「私は平気です!」

 言うて動物だってクセがあるじゃん。

 そのレベルだもん。


「……そういえば、食事中に会話するのはマナー違反ではないのですか?」

 ふと、思い出して尋ねた。

 男爵家の食事では会話が皆無、シーンと静まり返っている。

 食事が終わると奥様が声がけするので、それがマナーかと思っていたんだけれども。


「そんなマナーはねーな。どっちかっつーと貴族は、どれだけ長く食事に時間をかけられるか、って感じだよ。平民は、食事を楽しむなんて概念はねぇ。栄養補給だから、パッと食べてパッと終わらせる。時間がもったいないからな。貴族は、ゆーっくり、時間と食事を楽しむんだよ。だから、間を持たせるために会話は必須だ」

「ほぇー!」

 そういうものなんだぁ。

 どっちの気持ちもわかるなぁ。

 時間のないときはパパッと食べちゃいたいし、おいしい料理はゆっくり味わいたいし。


 当主様がフッと自嘲するように笑う。

「だから、ゆっくり食うのはあんまり慣れねぇんだよな。ついガッついちまう」

 ふーん。

 ならばと、提案した。

「おいしい料理はゆっくり食べましょう。おいしくないのはさっさと食べましょう」

「確かに。真理だな」

 当主様は真面目くさってうなずくと、そっとボアのステーキの切れ端をくれた。

「……マナー違反はコレだ。でも、ちょっと食べてみたいだろ? 俺にもそれを分けてくれ。数え切れないほど通ったわりに、実はソレ食ったことねーんだ」

「喜んで!」

 当主様と笑い合った。

 おすそ分けしてもらったボアのステーキは、とってもおいしかった。


          *


 当主様と家に帰ってきた後、別れ際に振り向いて言った。

「さすがに、私がいるのに女性を連れ込んだりしませんよね?」

「ぐっ! ……当たり前だろ!」

「それは良かった~。おやすみなさーい!」

 私は当主様に手を振り、セラフとともに階段を上がった。


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2026年2月16日 電撃の新文芸より発売
脳筋聖女は、すべてを物理で解決する。


著者:サエトミユウ / イラスト: とよた瑣織



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