表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

ごめんなさい、ありがとう

 俺は小学生時代、とんでもないクソガキだった。

 イタズラはするわ学校の備品は壊すわ、壊しても謝らないわ、それどころか不貞腐れるガキだった。


 そんな俺を小学校二年~六年生までずっと受け持ってくれていたのは白井先生という女性の教師だった。


 三年生のある時、いつものように同じクラスの女の子をからかっていた俺は、彼女の三角定規を取り上げて振り回していた。

 その時に手が滑り彼女の近くの窓ガラスに定規が突っ込んだ。

「ガシャーーーン」という音とともにガラスが割れ、女の子の机に落ちたガラスは粉々に砕けた。

 静まり返る教室内。


 鬼の形相で白井先生が歩み寄ってくる。

 俺は〈怒られる〉と咄嗟に思い、口に出た言葉は「弁償したらええんやろ?」と言ってしまった。

 その瞬間、白井先生は目に涙を溜めると俺の頬を思い切りぶった。


 あまりの痛さに呆然とする俺に言った言葉は、俺の予想外の言葉だった。

「まずはごめんなさいやろ!!」

 俺はズキズキする頬を抑えながら泣きながら「ごめんなさい」と言った。

 すると先生は「アタシにじゃなく美咲ちゃんにや!!」


「アンタがガラス割った事で美咲ちゃん、もう少しで大きな怪我してたかもしれへんのやで」

「アンタそうなったら責任取れるんか?そんなん無理やろ?」


「まずは美咲ちゃんに謝りなさい」先生はボロ泣きしながらそう言った。

 その瞬間も俺は先生の言っていることの重大さも分からずに美咲ちゃんに「ごめんなさい」と言っていた。


 目の前の俺と先生が泣いている姿を見た美咲ちゃんも泣き出し、教室は地獄絵図だったのは確かだ。

 俺はその後、親を呼び出され「弁償したらええんやろ」と言ったことを親に話され親からもゲンコツを食らうこととなった。


 その時に先生が言ったのは「私が責任をもってこの子を六年生まで受け持ちます」

 この瞬間の俺は未だに納得がいかなかったのは確かだった。


 その後先生に連れられて美咲ちゃんの家へ謝りに行った。

 その時から俺は白井先生が親代わりとなった。


 事ある毎に「ごめんなさい」「ありがとう」という言葉の大切さを愛のムチと共に身に染み入るほど教えられた。


 特に「ありがとう」という言葉の大切さは白井先生から口を酸っぱくして言われた。

 給食のカレーやシチューを受け取る時も「ありがとう」といいなさいと言われ、この経験がコンビニや飲食店で俺が自然と「ありがとう」と口をついて出る要因になっていることは事実だ。


 今では懐かしい思い出だが、あの時のことを思い出すと頬をぶたれた痛さと、先生の泣き顔がハッキリと思い出される。

 そんなウチの親と「ありがとう 、ごめんなさい」を教えてくれたもう一人の親は今でも元気にしているだろうかと切に思う。


 俺が犯罪を犯さずに生きてこれたのもこの先生のおかげだからだ。

 先生、本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ