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第六歌:語られぬものたちへ

大地の底に 灯らぬ火がある

声なき者たちの 心臓に似た鼓動

語られぬ名 数えられぬ傷

そして 誰にも向けられなかったまなざしが

ただ 時の深みを彷徨っていた


 


かつて彼らも歩いた

峠に立ち 空を仰いだ

だが 名を持たぬ者に道標はなく

しるべなき道に足を取られ

深い土へと沈んでいった


 


忘れられたとは違う

誰にも 最初から見えなかった

まるで夜露のように 

誰かの手が触れる前に

世界から蒸発していったのだ


 


だが その沈黙は終わらない

語られぬものは 失われたのではない

彼らは土に還り 根となった

行者の一歩が 揺らす地の下で

確かに 脈を打っている


 


一人の行者が 声を上げる

「語られぬものたちよ 聞こえているか」

返事はない

それでも彼は進む

足元に踏むその土の一粒一粒に

失われた名が宿ることを 知っているから


 


風が過ぎる

どこかで 誰かが小さく笑った気がする

あるいは 泣いたのかもしれない

だが それもまた言葉にはならず

空へと解かれていった


 


語られぬものたちへ――

この詩の影が あなたたちに届くことを願う

言葉にできなかったすべてが

風となり 地となり 灯となり

誰かの歩みに そっと寄り添うように


 


そして行者は 再び沈黙をまとい

山を下り 谷を越え 

語らぬままに 彼らの声を背負ってゆく

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