表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/77

第7話 王都陥落

「あと少しで王都も陥落だな」


 王都リナエルテの城壁から少し離れた場所に張った陣幕の中で、司令官は少し微笑んだ。


「思ったより早く来ましたね」


 副官が答えた。


 攻略軍の司令官が受けた命令は、エルダイズ王国の王都を陥落させテルメール王女を確保または抹殺することだ。


 だが問題は3日で達成せよという命令だったことだ。皇帝からうけた神託によると魔装強化兵なら一日300㎞の移動は可能だと言うのだ。北の大陸と南の大陸を結ぶ細い陸橋を通り抜け、広い王国の深く約1千kmを移動して王都を襲撃できると。


 せめて6日はないと不可能だと抗言したのだが、やれるだけやってみることになったのだ。


 大陸間の陸橋に関しては前もって賄賂を渡しておくことで、戦闘を行わずに通り抜けた。なのでこれを日数には含めないと考えても問題ないだろう。


 南大陸に入ってからは、途中の砦はできるだけ無視したが、それでも3か所の砦での戦闘で3日ほど、そして2日前の平原での敵軍との会戦で1日の遅れがでた。そして残り6日間を移動に費やして、合計10日で王都までたどり着いたというわけだ。


 人口ではエルダイズ王国のほうが圧倒的に多く国力も勝っていたはずだが、おそらく平和な時代が長く続いたせいで兵力は少なかったのだろう。一昨日の会戦でも、そして今の王都攻防戦でも敵兵の数は思ったより少ない。


 幸いなことに王都民は避難済みなのも王都攻略には好都合だ。あと少しで、これまでの心配や悩みも終わるのだ。少し笑みもこぼれてしまうのも仕方がないのであった。


 通信兵が連絡を読み上げた。


「攻略部隊から連絡。王宮城壁前の広場を占領完了。これから城門を突破し王宮への突入の準備完了とのこと。王宮結界の破壊を要請する。以上!」


 その報告を聞いて、ヤールイコ司令官は再び緊張した。いよいよだ。


「今から20分後に対物理結界の砲撃開始とする。砲兵部隊および魔法兵団の準備を開始せよ。斥候と打撃部隊は敵残存兵の掃討準備。国王と王女はぜったに逃すな」


 司令官が高らかに王都攻略の最後となる命令を出した。


 再び砲兵部隊が動き始めた。王都全体を守っていた結界に比べると王宮を守る結界は小さい。王都の外からの砲撃だと、砲弾を外す可能性が高くなる。神託で託された結界破壊弾は数が限られる。少し危険だが砲兵部隊が王都内に入り込む必要があると判断したのだ。


 砲兵部隊は重い大砲にもかかわらず軽々と動かしながら王門をくぐると、王都の中でももっとも広い広場の中央に大砲を並べた。その外側には魔法兵団と矢組部隊が陣取った。戦闘で穴の開いた大通りとはいえ少し浮かして大砲を運ぶと思ったほど時間はかからない。砲撃開始の時間まで、まだ少し時間が残ったところで準備が完了した。


 * * *


「砲撃部隊から準備完了、そして攻略部隊は王宮突入の準備完了との連絡」


 通信兵の報告を受けとると、王都の陥落を自分の目で見るため司令官と副官は陣幕から出た。


 白く美しかったエルダイズ王国の王都からは、今や灰色にくすみ、あちこちから煙が昇っていた。

 それでも王都の中心にある王宮と、それを守る結界は美しい輝きを放っていた。


「砲撃を許可する」


 司令官が静かに命令を発した。

 それを通信兵が砲撃部隊と攻略部隊へと連絡する。


 通信兵の連絡が終わるとすぐ、王都の中ほどから幾筋もの砲煙が王宮へと伸びた。

 王宮の結界にぶつかった砲煙が爆発したのが見えた。


 王宮は最初の一斉砲撃に耐えた。


 そこから数分で二度目の一斉砲撃を受けた結界は、ほぼ無色から少しくすんだ灰色へと変質した。


「さすが王宮の結界だな。二度の一斉砲撃に耐えられえるとはな」


「小さい分、強力なのかもしれませんね」


 副官が意見を述べた。


「どちらにしろ、あと何度耐えられるか、だな」


「あと6回ありますので問題ないかと」


 三回目の一斉砲撃は耐えた結界だが、四回目で結界に割れ目が入ったと思うと砕け散るように崩壊した。


 その瞬間を逃さず、魔法兵団が魔法攻撃を開始した。


 爆炎と爆裂の両方の魔法弾が王宮に襲い掛かった。王宮からいくつも巨大な爆裂が起こった。そのまま精鋭の魔法兵団による全力攻撃が数分続いた。これに耐えることなど不可能と思わせる激しい攻撃であった。


 爆煙が納まると、王宮はむき出しになっていた。思ったほどは破壊の跡が見えない。特に高い主塔がそのまま残っているのが意外であった。さらには、王宮の塔から魔法攻撃が始まった。


「あの攻撃に耐えただと!?」


 ヤールイコ司令官は少し考えこんだ。これだけの規模の都市と王宮だと考えると、まだ知らない防御機構があってもおかしくはないだろう。


「まだ隠れた防御があったのかもしれませんね」


 副官も似たような考えを持っていたようだ。


「そのようだな。まだ終わりではなさそうだ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ