第3話 王都炎上
ガルドは眼下に広がる惨状を信じることができなかった。
仲間とともに50年前に打ち立てた王国。その象徴である王都が炎上しているのだ。
ガルドは人形使いだ。人形や泥の固まりに妖精を憑依させて、自在に操るのだ。だが今乗っている大鷲のように、生物も操ることができる。雛の時から大事に育てた友達のような大鷲だ。妖精を受け入れてもらえたので憑依させたら、力も体力も、そして知能も大きく伸びたのだった。
ガルドは、その大鷲に乗って王都まで飛んできたところだった。この5日間で二度目の臨時招集が来たので、参上するためである。
ちなみに最初の臨時招集は無視を決め込んだ。
王国には大賢者と言われている魔法使いはガルドを含めて4人もいるのだ。森の奥で引退同然のように暮らすガルドがわざわざ出向かなくても、残りの大賢者が解決するだろうと鷹をくくっていたのだ。それに王都の鉄壁の守りを崩せるとは思えなかったのだ。
いつものように招集を無視したガルドであったが、短い期間で二度目の召集が来たとなると話は別だった。大鷲のダルに飛び乗って、夜明け前に王都を目指して出発したのだ。
「そんな馬鹿な!」
ガルドは叫ぶと、王都を一周するようにダルに頼んだ。
自慢の三重の城壁で守られた王都。鉄壁の守りと言われた王都リナエルテだったはずだ。
だが巨大な王門はだらしなく開け放たれて、見たことのない兵士が列を作って入場していたのだ。城内のあちこちから煙が上がっていた。略奪が行われているのかもしれない。
「俺の自慢の黒鱗の騎士は何をしてるんだ!?」
ガルダが得意技とするのは身長2mはある巨大な鎧人形だ。切っても叩いても、少々のことでは壊れない頑丈な人形だ。痛みも感じないので、普通の人間には太刀打ちができない。
それが王門だけでも10体はガードしていたはずだった。例え100人の兵士でも相手になる。いや、王門のように狭い道であれば1万人でも守り切れるはずだった。
「そもそも結界はどうした?」
王都の守りが鉄壁を誇っていた最大の理由は、50年前に女神から賜った物理結界があるからだ。魔法攻撃も物理攻撃も跳ね返す、強靭な結界だ。だが王都を守っていたはずの結界は見当たらない。
王都の中心にある丘の上だけに最後の結界だけが残っていた。
ガルドは少しほっとした。よかった、まだ王宮は守られている。
「ダルよ、王宮に行こう」
大鷲は、再び翼を羽ばたくと一気に上昇した。
結界の高さは100mほどで、頂は空いている。そこからガルドとダルは王宮へと入っていった。