正体
「もみじ……?」
目の前でクスクスと笑う、その女の子は、どう見てももみじだった。
しかし人間がこの極寒の異空間に全裸でいられるわけがない。
「思考があります。……ゾンビではありませんよ」
黄泉野くんが私に教え、もみじに向き直る。
「もみじさん……。あなた、カナさんと会えた喜びに満ちてらっしゃるようですが……」
「そうなの!」
もみじの顔が、喜びに歪んだ。
「ずっと……ずーっと心配だったの、カナちゃんが元気でいるかどうか──」
「元気だったの?」
警戒しながら、私は聞いた。
「カナちゃん、どこにいるの?」
「あのね……」
また彼女がクスクス笑い出す。
「騙しちゃってごめんねぇ、駒子さん」
「もみじちゃん……! そんな……」
隣で谷くんが地面に膝をついた。その手からカメラを奪うと、私はもみじに向ける。
「あんた……一体、何なの? ゾンビでもないし、人間でもなさそうね?」
「さっきも言ったでしょ? あたしはあの子たちの創造主」
「この異空間も──あなたの創造物ってこと?」
「ちがうの」
急にもみじが悲しげな顔になり、首を横に振りはじめた。
「あたし……わけがわかんないの。カナちゃんがいきなりあんなになって……。お腹空かせてるだろうなあって……、思ったから」
言ってることがわけがわからない。
しかし目の前のもみじはただの弱そうな女の子だ。しかも今、喋りながら隙だらけ──
私は手を貸し、谷くんを立たせた。
武器はないが……、三人がかりでなら、楽勝で取り押さえられる。




