第一章 結論から言うと、新戸初音は昔からお兄ちゃんのことが好きなのである。
第1話
ピンポ〜ン♪
「こんちは〜! ○前館で〜す」
「あ、はーい」
俺の名前は、新戸達人
何処にでもいる自称ナイスガイで中肉中背の、今年23歳を迎える引きこもりのニートだ。
俺は頼んでいたピザとコーラを受け取ると、それを、冷房のガンガン効いた部屋に配置してあるベッド横のサイドテーブルへと置いた。
そして、俺は流れるように鉄製のベッド目掛けてかっこ良くダイブしようとしたのだが……。
「あっ!」
助走が足りなかったのか、誤って、ベッドのフレームに右の脛を強く打ち付けてしまった……。
「ぐぁぁあぁあぁぁあぁあ!! 痛ぇえ!! 弁慶の泣き所! マジ!痛ぇえ!!」
俺は半泣き状態で自室のフローリングをゴロゴロとのたうち回った。
「ぐぅ……」
俺は右脛の痛みに、なんとか耐えながら、「ヨロヨロ」と床から起き上がった。
え?そもそも、なんで俺が、NEET LIFEを送れているのかだって?
正直…その件についてはあまり思い出したくはないんだが…。
それは、5年ほど前に会社経営をしていた義父からある程度のまとまった小遣いを頂いたからだ。
義父とはそれっきり一度も会っていない…と言うかむしろごめんだ…。
俺達を捨て、勝手に出て行きやがった…あのクソ野郎のことなんか…。
まぁ、そのお金も今、殆ど底をついて来ているのでそろそろ働かないといけない訳なのだが……「はっきり言ってマジで働きたくねぇ!!」
出来ることなら、一生快適なNEET LIFEを送りたいものだ……。
「……はぁ〜」
俺は溜め息を吐いて、過去を思い出す。
今思うと、俺は学生の時に受けたトラウマがある故に、今こうして社会で働く事に対して抵抗があるのかもしれない。
当時の事を思い出すたびに、色々と複雑な感情が芽生えて来やがる。
と…俺は、キンキンに冷えたコーラを一口飲むとつぶやいた。
「……久々に、『RNO』でもやるか」
『RNO』とは、今大人気のゲーム用ソフトRNOの略称の事で、今から5年ほど前に登場した、フルダイブ型対応のVRMMOソフトのことである。
実はこのソフト、元から大人気ソフトというわけではなかったようで、出た当初は売り上げも思うように伸びず、世間ではクソゲーなんて呼ばれていたらしく、1度も日の光を浴びることなくして、最近まで姿を消していたらしい。
しかし! 5年の月日が経った今現在、世界で1番影響力のあるサイトで「今! 最もアツいVRMMO!!」と言うタイトルの記事で取り上げられると同時に、世界中で波乱を呼んでいるらしいのだ。
なぜ、一昔も前に世間からクソゲー認定されていたVRMMOが5年の月日が経った今になって、急に世間から注目を浴びることになったのか……。
俺はその内容が少し気になったので、少し前にネットで調べてみることにした。
すると、このソフトが世間で取り上げられ出したその理由として、1番有力視されていたのは、『有名アイドル』によるCMや広告等が増えたことが原因だとかなんとか……。
俺が見たネットの記事には、その様に書かれていた。
ほんと、世間様の手のひら返しというものは怖い限りである。
俺はこのソフトがクソゲー認定されていた時からずっとやっていたので、歴で言うと今年に入ってRNO歴5年目と言うことになる……。
因みに現時点での俺のRNOの進捗状況はというと……ほぼ全クリしているようなものなので、ここ最近は放置気味だった。
あ、因みにニート歴も今年で5年である。
俺がピザを食べ終え、コーラに手を掛けた……その時だった……。
ドンドンッ!! ドンドンッ!!
突然、俺の部屋のドアが、「ミシミシッ」と音を立てると共に部屋全体が揺れた。
誰かが俺の部屋のドアを、『とても強い力』で叩いたのだろう……。
俺の部屋のドアは、比較的薄い構造なので、「通常」であれば、「コンコンッ」と軽く叩けば、中にいる者は自ずと気づくくらいの厚さではある。
しかし、中にいる者がVRモノをやっていた場合だと、「通常」とは大きく異なってくる。
実際に、VRモノを起動していた場合、意識がかなりゲームに向いている為、大きな音じゃないと気づけない事があるからだ。
その為、家族には俺の部屋に用がある場合は、《《少し強め》》でドアを叩くように! と、前もって指示していたのだが……これはあまりにも強すぎる!
だって!「ミシミシッ」て言ったし!!
「アイツ……」
俺は、ドアの向こうにいる人物を特定することが出来たので、「やれやれ……」と重たい腰をあげてドアの方へと向かった。
「は〜い」
to be continued……。