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釣りはいらねぇぜ
ずっと自分がぼんやりと抱えていたものを、他人の口から聞くのはなんだが不思議な感覚だった。なんとなく胸の辺りがもやもやして、脳に何かが詰まっている感じ。
僕は椅子にどっかりと座って、返す言葉もなく目で訴えた。「まさにそうだ。」と。
ふふん、と得意げに鼻を鳴らして「で、高橋くんの目から見て私はまた学校に通えそう?」と堀は再び尋ねた。
僕は顎に手を当ててしばらくきちんと考えた。それから、答えた。
「どうだろう。通えるとは思うけど、変な目では見られると思うよ。みんな堀さんに興味津々だから。どの程度まで我慢できるのか、堀さん次第だと思う。」
「高橋くんだったら通う?」
「僕だったら…、そうだね、通うと思う。ある程度我慢する覚悟をして。」
「そ。じゃあ私通う。」
お釣りは百二十円です。それくらい自然に彼女はそう言った。
僕は一瞬つま先立ちをして、それから口を一文字に結んで蛍光灯を眺めた。まるでそれの専門家であるかのように。
太陽は完全に燃え尽きていた。すっきりした様子の堀はファミマのシュークリームが食べたいと教室を出て行った。僕も堀に連れられて学校をあとにした。そろそろお腹が空いてきていたが、既に流され始めている波に逆らう気はもう起こらなかった。釣りはいらねぇぜ。




