〜赤い液体と小鳥の置物〜
翌朝、心音は目を覚ました。
(昨夜の出来事はなんだったんだろうか……)
そんなことを思いながらも、心音は朝の支度を始めた。
そして朝食を食べに行こうとしてそのホテルのドアを開けようとした。
するとそのドアの下に小さな箱があることに気付いた。
(この箱は何だろう?)
その箱にはどこにも宛名が書いていなかった。
ただ箱の上に【コノヘヤノカタヘ】とだけ書いていた。
心音はその箱を部屋に持ち帰り、箱を振ってみた。
【カラカラカラ】
中には何か物が入っている音がしていた。
でもそれは爆弾だとかそういうものではないことは、心音は音でわかった。
そして恐る恐るその箱を心音は開けることにした。
その箱の中には赤い液体が入った小瓶と、可愛らしい小鳥の置物が入っていた。
(何だろう……この液体……まさか……毒薬……⁉︎)
心音は、その箱の中に一枚の紙を見つけた。
その紙にはこう書いていた。
【この薬を飲めばどんな人でも綺麗な声が出るようになります】
(もし……これが毒薬だとして死ぬ可能性があるとしても……)
(もし……万が一でも……この薬が本当なら……それでもし本当に私の声が元通りになるんなら……)
(私は……この薬を飲みたい!)
心音は気付いたら何も考えずに、その小瓶の蓋を開けていた。
そして、そのままその薬を勢いよく飲み干した。
その直後、心音は床に倒れ込んだ……。
「心音! おい心音!」
心音が眼を開けるとそこには藤田がいた。
心音は寝ぼけ眼で藤田を見た。
「まったく……睡眠薬でも飲んで自殺したのかと思ったぞ……」
藤田は、携帯電話に電話しても出ない心音を心配して、部屋まで駆けつけたのだった。
「あれ……? 私…… あっ! そうだ……何か変な液体飲んで……それで……」
「ん? 心音? 何を言ってるんだ? 何を飲んだって?」
「だから……そこの小さな箱の中の……!?」
そこまで言った後で、心音はその部屋の異変に気付いた。
さっきまでそこにあった小さな箱と液体の入った小瓶はどこにも無かった。
そして小鳥の置物だけが何故か枕元に置かれていたのだった。
心音はその異常な状態に困惑しかできなかった。
「うーん……まだ火傷の後遺症? みたいなもので幻影でも見てるのかな?」
「一回医者に見てもらうか?」
藤田は困惑し続ける心音に、そう提案した。
「……いや……大丈夫……です」
心音は言いたい言葉を飲み込んで、藤田にそう答えた。
「そうか……まーあと数日は安静にしてた方がいいかもしれないな……」
藤田はそう言うと、心音を布団に寝かせてから部屋を出て行った。
(さっきの出来事は何だったんだろ……夢……だったのかな……)
心音はその数時間前の出来事が理解出来なくなっていた。
そして気付いたら心音は眠っていた……。