〜残酷な事実〜
数日後、心音は病院のベッドの上で目を覚ました。
心音は、最初自分がなぜここにいるのか理解出来なかった。
ただ全身が酷く痛いことだけは感じていた。
でもそれ以外感じれなかった。
最初にその違和感に気付いたのは心音が息を出そうとした時だった。
ただフーというその声が出ない。
心音は自分の喉に何が起きているのかが全くわからなかった。
ただ一つ、声が出ない。
そのことだけは気付いてしまった。
「目が覚めたかい?心音」
心音が寝ているベッドに男が近づいて来た。
だが男に対して何か言おうとしても、心音は声が出なかった。
「そっか……心音も……気付いたんだね……声が出ないことに……」
男は、心音に今の状況について話し始めた。
「いいかい……心して聞いて欲しい……」
「君の喉は……この間の火事で焼けて、その機能を失ってしまったんだ」
「そして医者が言うには……君の喉はもう完全には再生はしないらしい」
「だから……これから声が出る様になることはあっても……今までの様に歌える様になることは無いと思う」
「でも……君にはまだ曲を作る才能がある……だからこれからは作詞家や作曲家として生きて欲しい」
心音はその男からの告白を聞いて呆然とした。
そして自分の状況を本当の意味で理解した。
男はそんな心音の様子を見て、涙が出そうになっていた。
でもそんな感情をグッと抑えると、持っていた携帯電話を心音に渡した。
「とりあえず当面の間の全ての会話はこの携帯のメールで行うことにしよう」
「君の携帯はこの間の火事で焼けてしまったから、新しく契約したこの携帯を渡しておくよ」
心音はその携帯電話を受け取ると、すぐにメールを打った。
【ありがとう藤田さん。これからもよろしくね】
【マネージャーとして当然のことだよ心音】
それだけの簡単なやりとりを二人はメールで行った。
その後、急に藤田の携帯に電話が掛かって来た。
「じゃあ……また明日も来るから」
藤田はその言葉を心音に告げると、病室から出て行った。
それから数日間、藤田は何度も心音の元を訪れた。
そんな藤田に励まされ、心音もリハビリを必死で頑張った。
そのリハビリの甲斐もあり、少しずつ声も出る様になって来ていた。
だが、その声は以前の様な綺麗な声には戻ることはなかった。
そんな自分の状況に心音は何度も心を折られながらも、リハビリを頑張って続けた。
全てはいつの日かまた歌える様になる為に。
その事だけを心音は願いながら、必死でリハビリを頑張った……。
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