第二話
二話目です、次の更新はいつになるか分からないです。
「グァッ」
目が覚めると突然、何も考える事が出来ない程の頭痛が襲ってくる、体のあちこちが悲鳴を上げている。
今の状況を理解することが出来ない、余りの痛さに意識を手放してしまいたい位だが。
何故だろうか、意識を失うことは無かった。
「ウッ、一体なんなんだよ…」
そしてしばらく時間が経つとようやく全身の痛みが引き、頭痛が少し和らぐ、完全に治ったとはまだ言えないが動くことが出来るようになったからには行動したほうが吉だろう。
「は?何処だ此処」
辺りを見回した後の感想だ、彼の目に映る光景はすべて岩、岩、岩、いわゆる洞窟という所に似ている。
その先には通路が続き、光源が無いのに向こうまで見える。
そして今気づいた、何故此処で目を覚ましたのかを何も覚えていない。
訂正しよう。
自分が何者なのか、今まで何をしていたのか、何故此処にいるのか、
何も分からない、何も思い出せない。
何故だろうか、記憶が無いのに情報は頭に入っている。今頭の中にある情報の中にこの洞窟の情報が入っていた、ここは|《死者の楽園》と呼ばれるダンジョンとやらの最深部だそうだ。
一見ただの洞窟なのになぜ特定できたのだろうか…
まぁ、今はそんなことどうでもいい。
まずはここから移動することにしよう。
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「何だこれ、鎧か?こっちは大剣、大盾もある。なのに中にいるべき人だけがいない…。一体何があったんだ?」
おぼつかない足取りで通路に向かって歩くと奇妙な物を見つけた、中身のない鎧だ。
もし鎧がバラバラになっていたら、持ち主が捨てたのかと無理やり納得することが出来たが、この鎧はバラバラになるどころかさっきまで中に人がいたと言われても不思議ではない程にまるで座っているように見える.
さらに歩き続ける、とても高そうなローブが落ちている、まるで突然中身が消え、そのまま重力に従い落下したかのようだ。傍に分厚い辞書のような物が置いてある、持ち上げようとしたがかなり重く両手でようやく胸の高さまで持ち上げる事が出来た、立ったまま読むのは難しそうだがこんな所で読むのは遠慮したい、ここから少し離れた所で読むことにした。
「なんでっ、こんなにっ、重いんだっ」
両手で辞書を持ちながら歩くのにとても苦労した、まだ頭痛は収まっておらず、まっすぐ歩くことすら難しい状態で重量のあるものを抱えるとどうなるか、当然前に倒れる。
そんなことを繰り返しながら歩いていると広い空間に出た。
そこらじゅうにテントが張ってある、もしかしたら誰かいるかもしれない。
近くに辞書を置いてからテントの方へ移動する。
「おーい、誰かいないかー?返事をしてくれー」
大声で同じ言葉を繰り返し叫びながら、近くのテントの中を覗いてみたが、先程と同じように人だけがいなくなっている。
そうして、人を探し他のテントを覗いてみたが、何処にも人はいなかった。
そして最後に残ったのはほかのテントよりも一回りも二回りも大きなテントだけだ、恐らくここにも人はいないだろうが少なくとも何があったのかの手掛かり位は掴めるだろう。
「誰かいるかー? やはり誰もいないか……ん?何だこれ、ペンダントか?何か気になるな、ちょっと触ってみ…る………グゥアアアアアアア、痛いイタイイタイ」
少しがっかりしたが、ふと辺りを見回すと小さなペンダントが落ちているのが目に付く,目を逸らそうとしてもいつの間にか視線が小さなペンダントに映ってしまう、おそるおそるペンダントを拾った瞬間、先程と同じ位かそれ以上の痛みが彼を襲う、それと同時に持ち主の記憶らしき物が流れてくる。
いや、思い出したと言うべきか。
今までの人生、愛した人、愛娘、戦友、誇り、そして最期、最下層で力尽き死者となってここで彷徨うことになったが、突然何かに引き寄せられた。腐った体が分解されていくのを感じながら。
記憶の持ち主はとても身長が高く筋肉もよく付いていたのに対して彼の腕は細く、身長も高くは無さそうだ。
つまりこの記憶は彼の物では無いということ、しかしなぜ彼の物では無い記憶があるのかは分からない
そこまで考える事は出来たが、それ以上はひどい頭痛の中では難しかった。
「ハァッ、ハァッ、痛ってぇ…、本当に何なんだよ…」
先程と同じように時間が経ち、痛みも引いてきた為もう一度状況を確認する。
・このペンダントは先程の記憶の持ち主が愛娘からもらったプレゼント
・ペンダントに触れた瞬間持ち主の記憶を思い出した
・なぜ他人の記憶があるのかは不明
「この辞書は触れても何も起こらなかったな。違いは何だ?」
そう言いながら先程辞書を置いた所に戻る、元々あの辞書を読む為に此処に来たのにいつの間にか人を探してしまっていた。
まぁ収穫はあったが。
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