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リボルバーハート  作者: がっかり亭
第一章:装填
8/59

1-8

「なにぃ!?」

「いきなりはないんじゃない? 間ってものがない? 学校で習わなかった?」

 ランドセルガールが力を込めると、鋼の拳が押し返される。

「この力……お前もASエーエス能力者だな! そうでなければそんな貧弱な筋肉で押し返せるわけはない!! ドーピングだそんなもの!! 恥ずべき行いだ!!」

「【AS能力】使っておいてよく言えたものね」

 AS能力?

 聞いたことのない単語だ。

「オレは筋肉を硬化させることができる! だがその筋肉はトレーニングで鍛えたもの! お前とは違うわ!」

「なにその自分ルール。そのほうがよっぽど卑怯じゃん」

 ランドセルガールはパンチを受け止める手をなんと片手に変え、左手でランドセルをまさぐった。

 すると中から、フリスビーのようなものを取り出した。

 よくよくみれば、その円には6つの穴が開いている。

 あの形、どこかで見たような……そうだ、黒電話のダイヤルに似ている気がする。

「ほら」

 と、そのダイヤルだかフリスビーだかが飛んできた。

「お、え?」

 反射的に受け取ったが、うまくつかめずにお手玉してしまう。

 落とさなかっただけ自分をほめてやりたいところだ。

「何やってんの。ピザでも焼いてる?」

 幼女はほめてくれない。

「……いや違うか。回すのは焼くときじゃなかった……例え間違えた……」

 またなんか反省してるし。

 いや、そんなことはどうでもいい。

「これは何なんだ!」

「それを胸につけて。あ、ブラじゃないよ」

「見りゃわかるよ! 何かはわからないけど」

「いいからつけて! このマッチョも空気読んで待ってるんだから!」

 そうなの!?

 あるいは、ランドセルガールなりの冗談だったのかもしれない。

 鋼は明らかに力を込めて彼女を押している。

 冗談だとすれば、わかりにくい。

 指摘したらまた反省しそうだからやめておこう。

 ……ふと。

 妙に落ち着いている自分に気が付いた。

 心臓の不協和音も止まっている。

 そういう意味では、彼女の冗談のおかげかもしれない。

「それで、これを胸に? 何でだ?」

「うるせーっ!! いいからつけろばか!!」

 すごく、怒られた。

 わけがわからないが――

「そこまで言うなら……」

 俺は、そのフリスビーを、恐る恐る胸に押し当ててみた。

 すると、掃除機のコード巻取りを逆回転したように、大量のワイヤーが猛烈な勢いで飛び出した。

「うわっ!?」

 ワイヤーは俺の体に巻き付いてくる。

 手足にまで伸びていくワイヤーは、血管に張り付いていく。

「な、何だよこれぇ!?」

「同じリアクションばっか。再放送?」

「そういうのいいから何か答えてくれ!!」

「マジレスはひどない? それは、ブラッドスーツ。アンタのAS能力に合わせた装備だってさ」

「ブラッドスーツ?」

 なんだそれ。なんだこれ。

 変身ヒーローだったらもっと顔や体を覆うだろうが、手足や首の血管にかぶさるように、部分的にしか覆われていない。

 両掌だけがバンテージのようにぐるぐる巻きで、特撮ヒーローの拳のように硬質化していた。

「ちゃんと装着できたか。それじゃ、選手交代」

「ぬおおおっ!?」

 ランドセルガールは無造作に鋼の拳をいなして、こちらに向かってくる。

 だ、大丈夫なのかそれ?

 そんなことして怒らせるだけだろうに――

「ぬ! ちょうどいい負荷だったから腕を鍛えていたのに、逃げるんじゃない!」

「どこで怒ってるんだ!! お前ら二人ともマイペースすぎるんだよ!!」

 異常に異常が重なった事態に、動揺こそ消えたが、理解は全く追いついていない。

「一応言っておくけど、本気でやらないと殺されるよ」

「え?」

 ポンと俺の手にタッチしていくランドセルガール。

 入れ替わるように、筋肉の塊が突っ込んできた。

「ヴぁオラあああああああああああああああ!!」

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