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リボルバーハート  作者: がっかり亭
第八章:交点
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8-3

 今度は後ろからではなく、目の前に瞬間的に結城りりんが現れた。

 例の金色のオーラこそ出していないが、どう考えても、例のイカレた能力で超高速移動して来てやがる。

 駅前だぞばか!!

「どいつもこいつも気軽に力を使うな!!」

「はっはっはっ。大丈夫大丈夫。ナナちゃんの手品だと思うさ」

「そういう芸人じゃないんだけど!? 手品師だと思ってたの!?」

 滅茶苦茶雑なりりんに、完全に振り回されている。

「っていうか、なんでここにいるのよ。自力で世界中旅してたんじゃないの?」

 そうだったの!?

 自力でって……いや、まぁ出来るんだろうけど。

 Tシャツとジーンズというラフな服装から垣間見える肌は、もともと褐色の肌が、更に小麦色に焼けていて、なるほど、あちこちを旅してきたんだろうとわかる。

「英語が全くわからないから、寂しくなってね……ちょっと帰って来たんだよ」

「っていうか、行ってたのブラジルじゃなかったんスか。カーニバル見たいとか言ってたでしょ?」

「そうだけど?」

「あそこポルトガル語っスよ」

「なんで!? 南米だよ!?」

「米ってついてるからって英語が通じるわけじゃないでしょ!」

 やばい。なんかセルのツッコミが心地よく感じてきた。

 りりんがあまりにも無茶苦茶なので、ツッコミが光る。

「そんなに責めなくてもいいじゃないかあ」

 大の大人が、ちょっと言われたくらいで、目に涙をためている。

 二人が組んで芸人やったら面白そうだと思ったが、このメンタルでは無理だな……。

「あんたもたいがいめんどくさい性格ね……いい年のくせに」

「がびーん!!」

 漫画のように白目をむいてショックを受けるりりん。

 それこそ漫画ならド派手な集中線がバックに出ていることだろう。

 しかし、実際何歳なんだろう。

 ノリは若々しいが、確かに20代の真ん中か後半くらいには見える……。

「年のことは言いっこなし!」

 たぶん、俺が言ったらヤバいことになりそうなので聞かないことにする。

「でもお祭りかー、楽しそうだねー」

 ころころ感情を変えて、本当に子どものような人だ。

「せっかくだし、みんなで回るっスか?」

「いいねいいね~!!」

 満面の笑みでダブルグッドサイン。

 瞬間瞬間を生きてるなこの人……。

「あ、ゴメン。あたしパス。またこの後ステージの打ち合わせがあるのよ」

「出るの? 見るよ!!」

「ありがと。2時間後にまたここでやるから来てね」

「もちもちろん!!」

「なにするんスかー!」

 にゅーっともちみの頬を引っ張りながらにこにこと言った。

「えっと、アウトくんだっけ? レッツゴー!」

「お、おい」

 こっちの言葉なんかお構いなしに、すごい力で引っ張ってくるりりん。

 というわけで、買い食いしまくるもちみと、なんにでも興味持ってフラフラするりりんに振り回されながら、市内を練り歩いた。

 商店街の空き店舗やシャッターもアートで彩られ、にぎにぎしい。

 それのひとつひとつにテンションMAXにできるりりんも凄い。

 体力的には全然平気だが、気力をごっそり奪われた気がする。

「でも平和っスね」

 休憩がてら腰を下ろした川のそばの公園の雁木――船着き場としての石段跡だそうだ――に腰を下ろしていると、不意にもちみがつぶいやいた。

「ああ、確かにそうだ」

 実は、事前にバケツ長官から、アートフェスティバルを狙って、クラウレンが襲って来る可能性を伝えられていた。

 生粋の愉快犯である彼らは、一番目立てるタイミングで動くのは、目に見えていた。

 そこでパトロールがてら、俺たちは祭りを楽しんでいたのだ。

 りりんの登場は長官も計算外だったらしい。

 先ほど腕時計型の通信機で連絡した時、バケツ顔でもわかるくらい困惑しているのが画面に出ていた。

 彼女の力はあまりに強大過ぎるため、使いどころが難しい、という話だった。

 君が上手くコントロールしてくれるとありがたい、とも言っていたが、コントロールどころか振り回されてこのへろへろな有様だ。

 しかし、あの規格外の能力は、そうそうに使えないというのも理解できる。

 本来なら、全部彼女に任せてしまえばいいのではとも思いそうなものだが、あの大雑把な性格を見てしまうと、とても手放しにお任せできない。

 光の速さでパンチした相手が吹っ飛んでビルを倒すくらいの惨事は起こりそうだしな……。

「このまま敵が出ないでくれたらありがたいが……」

「同感っス。ボクも戦闘要員じゃないし」

 バニラとチョコのソフトクリームを二刀流で交互に舐めながらもちみが言う。

 いくらなんでもそんなに食って生活習慣病とか大丈夫なんだろうか。

「えー、わたしは悪者をバンバン倒したいよっ!」

 そう言ってシャドーするりりんの手の動きは人智を超える速さで全く見えない。

 不安すぎる……。

 何事も起きないでくれよ……と祈らずにはいられない。

 だが、その祈りも無残に打ち砕かれることになる。

 それは、よりによって、セルたちのステージに向かう時に起こった。

 ステージが、爆発炎上するという、最悪の形で――

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