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リボルバーハート  作者: がっかり亭
第七章:曇天
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7-6

「まだ自分でも、上手く言葉には出来ないんですけど、もう命を粗末にするようなことはしません。笑えないと言われましたしね」

「うん、それは大事なことだよ」

 バケツが腕を組んで何度も頷く姿はどこかシュールだが、その声は真摯だった。

 ふと、セルを見るとニヤニヤしている。

「なに? あんた急に敬語になってない?」

「あ、ああ、そうかもな……長官にため口だったほうがおかしかったんだ。……本当に自覚がなかったんだろうな。自分がやっていることに……」

 これまでは、自分の使い道にしか意識が向いていなかったんだ。

 全然、周りが、いや自分が見えていなかった。

「先輩であるわたしに対してもそうするべきだと思うけど?」

「それはない」

「ひどない!?」

 ひどくはない。

 セルはほっといて、バケツ長官に向きなおる。

「やっぱり、みんなを守るために力を使うのはやめないつもりです。だから、ASSを続けたいと思っています」

「うん。君が参加してくれるのは嬉しいよ」

「……でもこれも、力の使い道にまだ溺れているのかもしれません。自分の力を使う快感に、他人を使って言い訳しているだけかも……」

「力に溺れることはもちろん問題だけど、誰かのために力を使うことに、罪悪感にとらわれる必要ないよ。警察官や消防士や、軍人や医者や……誰の不幸に対して動くのが仕事の人たちはたくさんいる。だけど、みんな誰かの不幸を願っているわけじゃない。その不幸をどうにかしたいと思うことは、間違いじゃない」

「そう……なんですかね」

 理屈はわかる。

 だけど、一度熱されて舞い上がって、それが過ぎて、冷静になった今は、過去の自分の愚かさが殊更に感じられる。

 この誰かのために力を使いたいという気持ちが

「ではもし、君に誰かを救う力がなかったとして、それでも君は見て見ぬふりをするかな?」

「え?」

 見てみぬ振りをするかどうか……?

 どうだろう。するだろうか。

 助けたいとは思うんじゃないだろうか。

 でも、助けられる力はないんだよな……?

「おそらく君は、見捨てはしないと思うよ。だとすればそれは能力とは関係ない君の根っこの部分だ」

「あ……」

 力が無くても、見捨てないなら。

 そんな俺に力が与えられただけだ。

 その根っこを、忘れられないでいられたのなら。

「うん、やっぱり、いい顔だ」

「でしょう? 自分でもそう思います」

 今度は素直に受け取ることができた。

 だから、自然に笑みがこぼれていた。

「なんでやねん!!」

 ただ、軽い冗談にセルが全力でツッコんできたのは、素人目にも笑いを間違っていると思う。ボケとツッコミの大きさが釣り合ってないというか……。

 心配なのはむしろセルの方じゃないだろうか。

 そんなことを考えられるくらいに、心が晴れている。

 これまでは目も心も曇っていたのだと思う。

 セルはお笑い芸人としてはまだまだなのかもしれないが、少なくとも、俺を救ってくれているよ。

 本人はそれじゃあ満足はしないだろうが。

「なに? 人をジロジロ見て。バケツよりインパクトのある顔に見える?」

 ……うん。

 上手い事言おうとして、やっぱり言えていない。

「なっ、何よその生ぬるい笑み!!」

 いいじゃないか、笑いは笑いだろ。

 流石にそれは言えなかった。

 もう頬を張られる必要はなかったから――

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