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リボルバーハート  作者: がっかり亭
第六章:暗転
27/59

6-4

 穴の向こうに一部が見えたカバネは、その周囲にいくつもの火球を生み出していた。

 その浮遊する火球が、次々と発射されていたのだ。

 火球は、真後ろに尾を引くように火を噴きだして飛んでいく、その姿はさながらミサイル。

 あっという間に壁は砕けて散ってしまう。

「ほんっと、めんどくさっ!!」

「イヒヒッ!! お前みたいなチビ、燃やしてもあんまり楽しくないからなあ!! せめて長く楽しませてくれよ!!」

「コンプラも知らない馬鹿野郎!!」

 セルはランドセルから縦笛を引き抜き、火球を撃ち返して進む。

「いいのかぁ? そんな丸見えでさぁ!」

 前傾になったセルの、背中のランドセルが、彼女の頭にもたれかかるように開く。

 するとランドセルの中から伸びたアンテナのようなものが、電磁的な傘となった。

 見たこともない超科学だが、あのバケツ長官が用意した装備なら、有り得る気がした。

「へぇ! そういうのもあるの!」

 カバネは楽しそうに笑うと、次々火球を放った。

 火球は電磁傘に弾かれるが、衝撃の全てを相殺できるわけではない。

 たたらを踏むセル。

 しかし止まらない。

 凄すぎる。なんでそんなに戦える?

 セルはお笑い芸人が本職であって、AASはバイト感覚のはずだ。

 それでも、ここまで体を張って戦っている。

 俺は、能力のせいで世間に馴染めないというハガネの言葉に自分も同じかもしれないと思ったが、セルは違う。

 世の中に背を向けず、それを守るために体を張っている。

 ランドセルを背負ったその小さな背中が、心底カッコよく見えた。

 俺も、あんな風に――

「ああああああ!!」

「おーおー頑張るねぇ」

 カバネに肉迫するセル。

 もうすぐ縦笛の間合いだ。

「無駄なのに」

 だが、セルの足元の空間が突然爆発した。

「っ!?」

 あまりに突然の衝撃にまともに反応も出来ず、セルはきりもみしながら吹っ飛ばされた。

 凄まじい蒸気が巻き起こり、あたり一面を霧のように包む。

「地下の水道管を加熱して水蒸気爆発を起こしたのさぁ。ヒヒヒ、別に見えなくてもカンで発火できんのよ。お前が悪いんだぜぇ? 地面を引っぺがすから、配管がところどころ見えちまっててなぁ!! アヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 薄煙の向こう、笑うカバネ。

 それを見て、走り出す。

 俺がいままで静観していたのは、ビビっていたからじゃない。

 一発しかないリボルバーを確実にぶち込むためだ。

 俺の身体能力は複数ある心臓の力が大きい。

 だから5発撃ってしまえば、むしろ常人より小さな心臓の力しかない。

 並外れた肺のおかげで動く分には問題がないが、落ちた運動能力でただ的になったら目も当てられない。

 チャンスを待っていた。

「アヒャヒャヒャヒャヒャ!! ガキを燃やしたら何秒持つかなぁ!!」

 今がその時だ。

「ん?」

 自分で生み出した霧で気づくのが遅れたカバネ。

 慌てて火球を生み出してももう遅い。

 俺は既に懐に入っている。

「あぁ?」

 俺はカバネを羽交い絞めにした。

 右の掌が、ちょうど当たるようにして固めていく。

「燃やしてみろよ。この距離だとお前もバーベキューだろ」

「離れろクズがぁ!!」

「そうかもな。だから、そんなクズは放火魔に抱き着いて一緒に燃えてやるさ」

 腹は決まっていた。

 もはや、ハガネにもカバネにも共感は出来ない。

 許せないと思える自分が、嬉しかった。

 だから、それを大事にしたい。

 その思いを守るには、コイツと戦うしかないんだ!

「なにカッコつけてやがんだぁ! 能力使っていい気になってる同じ穴のムジナの癖によぉ!!」

「ああそうだ、お前とは同じ穴の住人だ。だったら、せめて人の役に立ちたい」

 そうなれたら、少しは自分が好きになれるかもしれないから。

「おい、やめ――」

「リボルバーウェイブ!!」

 胸のリボルバーが回転する。

 心臓が弾丸の威力をもって作動する。

 カバネの胸に合わせた手が、増幅した鼓動の波を叩きこむ。

 大半が水分で構成される人体は、波を面白いほど伝導した。

 それは容易くカバネを貫通し、俺の体をも吹っ飛ばす。

 二人まとめて吹っ飛ぶ空中で、急速に意識が失われていく。

 心臓の鼓動が聞こえない。

 頭を動かすための酸素が消える。

 霞む視界の中、ぼろぼろのセルが走ってきているのが見えた。

 何か叫んでいる。

 そして、その背後に輝く流星が見えた。

 あれは何だ。敵か。

 あぶ――

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