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リボルバーハート  作者: がっかり亭
第二章:回転
11/59

2-2

「AASとは、アンチ・AS能力組織の略なんだ。つまりAS犯罪に対する警察と言っていいね」

 AASか……なんかケツみたいな名前だな。

 ケツというかバケツだが。

 そんなバケツ男がコーヒーを飲んでいる。

 どうやって飲んでいるのかは全く分からない。バケツに吸い込まれているのか?

 差し出された椅子に座り、バケツと向き合っている自分がひどくシュールに思えてくる。

「おや、そもそもAS能力とは何か、とは言わないのだね」

 コーヒーの飲み方が気になりすぎて話が全然入ってなかった。

 セルはセルで牛乳を一気しているし、もうちびっこにしか見えない。

「あ、ああ……そうだ。AS能力って何なんだ」

「【シンギュラリティ】という言葉を知っているかい?」

「聞いたことはある。詳しくはないが……」

 ニュースだったか漫画だったか……どこかで言っていた。

「技術的特異点。AIの進化が人類の想像を超えることだね」

「それがどう関係してくるんだ?」

「AS能力というのはね、【アンチ・シンギュラリティ能力】の略なんだ。つまり、シンギュラリティに対する人類側の抗体反応と言える。人類の想像を超えるAIが、予測できないほどの劇的進化、と言い換えてもいい」

 シンギュラリティへの抗体?

 いや、おかしくないか?

 そうだ、思い出した。あれはSF漫画で知ったんだ。

 それでは確か――

「シンギュラなんとかって、まだ起こってないなんじゃないか? SFの話だった気がするが……」

「ふむ、いいところに目をつけたね」

 目がどこにあるかもわからないバケツに言われるのはシュールだった。

「知られていないだけで、もうシンギュラリティには到達しているのだよ。この世のどこかでね」

「にわかには信じられない話だ……俺の見たSF漫画だと、シンギュラリティに達したらAIに人類が支配されていたけど、何も起こってないじゃないか」

「強者が支配や絶滅を引き起こすだろうというのは、人類の価値観だ。人類の思考をAIが超えているのだから、全く違うことを考えていても不思議ではないよ。例えば、人類の歴史を余さず記録するのを使命と考えたとしたら、干渉もしてこないだろうしね」

「なるほど……」

 確かにその通りだ。

 人類以上の思考力の存在が、型どおりのことをすると考えるのは矛盾だ。

「AS能力者が現れたことで、シンギュラリティを起こしたAIの存在が確定したが、それが人類に攻撃的な活動をしているという報告はない、というのが現状だね……と、話が逸れたね。一番、大事なことから伝えるべきだった」

「一番大事なこと?」

「聞きたいことがあるんじゃないかい?」

「……それは、俺が……AS能力者かどうかってことか?」

「聞きたいかい?」

「……呼んだ時点で答えは出てるようなもんだろう。戦闘までさせといて」

「それでも段階を踏んだ方が受け止めやすいと思ってね。もちろん、君は、AS能力者だ。その6つの心臓は、AS能力なんだよ」

「そうか……」

 言われて何が変わるわけではないんだけど、少しホッとした。

 この異形の体の正体が明らかになったことで、どこか胸のつかえが取れた気がする。

 長年悩まされていた症状に、ちゃんと病名がついたような感覚だろうか。

「だが、これが進化と言われてもな……」

「スポーツ万能だったろう?」

「そのおかげで地獄を見たけどな……くそっ、どこかのパソコンが進化したせいで、いい迷惑だ」

 万能が幸福とは限らないというのは皮肉な話だ……。

「……君の場合は胎児の時点で発現していたからね。能動的な発現じゃないぶん、世の中とのすり合わせが上手く行かなかったんだろう」

「みんな生まれつきじゃないのか?」

「ひとそれぞれだよ。ただ全員が30年以内に生まれている人間ということを考えると、シンギュラリティ以降に生まれた人間には少なからず因子があり、稀にそれが発現する、という方が正しいかもしれないね」

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