プロローグ
はじめまして。
趣味の範囲ではありますが、執筆活動をしてみたい!と意気込み、少しずつですが、投稿をさせて頂きます。誤字、脱字、文法等、未熟な箇所が散見されるとは思いますが、何卒ご容赦を。
「お前は散々逃げ続けた挙句、何も残せず自死を以て最期の逃避を望むか」
黒く塗りつぶされた空間で妙に通る声が聞こえる。声というよりは、音と表現した方が正しいだろうか。聞き慣れた言語が耳に届くが、意味を理解することができない。
意識はある。声は出ない。呼吸はか細く、身体に力は入らない。
ーああ、そうだ。俺は首を括ったんだった。もう、これから先どうやったって立ち直れる気がしない。生きているのが辛い。
「タダで死なせてはやらない。お前は救い用のない生き物だったが、それでもお前の生を望む人間がいた。これからお前の首が縄に締め上げられ、脳が機能を停止するまでの短い時間を引き延ばして、お前がよく妄想している異世界へと飛ばしてやろう。逃げたいと焦がれて、死ぬ勇気も無く、ただ無様に泣き続けたお前が望んでいた荒唐無稽な夢物語を始めさせてやる。」
ー首吊りっていうのは、苦しくないって聞いてたけど、やっぱり苦しいし怖いもんだった。心残りはあるけど、これでよかったんだと思う。これでもう誰にも迷惑をかけることはなくなる。
「私の声も聞こえず、ただ死を待つのみとなった無様な生き物よ。お前の言う偽善の言葉は、お前が自分を救いたいが為の言い訳だ。さあ、残り7分程度となったお前の命を長く長く延ばして送り出してやろう。そして、私が延ばしたその命が尽きた時にまた会いに来てやろう。お前という出来損ないの生命が、夢物語の中でどの程度成長するか期待はせずに待っているとする。」
ーさっきから、誰かが話しかけてきてる気がする。まさか、死にきれなくて誰かに見つかっているのか。それで、その誰かが意識を戻そうと呼びかけてくれているのだろうか。やめてくれ、もう呼び戻さないでくれ。お願いだから、このまま・・・
「ああ、そうそう。私にとっては、お前の一生はお前たちが映画を一本見る程度の時間の感覚だ。会いに来るのを忘れることはないから安心してくれ。映画一本分くらい楽しませてくれる程度には期待してもいいだろう?お前がその世界で過ごして得たものと、今逃げようとしている世界を天秤にかけさせるところまでを一作目としようじゃないか。」
ー死んだらどうなるのかって何回も考えたけど、何もないっていうのが1番確率が高いと思っていた。多分死んでるんだろうけど、意識はあるんだな。あー、でも少し眠くなってきたかな。これで眠ったら今度こそ終わりなんだろう。
すれ違うような、元々巡り会っていないかのようなやり取り。それも一旦終わりを迎える。強い眠気に襲われたその生命は抵抗することもなく目を閉じて、目覚めることのないよう祈った。
次回:異世界で目を覚ますところから。現世と異世界の主人公についての素性も交えつつ
皆様の暇潰しになれますように。