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1 悪夢の再来

 天井に溜まった結露が水滴となり地面に落ちる音が聞こえ意識を覚まし弱く動く瞼をゆっくりと開く。

 光を一切感じない真っ暗な空間。

 凍えるように冷たい冷気が溜まっているそんな場所に力なく横になっていた。

 ゆっくりと目を動かし天井の方を見る。

 見えるのは何も見えない真っ黒な天井。

 どうやらまだ目覚めの時間ではないようだ。

 地面はとても固く冷たく、頬や肩、足と素肌が出て地面と触れているところから熱を奪われ切ったのか感覚が薄くなっており感じるのは冷たく痛いという事だけ。

 その痛みを避けるべく動くべきなのだろうが、既に慣れてしまった私にとってそれらはどうでもよいことだった。だからただじっと微動だにせずそのまま横になっていた。

 まだ起きるには早いようなので再び眠る為に瞼を閉じた。

 だけど眠気はあるものの二度寝するにできない。

 いつものことだ。

 だからいつも通り考え事でもしよう。

 そういつもの願望でも考えるとしよう。


 母親の声、目覚ましの音、差し込む日差しに目を覚ます。だけどまだ眠く暖かいベットから出たくないと、軽くごねつつも欲を抑えて起き上がる。

 起きている家族に朝の挨拶をして顔を洗い、皆で朝食をとる。そして皆それぞれが今の役目である仕事や学校へ行く為に一度分かれる。

 そして学校で友人達やあの娘と一緒に教員の人たちに勉学を学ばせて貰い遊んで家に帰る。

 家族と再会し手伝いをして楽しい会話をする家族団欒の夕食を取ってお風呂に入り、明日を迎えるために暖かいベットで眠り一日を終える。


 ただそんな普通の生活ができていたら、どれだけ幸せだったろうか。

 いや、それは普通なのだろうか。普通とは何だろうか。本当にそれで私は幸せになれただろうか…。

 結局そんなこと、一つの幸福しか知らない私に分かるはずなどなかった…。


 そう寝れない時のいつものルーティンを終えてゆっくりと意識が遠くなり暗い眠りにつく。




「おーい 聞こえるか」

 いつもと違う物音と声が聞こえ子供は目を覚ます。

 ゆっくりと目を見開くと目の前には見知らぬ男が目線を合わせるようにしゃがんでいた。その後ろには更に三人ほどいる。

 知らない男達だが、その服装には見覚えがある。

 警察の格好だ。

「お、目を覚ましたか。自分の名前は言えるか?」

 声はおぼろげに聞こえていたために、なんでこんなところに警察がいるのだろうか。そう放心して見ていた。

「だめだ、意識が朦朧としているな。一度署のほうで治療を受けさせたほうがよさそうだ。俺が連れていくから後のことは頼む」

「ああ、分かった」

 そう言って目の前にいた男は子供を担ぎ上げ階段を登り騒がしい廊下を通り建物の外に出る。

 外にも沢山の警察の人達がいた。この数は恐らく何かの事件だろう。門の外にはここを囲うように黄色いテープが張られ、その周りにはいくつかのパトカーと見覚えのある隣人の人達や見たことのない人達、あとガラの悪い大男が複数人いるのが見える。近づく子供に周りの大人が何か聞くように声を掛けるが何も聞こえていないようで反応をしない。


 こんなに集まって何しているのいるのだろうか。そう言えば私はやる事あるからそれをやらないと…。だけど今日は久しぶりに、すごく眠い。何処かへと連れていかれているし…怒られないし…もう少しだけ寝てもいいかな。

 子供はパトカーに乗せられると同時に再び眠りについた。




 事件の現場を調べている鑑識の後ろで残った三人の男が話していた。

「はあ、大人しくなってどこかでもう野垂死んだかと思ったらこんなことになるなんてなぁ」

「初めてこの現場に関わったが、これはひでぇな」

「初めてにしては平気そうだな」

「まあ、話で嫌って言うほど聞いてたし、画像や動画を事前に見せられたからな、少しだけ慣れたというか耐性がついたのか」

「そりゃ良かった。新しく担当したやつはだいたい次が来ると拒否るからなぁ。来てくれて助かったよ」

「まぁ俺も正直、今にも吐きそうになってるが」

「おいおい、現場は汚すんじゃねーぞ…。それにしても慣れるか…。本来慣れるべきではないんだがな」

「それにしても隣の部屋にいた子供と地下の子供は無事なのは良かったな」

「まあな、今回はこれだけで満足したんじゃないか?」

「地下にいた子供は何故か血を浴びて犯行に使われたであろう凶器を持っていたが、これは明らかにヤツが罪を擦り付け様とした感じだよな」

「そうに決まってるだろ。子供にこんなこと出来やしねーよ。にしても罪を着せる相手くらい考えろっての。無駄に調査しなくなるってのに」

 二人の目に映っているそれは、部屋中がミンチにされた骨と血肉にまみれ、その中心に顔の面影などない顔面をズタズタにナイフなどで射し潰された頭が首を綺麗に切られ直立していた。


「まるで人を人と思わず、殺すことに何の躊躇もないこんなやり方。噂の殺人鬼ジャックJrしか有り得えんな」

「そうかお前は現場初めてだから世間の呼び方で呼んでいるのか」

「あ、世間の呼び方?違う呼び名があるのか」

「ああ、5年前の2038年から始まった首都ロンドンを中心とした老若男女を問わず、目的不明で一切の証拠を残さない正体不明の連続殺人鬼。お前が知っているように世間やネットでは『切り裂きジャックの再来 ジャックJr』と呼ぶが、前々から現場を知っている俺達はこう呼んでいるよ。

 残虐で侮辱の殺人鬼『CrueltyDismurderer』クディマとな」


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