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誰が人魚を殺したか  作者: 凪子
【序章】
9/213

8

考えているうちに、那智は透子の言葉を聞き逃した。


聞き返すと、


「同じ名字の人がいっぱいいて、ややこしいから私のことは下の名前で呼んで」


「それじゃ、お互いさまだ。君も俺のこと那智なちって呼ばないと」


「……努力します」


「うわあ、何か傷つくな。その言い方」


那智は飄々(ひょうひょう)と笑う。


「じゃ、島から戻るまで、期間限定の彼氏ってことでよろしく。透子とおこさん」


右手を差し出すと、透子は耳たぶをほんのり赤くして握り返した。


「よろしくお願いします」


冷えてきたね、戻ろうかと言い合い、二人はデッキから出る。


もう陸地は見えなくなった。船は強い風を帯びて南へ南へと向かっていく。


黒い水晶のような夜空と、形のない予兆をはらんで。


――本当は分かっていた。


天上河原てんじょうがわらという姓を持つ氏族しぞくは、豊玉島にしか存在しない。


その珍しい名字を聞いたときから、彼女が豊玉島出身であることを那智は察していた。


けれど今まで島の話題を持ち出したことも、知っているそぶりを見せたこともなかった。


天上河原と豊玉島の名を出されることを、透子がひどく恐れていることくらい、最初から分かっていた。























【序章・終】

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