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ゴブリンナイトを倒した

「ぼくを かたなをにぎるみたいに にぎってごらん?」


 『ゴブリンナイト』戦の序盤は苦戦を強いられた。

 なんせ、『ゴブリンナイト』とは名ばかりで、その実態はオークと大差なかったのだから。


 全身は怒りを表現したかの如く紅蓮で、熊のような牙はありとあらゆるものを噛み砕き、虎のような爪は「サーベル持ってる意味あんのか?」とつっこみたくなる切れ味をしていたのだ。中でも他のゴブリンと一線を画すのはその体躯である。


 目測で二メートルは超えていた。俺の背丈が約170なのでその差は歴然である。通常のゴブリンの2~2.5倍はデカく、その姿はまさにオークのようであった! 俺は結構ビビッていたので、『ゴブリンナイト』の攻撃の激しさも相まって防戦を強いられてしまった。格好悪いけど仕方ない。怖いものは怖いんだ。


 そんなとき、我が救世主・メシュアはお言葉を発せられたのだった。


「ぼくを かたなをにぎるみたいに にぎってごらん?」


「刀を握るみたいに?」


「そう! りょうてでね!」


 両手剣のイメージか。よし、やってみよう!


 俺が指示に従うと、メシュアは「うにゅ~」と伸びた。ぱっと見る感じだと鞭のようだった。結構長く、いくらスライム製とはいえ打たれれば間違いなく激痛が走るだろうと予想できた。

 

 そして――、


「ふんっ!」


 メシュアは膨らんだのだった!

 先端だけ膨らんだひも状のメシュア。その姿はまるで鉄球だ。


「ぼくを てっきゅうみたいに なげるんだ!」


 メシュアの作戦はこうだ。

 鉄球状のメシュアを俺がぶん投げる。標的は言うまでもなく『ゴブリンナイト』だ。そしてメシュアは自分が『ゴブリンナイト』にぶつかる瞬間に、硬化するという。


「硬化だって!?」


「そうさ! なんたってぼくは ”すごい” すらいむだからね! とりこんだ ものにも へんしん できるよ!」


 俺の記憶だと「凄い」という言葉にここまでの汎用性はなかったはずだが。

 まあいいや。もうどうとでもなれ。どうせなんとかなるのだろう。


「うぅらああああああっっ!!!」


 俺は全力で『ゴブリンナイト』に投球あらため投スラした。


 ゴイィィィイイイイイイインッッ!!!!!


「ウギョェエエエエエエエエエッッ!!!!!」


 『ゴブリンナイト』にとてつもないダメージ!!


「今だっ!!」


 俺はメシュアに指示を出した。

 『ゴブリンナイト』が手放したサーベルを吸収させるためである。


「まっかせろぉぉぉぉぉいっ!!!」


 バクンッ!!


 メシュアは『ゴブリンナイト』のサーベルを食べたのだった。


「たべてないよ! いや、たべちゃったけど! でも たべても とりこめるよ!」


 弁明するようにメシュアはそう言った。焦った様子も可愛らしい。


「そっか。やっぱお前は”凄い”スライムだな! ありがとう!!」


 俺が言うと、メシュアは嬉しそうに飛び跳ねた。

 帰路の道中、ずっと「ぼっく~はすっごい~す~らい~むだ~♪」と歌っていた。


「それ、なんていう曲?」


「これはね ”すごい” すらいむの うただよ!」


            ☆     ☆     ☆


「おおおおお!? このサーベル、間違いねぇ! それにこの硬度っ!!」


 よろず屋のおっちゃんはサーベルを木材に叩きつけたり石材に叩きつけたりしていた。音は「カンカン!」だったり「ガンガン!」だったり「キンキン!」だったりした。


「こいつぁレアだぜ。『マハの黒鉄』、純度は50%を超えてるんじゃねぇか?」


「平均はどれくらいなんですか?」


「うーん、そうさな。5%含まれてれば良い方って感じだな!」


 ほほう! それは良いことだ。俺としても「より質の良い物を届けられた」という実績は自信に繋がる。個人クエストは手続きを踏まない分「一期一会」的な性質を持つが、信頼を得られればその個人は「顧客」となるのだ。


「アンタにはまたお願いするかもしんねぇ。そん時はよろしくな!」


「俺も今回はいい経験になりました。また何かあればその時はよろしくお願いします! その代わりと言っちゃなんですけど……」


 俺は俺しか客がいないというにもかかわらず、わざと声を落として言った。


「色々と安くしといてくださいよ?」


 よろず屋のおっちゃんは一瞬きょとんとした表情になって、それから「うわあっはっはっはあっ!!」と豪快に笑った。


「アンタも抜け目ないねぇ! 気に入った! アンタは特別客のリストに入れといてやるよ!」


 なんと!

 そんなものがあったとは。

 でも、これで罰当たりなことをする数も少しは減らせるというものだ。


「んじゃ、またの時はよろしくな!」


 俺はおっちゃんと固い握手を交わしてよろず屋を後にした。

 

 店を出てすぐのことだった。

 聞き覚えのある声が響いてきたのは。

 なにやらトラブっている様子だがどうしたのだろう? そう思い俺は喧騒の方へと視線を向けた。そこにいた男の顔を見て俺は驚愕した。その男は「英雄の誉」のリーダーであり俺を追放した張本人だったのだ!


「マッチョス……なぜ、ここに!」

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