閑話1 【ホロスとゼロス】
かなり遅れてしまいましたが、こちらの方もぼちぼち再開していきます。ちなみにこの閑話はかなりこの物語の本質に触れています。ゼロスが何を企んでいるのかは、勘の良い方ならもう既に察したかもしれませんね。
その日、目の眩むほどの閃光が遥か天空へと立ち昇り、耳を貫かんばかりの轟音が大気を激しく揺らした。一度ならず、二度、三度と繰り返される爆撃は、ある一部の空間を除いて、周囲の建造物を容赦なく破壊し尽くしていった。
白のテールコートに身を包む男はその光景を目に、ニヤリとほくそ笑む。
「なるほどなるほどなぁ~るほど。これは一本取られたね。この十数年であの小童もそれなりに成長していたという訳だ。この私が戦事において後手に回るのは幾年振りだろうね?」
先手を取られたというのにも関わらず男はどこか嬉しそうである。
「問題はありません。こちらの優位は揺るがない。情報戦でも既に勝負はついています」
威厳の感じられる低い声が初老の男から発せられた。
「それはどうかな?」
テールコートの男が茶化すような具合で言う。
「ホロス、君にとって最大の敵とはなんだい?」
男に問われ、初老の男・ホロスは答えた。
「それは【叡智の神域】の連中でしょうか? 中でもリーダーの【ヨリシロ】は危険です。時間を止める魔法など、規格外が過ぎるでしょう」
「その意識が敗因だよ、ホロス」
ホロスは眉をひそめた。
「何故?」
「いいかい? どのような能力だってその本質は一長一短なんだ。目を凝らせば必ず優れた点とそうでない点が見つかる。……確かに彼女の時間停止魔法は驚異的だが、やろうと思えば防ぐことだって不可能じゃない」
「では、逆にと問いまする。ゼロス様にとっての敵とはなんなのでしょうか?」
ホロスの問いに、ゼロスは柔らかな笑みを携えながら断言した。
「慢心だよ」
ゼロスは演説を続ける。
「いつの世もそうさ。どんなに優れた能力を有していようと、どんなに素晴らしい仲間に恵まれようと、どれほどの金を持っていようと……慢心した奴から順に脱落していくのさ」
「……なるほど。肝に銘じておきます」
「ああ。そうしてくれ」
ホロスは一礼すると、高貴な印象の漂う一室から一瞬で消えた。
ホロスのいなくなった一室で、ゼロスは一人ほくそ笑む。
「最初から分かっていたさ。ホロス程度ではもう止まらない。止められない。だが、種は既に撒いてある。全国に散りばめた”野生を装った”モンスター達。そして、スキルギフタ―……。ラック・ペンタークの力もようやく定着してきた」
ゼロスは天井を振り仰ぎ、ワイングラスに口を突けた。
「さぁ、始まるぞ。お前たちは思いもしない。考えもしない、気付きもしない。テイマーという職業に秘められた真価の、その恐ろしさをッ!!」
あと少し。あと少しで、この世界に存在するありとあらゆる生命体が私に隷属することとなる!!
「しばしの自由を今の内に堪能しておくがいい……」
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