メシュアが「無限収納」とかいうチート能力を持っていた件(前)
『ゴブリン山脈』にはゴブリン以外のモンスターも出現するが、その多くはゴブリンよりも弱くゴブリンによって狩られてしまう。だがこの『ゴブリン山脈』を川沿いに北上していくと、やがて草木の生い茂る地帯が見えてくるのだ。そこではゴブリン以外のモンスターも生息している。
「あそこか」
川沿いを北上すること約三十分。俺はついに、その雑木林の入口と思われる部分を見つけた。少し狭まった空間だが、人が踏み入った痕跡をしっかりと見て取れる。一直線に続く細道は石段へと続いていて、その石段を上がっていくと、頂上部分で途端に空間が開ける。
ここは『ゴブリン林』と呼ばれる場所だ。色々な種類のゴブリンとスライムが共存しているらしい。ここに出現するモンスターはあるモンスターの元統率されていて、そのモンスターこそが『ゴブリンナイト』なのだ!
『ゴブリンナイト』の生息する場所は正確には『ゴブリン林』ではない。この林の奥地には古びた廃図書館があるのだが、その廃図書館を拠点として生活しているのだとか。『ゴブリンナイト』は群れでの行動を嫌い、それぞれに縄張りを持つ。
「『ゴブリン林』のゴブリンナイトは良い武器持ってるからな。この通りだ、頼まれてくれよ!」
衣服類を無償で提供してもらったことだし、俺はおっちゃんの依頼を快く承諾した。普通のゴブリンやユニークゴブリンと違い、『ゴブリンナイト』はサーベルを持っている。生息環境故か、そのサーベルに含まれる鉄分は中々に純度が高いらしい。
「そのサーベルから抽出される『マハの黒鉄』は中々手に入るもんじゃなくてな――だから、そいつを手に入れることができれば竜の鱗すら裂く――そんなわけで、俺が過去に造った武器で『アダマイトス』の甲羅を粉砕した英雄が――だからこそ、俺はこの道を突き進むことに決めたんだ!!」
だいぶ話が脱線したが、どうやらこの職業に並みならぬ情熱を持っているらしかった。こういう、自分の信条を曲げずに真っすぐに突き進むぜ! みたいなタイプは正直嫌いじゃない。たまに暑苦しいのがキズだけれど、『英雄の誉』にいたガッデンロスを思い出す。彼だけは良い人だった。
よし、ここら辺でいいだろう。
「サモン!」
俺はメシュアをサモンした。
早朝いきなりクローズされたメシュアは二回目、街でサモンした時には少しふてくされていた。
「私服を買ったんだ。とりあえず取り込んでおいてくれないか?」
俺が頼むと、メシュアは「しかたないなあ」と言いながらも応じてくれた。
「やっと さもんしてくれた! きょうは、どんなのが あいてなんだい?」
今ではだいぶ機嫌が良くなったみたいだ。
モンスターの機嫌や、やる気の管理もテイマーの大事な仕事である。
「今日は『ゴブリンナイト』さ。メシュアには是非ともやってもらいたいことがあってね」
それはサーベルの吸収である。前回、メシュアはユニークゴブリンの刀を吸収→放出するという方法によってユニークゴブリンを見事に倒して見せた。今回はサーベルだけを持ち帰りたいので、吸収だけしてもらうという算段である。
「りょうかい! まかせとけい!」
メシュアはやる気充分といった様子で飛び跳ねた。やはり頼もしいな!
俺も気合を入れていかないとな!
「いくぞ、メシュア!!」
「おうおーう! いっくぜい!!」
ある程度先に進むと、やはりと言うべきか、モンスターが現れた。
ゴブリンとスライムの群れである。とはいえ、スライム程度なら2~3匹の群れでも俺一人で十分だ。
「メシュア! ゴブリンの方は……」
言うまでも無くメシュアはゴブリン目掛けて突撃していた。
「へへっ! ぼくの えものだ!」
どうやらメシュアには弱いモンスターを無視する性質があるようだった。こういったモンスターの性質を分析しいかに戦闘に役立てるか、というのもテイマーの腕の見せ所である。
「くらえっ!」
俺は飛びついてきたスライムを一刀両断した。柔らかいのでほとんど抵抗もなく、いとも容易く倒すことができた。
ズバッ!
ザシュッ!
シュギィンッ!!
あっという間にスライムを全滅させてしまった。まあ、誇れることでも何でもないのだが。
「うわ! たいへんだ!」
メシュアが大声を上げたので、俺は思わず目の前を両手で覆った。メシュアがゴブリンを取り逃がし、それに攻撃されるかと思ったのだ。だが、実際にはそんなことはなかった。
「なにしてんの?」
「……あれ?」
どうやらゴブリンは既に撃破済みのようだ。
「しっかりしてよ! ていうか、たいへんなんだ!」
メシュアに怒られてしまった。
して、大変とはどういうことだろうか?
「あれをみて」
俺はメシュアが示した方向に視線を向けた。はじめはピンとこなかったのだが、少ししてメシュアの言いたいことが理解できた。確かにこれは大変である。
「いっぽんみちが ふうさされてるよ!」
そうなのだ。
あたりを見渡しても道はこの一本しか見当たらない。その一本の道を、巨大な岩が塞いでしまっているのだ! これは困った。どうしたものか。
「どうする?」
メシュアがそわそわした様子で聞いてきた。
そして、さらっととんでもないことを口走った。
「ふくがよごれちゃうけど それでもいいなら とりこめるんだけどなぁ……」
「そうだな。服が汚れるのは非常に……え? なんだって?」
俺が詳しく聞くと、このメシュアとかいうスライム、どうやらとんでもない性能を有していることが分かった。
「えーと、もう少し詳しく丁寧に教えてくれないか?」
「だーかーらー! ぼくはね! 『むげんしゅうのう』をもってるんだよう!」
無限収納!?
「ぼくは なんでも いくらでも しゅうのうできる ”すごい” すらいむなんだぜっ!」
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