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幼火竜にヒドラと名付けたら気に入ってくれた

 武器を手にした俺たちはレイドクエスト『北界の守護神アダマイトス』討伐を受注した。

 一度噴水広場に召集が掛けられ、集まった人数は1000人を超えた。その1000人は十分割に編隊され、1チーム100人となる。


 俺の隊のリーダーはグラッカスという強面の男である。破壊力の高いアックスの扱いを得意とする剛腕の男で、スキンヘッドにギザギザの剃り込みを入れていた。多くの人々から「アックスバトラー」と呼び親まれている。


「まさか『アダマイトス』が東方地帯に出現するとは思わなかったが、出ちまったもんは出ちまったもんとして諦めるしかねぇ。凶兆だかなんだか知らねぇが、ブッ倒しちまえばそんなもん関係ねぇだろ」


 グラッカスの言葉に「その通りだ!」という肯定の言葉がいくつも飛び交った。グラッカスの声は渋く重厚で貫禄があった。後に聞いたことだが、見かけとは違い、歳は既に七十にもなるのだとか。それでいて最前線で肉体を張っているというのだから驚きだ。


「東方地帯への遠征は一週間を予定している。出発は早朝五時! 残された時間で万全に準備を整えてこい!!」


 グラッカスの号令を受け、集まった人員は各々に退散していった。残された時間はおよそ二時間弱。その間に身支度を徹底したり、激しい戦闘に向けて体を休めたり、イメージトレーニングに励んだり、好きにしろということである。


 俺はというと、それはもう、やることは決まっている。

 テイマーの力の源はモンスターであり、モンスターの力の源はテイマーだ。お互いの絆を深めることこそが今の俺たちには必要不可欠なのだ。


 借り部屋に戻り、俺はベッドに腰かけた。ダブルサモンはエネルギーの消耗が激しいので、一匹ずつ召喚し、面と向き合う形で話をした。


 メシュアは「そんなに つよいやつと たたかえるだなんて ゆめみたいだ!」と、予想通りの反応を寄越してくれた。


 アガドは「マカセロ! アガド ガンバルゼッ!!」と、上下左右に激しく動き回っている。普段のアガドであればもう少し柔らかな口調なのだが、メシュアのものが移ったのかもしれない。そう思うとなんだか可愛らしい。


 『幼火竜(ベビー・ドラゴン)』についてはサモンするかどうか少しだけ悩んだ。まだ共に過ごした時間が短い。メシュアは友好的な性格だったからすぐに打ち解けられたが、『幼火竜(ベビー・ドラゴン)』はメシュアとは逆の性格のように感じられる。


 少し考えた末、俺は『幼火竜(ベビー・ドラゴン)』をサモンすることにした。やはりモンスターとの絆を深めるためには顔を見合わせたうえでの会話が不可欠だと思ったからだ。


「サモン!」


 俺が詠唱すると赤いビー玉が現れた。その赤いビー玉はぐにゃぐにゃとうねり、『幼火竜(ベビー・ドラゴン)』へと変貌を遂げた。


「やあ。考えはまとまったかい?」


 俺が聞くと『幼火竜(ベビー・ドラゴン)』はゆっくりと頷いた。


「我は既にテイムされた身。あなたに忠誠を誓いましょう」


「そう言ってくれると思ってたよ、ありがとう! これからよろしくな、ヒドラ!」


 俺が名前を呼ぶと、ヒドラは首を傾げた。


「……ヒドラ、ですか?」


「そうさ。それが君の名前。実はずっと考えてたんだ。どんな名前にしようかなって」


「なるほど。ヒドラですか。ヒドラ……ヒドラ……」


 何度か確かめるように自分の名前を口にしたのち、ヒドラは初めて笑顔をみせてくれた。尻尾を左右に揺さぶりながら「ありがとうございます」と感謝を口にしてくれた。


「ヒドラという名前、気に入りました。与えられた名に恥じぬよう尽くしてまいります。えーと……」


「ゾイド・ペンターク。それが俺の名前さ。呼び名はゾイドでもペンタークでもタークでもなんでもいいよ」


「分かりました。では改めて。こちらこそよろしくお願いしますね、ゾイド!」


「ああ、よろしく!」


 こうして俺はヒドラとの親睦を深めたのであった。

 

 そして、時間はあっという間に流れ、早朝の五時。

 いよいよ遠征開始だ。

 目指すは東方地帯に広がる『オーロラ平野』である!

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