ゴブリンを倒した
二日後、俺はふかふかのベッドで目を覚ました。
目を覚ました当初は翌日だと思っていたが、メシュアが時の経過を教えてくれた。
「そんなに寝込んでいただなんて」
「そうさ。だからぼくは きのういちにち ずっとひまだったよ!」
「ごめんごめん。でも安心していいよ。今日からは忙しくなるからね」
「なにを するんだい!?」
「メシュアが持ってきたクリスタをお墓に返そうと思う」
俺が言うとメシュアは「ええっ!?」と驚きの声を上げた。
「最初は頼らせてもらうけど、やっぱり人のお金に手を出すのはあまり良くないからね。だから、まずはクエストで生計を立てられるようにしたいんだ」
「なるほど じつりょくがついてきたら かえしにいくんだね?」
「そういうこと。最初は低難度のクエストを受注して、少しずつ地力を上げていこうと思う」
「りょうかい! ぼくはこうみえて つよいからね! きっとやくにたつよ!」
頼もしい限りだ。
俺も早く強くなってダブルサモンを取得しよう。
アガドとメシュアはきっと良い友達になれると思うから。
☆ ☆ ☆
というわけで、俺は今『ゴブリン』討伐クエストを受けている。
ゴブリンの出現場所までの道のりは穏やかで、まるで散歩をしている気分だった。休憩をはさみながらも歩を進めること約二時間。やがて、岩肌のむきだしになった地帯が目に見えてきた。ここがゴブリンの出現場所。名称はそのまま『ゴブリン山脈』である!
ゴブリンは低級のモンスターだが、種族は凶暴なオーガに分類される。
通常のゴブリンは棍棒を持っているが、ユニークゴブリンは刀を持っているので注意が必要だ。
「グギギギィ!!」
さっそく現れた。武器は棍棒なので通常モンスターである。
今回は『ゴブリンの毛皮』を10個手に入れればクリアだ。
ドロップは討伐時に確率で発生するが、テイムするとドロップは発生しない。つまり、確実に撃破しなければならないということだ。ソロでは初のクエスト。自然と体に力が入る。
「へへっ! じつによわそうだね!」
メシュアはゴブリンを挑発するが、言葉が通じないので意味はない。
「来るぞ! 油断は大敵だ!」
俺の装備は鉄の剣と鉄の盾。ゴブリンを相手取るには充分すぎる程だが、それでも油断はできない。そんな俺に向かってメシュアが言った。
「ぼくは すごいすらいむ なんだぜ!」
メシュアは薄く広がり、地面にのっぺりと張り付いた。
その上にゴブリンが足を乗せた瞬間!
「グギャッ!!」
なんと、ゴブリンはすっ転び身動きが取れなくなってしまったのだった。
粘着質なせいで起き上がれないらしい。
「まるでネズミ捕りシートだな」
「へへん いまなら かんたんに たおせるよ!」
俺はありがたくゴブリンに攻撃させてもらった。
ザシュッ!!
ズバ!
「グギャ―!」
ゴブリンは二撃で倒すことができた。
次のゴブリンは、メシュアが目元にぐるぐると巻き付き身動きを封じてくれた。
平衡感覚を失ったゴブリンを仕留めるのは息をするみたいに簡単だった。
ザンッ!!
「ギゲァー!!」
次のゴブリンはユニークだ! 色も通常色の緑から赤へと変貌を遂げている。どことなくがたいも良いし、下顎部からは二本の牙が飛び出していた。まさに鬼の形相である。怖い……。
「ギャギャギャギョエーーーーッッ!!!」
「避けろメシュア!!」
メシュアは俺の指示に従いゴブリンの攻撃を避けた。
その後緩やかな動きで刀を吸収してしまったかと思うと俺の手元にやってきて、
「ぼくを あいつのうえに なげるんだ!」
なんて言い出した。
「おりゃああっ!!」
俺は言われた通りメシュアをゴブリンの頭上目掛けて投げた。
「みせてやる! これがすごいすらいむの つよさだ!!」
メシュアはさっきの刀を吐き(?)出した。
その刀はまっすぐにユニークゴブリンを目掛けて落下していき、そして――
グサリッ!
「ギャギャーーーーー!!」
なんということでしょう。
あのユニークゴブリンをいとも容易く倒せてしまったではありませんか。
「す、すごい! すごいぞ、メシュア!」
「そうでしょ、そうでしょ? ぼくは、すごいんだっ!」
メシュアのおかげでクエストは楽にクリアできた。
「では、換金しますね」
受付嬢は手早く算盤を弾く。
クエストはクリア時間が早いと報酬が増えることもある。
今回は六時間ほどの仕事だったし、最低でも1000クリスタは貰いたいところだが、どうだろう?
「出ました! 『ゴブリンの毛皮』が25個! 依頼内容よりも多いですが、全部換金しますか?」
さて、どうしようか。
ゴブリンの毛皮。今後使い道があるとは思えないが。
「ねんのため いちまいくらい とっておいたら?」
俺はメシュアのアドバイスに従うことにした。
これから先どんなクエストがあるかもわからない。例えば『ゴブリンの毛皮を特定の場所に置いてこい』なんてのも出てくるかもしれない。……多分ないと思うけど。
「じゃあ24個だけクリスタに換金してもらえますか?」
「了解です。『ゴブリンの毛皮』は単価50クリスタなので、合計で1200クリスタですね。本日はお疲れさまでした!」
「ありがとうございます!」
時間ボーナスは出なかったけど、希望よりも200クリスタも多かった。これは嬉しい!
それに、受付のお姉さん、結構かわいかったし。
なんだか、俄然やる気が沸いてきたぞ!!
☆ ☆ ☆
「じゃあ、お疲れ様! 明日は8時に起きて、10時からクエストを受注しようと思う。俺が寝坊しそうだったらどんな手を使ってでも良いから起こしてね」
「りょうかい! あんなてや こんなてを つかうよ!」
お手柔らかに頼むよ……。
そう思いながら俺は眠りに就いたのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございました!!
明日までには全話再投稿できると思います!!