幼火竜討伐クエスト(3)
「メシュア、どうだ!? どれくらい動ける!!」
ゾイドは姿勢を低く保ちながら防御態勢をとりメシュアに問いかけた。いくら『ギガスグランド』の討伐を成功させ大幅な成長を遂げたゾイドと言えど、やはり『幼火竜』の火球や火炎放射を受けたとなってはタダでは済まない。足手まといになるのだけはごめんだ。
「うん! すっごい いいかんじ だね! いままでに ないよ!!」
どうやらアガドの「絶対王者」はメシュアのポテンシャルを大幅に引き上げてくれているらしい。それを証明せんとばかりに、メシュアは『幼火竜』の群れに目掛けて攻撃を放った。
メシュアはもの凄い大ジャンプを繰り出し、『幼火竜』の上を取った。
「くらえ!」
メシュアは丸い粒状の物体を一発、また一発と『幼火竜』へと撃ち込んでいった。かつて、志半ばで死んでしまった人間が持っていたピストルという武器だ。もちろん弾丸にはミニメシュアが纏われている。
「ここだっ!」
弾丸ごと『幼火竜』の体内へと入り込んだメシュアは、そこで様々なものを解放する。例えばそれは刀であり、例えばそれは斧でもあり、例えばそれは槍でもあった。突如体内に出現した武器は、いとも容易く『幼火竜』の体を内側から突き破り、破壊していった。
「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」」」
メシュアの攻撃を受けた『幼火竜』たちはけたたましい断末魔を辺り一帯に轟かせた。力尽きた『幼火竜』が次から次へと、まるで雨のように降り注ぐ。
「凄いぞメシュアっ!!」
「凄いなのっ!!」
褒められたメシュアは存在しないはずの鼻の下を伸ばすかのような表情で「へへっ まあね!」と嬉しそうに笑った。デレデレである。かわいい。
「スゴイゾ! メシュア!」
アガドもメシュアの活躍を嬉しく思っているようだ。俺の隣でくるくると高速回転している。アガドは旋回や回転で感情を表現することがある。右回転は喜びの感情だ。回転速度が早ければ早い程より一層嬉しいということである。犬が尻尾を振って喜ぶのと似たような理屈かもしれない。
「アガドも凄いぞ。お前の「絶対王者」がなかったら、いかにメシュアといえど、『幼火竜』の体内温度には苦しめられたと思うよ」
「ソウカソウカ! ソレジャ、アガドモ スゴイ!!」
そう言って、アガドはさらに早く回転した。
「メシュア、他の奴らも頼む!!」
「がってんしょうちぃ!」
俺の指示を受け、メシュアはさらに『幼火竜』の群れへと単身で突撃していく。メシュアに同胞を倒されてしまった『幼火竜』たちは怒り狂っていた。鳴き声もどことなく鋭利な感じに変化している。
『幼火竜』は感情によって尻尾の炎が大きくなったり小さくなったり、はたまた青くなったり白くなったり黒くなったりする。今、この場にいる全ての『幼火竜』の尻尾の炎は激しく燃え上がっている。
揺れる炎の様はまさに怒髪衝天。逆立った髪の毛を彷彿とされるものだった。色は青の入り混じった漆黒。完全にブチ切れモードというわけだ。
「ギェエエエエエエエエエエエエエエエッッ!!!!」
「へへん! おこったって こわくないよーだっ」
メシュアは目に見えた挑発を繰り出した。右目は上を向き左目は下を向いている。口はへらへらと笑っており、バカにしたかのように舌を出し揺らしているのだ。俗にいうアホ面という奴だ。
数々の戦闘経験の末、メシュアは多種族のモンスターに言葉で煽っても効果がないと悟ったらしい。そこで思いついたのが顔芸なのだろう。俺からすれば微笑ましい光景だが、仲間を殺された『幼火竜』にとってはまさに油だろう。
「ググギャギャガガァァアアアアアアアアアアアアッッ!!!」
言っていることは分からないのだが、多分「クソがぁぁあ!!」みたいな感じだと思う。ニュアンスというか雰囲気からそう察せられた。それと、俺があの『幼火竜』の立場だったら間違いなくそう絶叫せずにはいられない。
「べろべろば~ おまえらなんて まとめて だびに ふしてやるぜっ! いつだって ほのおが とむらうがわだとおもったら おおまちがいだ!!」
なんだその煽り文句は。
メシュアは時々「どこでそんな言葉を覚えたんだ?」と聞きたくなるような言葉を使う。
もしも自分なりに一生懸命頭をひねって考え出しているのだとしたら、それはそれで面白いな。
メシュアの変顔を見たヴェロニカは腹を抱え涙を浮かべながら笑い転げていた。流石に『熱砂の王山』というだけあって地面は相当な温度になっているらしい。笑い転げながら、ヴェロニカは「あっぢぃなの”~~~!!」などとのたうち回っていた。大丈夫か?
メシュアとの戦闘により『幼火竜』の群れは着実に数を減らしていった。もちろん他にも潜伏していたり眠ったりしているものもいるのだろうが、ひとまずは制圧完了と言えるかもしれない。
残された一匹はメシュアの手加減により飛行能力を失う程度のダメージを受けている。ダメージは決して小さいとは言えず、身動きを取るのもままならない様子だ。それでも尻尾の炎と闘志は衰える様子を見せていない。流石は竜族といったところだ。
「悪いな。遠慮なくテイムさせてもらうぞ」
ゾイドの詠唱により、最後の『幼火竜』は赤色のビー玉へと変貌した。テイム成功だ。
「よし! これにてクエスト攻略だな!!」
「やったなの! クエスト攻略なの!!」
ゾイド一行が喜びをあらわにした時、そいつは姿を現した。『熱砂の王山』の火口部分からのろのろと巨大な腕を突き出している。
「グオオ……」
「あれは、まさか……」
火口から半身を乗り出したそのモンスターをゾイドは目撃したことがある。色合いこそ違えども、忘れられるはずがない。そもそもといえば奴に挑んだことが原因で『英雄の誉』を追放されたのだから。
「『溶岩王』!!」
現れたのは『溶岩王』のユニーク種。
青いマグマを纏った石人族のSランクモンスターである!!
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