幼火竜討伐クエスト(1)
翌日、俺はA難度のクエストを受注してみようかと考えていた。
理由はアガドの「絶対王者」、その効能がどれ程のものなのかを確認したいからだ。恥ずかしい話だが、俺はアガドの「絶対王者」がどれ程の効果を及ぼすのか、理解していない。
効果事態は知っているが、それによって具体的にどれくらいバフがかかりどれくらいデバフがかかるのか。それを知っておくことはテイマーとして非常に大事な義務である。モンスターのことを理解していないテイマーなど、テイマーとは呼べないだろう。いやはや、本当にお恥ずかしい限りである。
「私も行きたいなの!」
ヴェロニカはすっかりメシュアを気に入ってしまったらしい。ついでにアガドのことも可愛いがっている様子だ。テイマーとしてこれ程嬉しいことはない。
「別に構わないが、あまり戦線に出るんじゃないぞ? お前に出しゃばられると「絶対王者」によってメシュアがどれくらい強化されるのか、分からなくなる」
「了解したなのっ!!」
☆ ☆ ☆
今回の討伐対象はB+ランクモンスターの『幼火竜』である。『幼火竜』は竜族のモンスターだ。ベビーと言う名に相応しく小さく可愛らしい姿をしているのだが、その強さは『オークキング』を遥かに上回る。
パワー、スピード、スタミナ、さらには機動力から飛行能力まで。その全ての能力が竜族に相応しいものとなっているのだ。最近は『轟焔竜』の目覚めが近づいているらしく、それに伴い活動が活発になっているのだという。
母なる存在に備え自身の強さに磨きをかけ、次の『轟焔竜』の座を目指しているのだとか。竜族のモンスターは活動可能範囲も広く、人間に危害を加えることも少なくはない。竜族は繁殖能力も高いので、優先的な討伐が求められている。
「『幼火竜』は群れを形成するなの! とっても凶暴でかわいいモンスターなの! 油断してたら痛い目に遭うなのっ!!」
B+ランクのモンスターが群れを成して行動している。
危険度が高いので、クエストの攻略難度はAランクにまで跳ね上がっている。
「クエストを発注しました。お怪我のないよう、お気をつけてくださいね!」
受付のお姉さんに笑顔で見送られ、俺たちは『幼火竜』の生息する『熱砂の王山』へと向かった。
『熱砂の王山』は危険な場所である。
いつ噴火するとも知れぬ活火山と、その熱によって焼かれた砂漠地帯により、信じられない程の速度で体内の水分が失われてゆくのだ。生息するモンスターも最低でBランクと強力だ。しかも、この『熱砂の王山』では最近になって新種のモンスターが誕生したのだという。
そのモンスターの名は『溶岩王』……の、ユニークである。
『轟炎竜』程の強さはないにせよ十分に危険なモンスターだ。出現した時期は『溶岩王』が『マグマ山道』に出現した時期と全く同じらしく、モンスターの生態に詳しい研究家たちの間では様々な憶測が飛び交っているらしい。
「あづ~いなのぉ~」
ヴェロニカは猫背になりながらのろのろと歩いている。滴る汗を拭いながら「来なきゃ良かったなの~」などと宣っている。
『熱砂の王山』へと近づけば近づくほど環境はより苛烈を極めてゆく。メシュアは体内に保存してある水分を雨のように降り注がせているが、まるで焼け石に水である。
「まさか耐熱装備を纏っていてもこれ程までとはね。『マグマ山道』とは比べ物にならないや。ヴェロニカ、氷の魔法は使えないのか?」
「ふざけるななの! それができるならとっくの昔にやってるなの!!」
確かにその通りだ。無駄な質問だったな。
「ま、暑いのは仕方ないさ。ここは火竜の住処だからね。メシュア、水分は無駄使いしないでくれよ? メシュアの”恵みの雨”が命綱だからね」
「わかったよ! けっしてむだづかいは しないよ!」




