一夜の過ち……?
明けて翌日。
目を覚ましたゾイドは驚愕に満ちた声で絶叫した。
「ど、どどどど、どーいうことだこれはっ!!!」
ゾイドはその光景を目にした時、まっさきに夢であってくれと願った。当然である。なにせ、目を覚ました自分のすぐ横でヴェロニカが寝息を立てていたのだから。
落ち着け、落ち着くんだ俺!
大丈夫だ。まずは顔を洗おう。それから軽く運動して陽の光をめいっぱいに浴びるんだ。そうして戻ってくる頃には、この質の悪い幻覚ともおさらばさ。
しかし、そうは問屋が卸さなかった。
「これでヨシ! ただいまー……っと」
部屋の扉を開けたゾイドの視線に、涙目になったヴェロニカの姿が!
なんというタイミングの悪さであろうか。ヴェロニカは、ゾイドが外に出ている間に目を覚まし、今まさに着替えを行おうとしていたのである。
「こ……これ、は、……!?!?」
「……なの」
「へ?」
「でていけなのおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
「うわわわ、まっ、待て! お前まさか、こんなんところで残照の拳をぶっ放すつもりじゃないだろうな!?」
「残照の拳!!」
ばっきゃろー!!
宿屋どころか、ここら一帯が焼け野原になるだろうが!!
しかしその心配はなかった。
「いただきまーす」
メシュアは朝食代わりとでも言わんばかりに、残照の拳を消滅させてしまったのである。むろん、宿屋は激しく揺れたのだが、被害が無かったのだから良しとしよう。
「ごちそうさま!」
さすが救世主様だぜ!
助かった~。
ゾイドはほっと胸を撫でおろし、超特急で自室を飛び出した。そして「早く着替えてくれ!」と懇願した。
ああ神よ。俺は一体何をしたというのだ?
そもそもどうしてヴェロニカがここに? まさか俺は過ちを犯したってのか? はは、そんな馬鹿なはずないか。俺はあんな幼女に手を出すほど変態ではない。いくら酒に酔っていようが、それくらいの分別はできるはずだ。
「もう入っていいなの!」
そもそも俺が借りている部屋なんだが? そんな気持ちを抑えながら、ゾイドは扉を開けた。一応最低限の礼儀として、落ち度はなくとも謝罪をしておく必要はありそうだ。
「悪かったな。ノックくらいするべきだったよ」
「そうなの! 女の子がいる部屋にノックもしないで入るだなんて、常識が無さすぎなの!」
そこまで言われる筋合いはないが、ゾイドはとりあえず平謝りした。
「次からは気を付けるよ」
なんて普通に話してはいるが、肝心な問題が解決していない。ゾイドは昨夜のことを思い出そうとしたが、やはり思い出せなかった。酒場にいたところ「ゾイドさんですよね!」と声をかけられ、あれやこれやと賞賛されたのは覚えている。
最初は謙遜していたのだがだんだんと有頂天になってしまい、ついつい酒を飲みすぎてしまったことも覚えている。そこにいたヴェロニカとも盛り上がった。どんなに酔っていてもヴェロニカがメシュアのことを話そうとするのを阻止するくらいには理性も残っていたはずだ。
確か最終的には15万くらい使ったんだったっけな?
そのほとんどはヴェロニカの酒代だが。っていうか、なんであの場の誰一人としてヴェロニカが酒を飲んでいることを注意しないんだよ! って、いかんいかん。思考がぶれてきた。
「なあヴェロニカ。一つだけ聞いていいか?」
「なに、なの」
「なんでお前、ここにいるんだ?」
「それはタークが連れ込んだからなの!! それ以外にあり得ないなの! この変態なの!!」
なんだと!
こいつ、人が下手に出てたら言いたい放題じゃないか!
ゾイドはなにか言い返してやろうと思ったが、「やめなよ」とメシュアが割って入った。
「ふたりとも おちつきなよ まったくもう! しかたが ないから ぼくがぜんぶせつめいしてあげるよ!」
そうしてメシュアは昨夜のことを説明してくれた。それによると、ゾイドは単純に酔い潰れてしまったヴェロニカを介抱しただけだったようだ。当然ではあるが、二人が体の関係を持ったなんてこともなかった。というか、年齢的に色々と無理があるだろう。
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