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ヴェロニカ・キャノンを手に入れた

 くっそ! 何が起きたんだ!?

 そう思った俺にメシュアが叫びかけた。


「おうい だいじょうぶかい?」


「いててて……。だいじょう、ばないかも」


 俺は吹き飛ばされた衝撃で結構なダメージを受けていた。だが、軽傷程度で済んでいるということは、つまりはそういうことなのだろう。


「すごい いちげき だったね! ま、ぼくのまえじゃ あいてじゃないけどさっ!」


 流石はメシュアだ。あの凄まじい一撃でさえも飲み込んでしまったらしい。だが、ヴェロニカも大したものである。この攻撃力は普通じゃない。この辺にいた『ゴブリン』たちはだいぶ消し飛んでしまったんじゃないか? そう思う程の破壊力であった。


 そんなヴェロニカは……。


「そんな、ばかな……なの。私の、残照の拳(ヴェロニカ・キャノン)がかき消されるだなんて、信じられないなのっ!!」


 どうやら自分の強さによっぽどの自信があったようだ。あれだけの攻撃を放てるのだから当然といえば当然かもしれない。もしも俺があんな攻撃力を持っていたら、心のどこかでは慢心してしまうだろう。


「凄いなの!!」


 ヴェロニカは猛ダッシュで距離を詰め、メシュアに抱きついた。その光景は俺が初めてメシュアに出会った時のことを思い出させた。命を救われた俺も、同じようにして頬擦りしていたものだ。


「感動したなの!! このスライム、名前はなんていうなの!?」


「メシュアっていうんだ。ちょっと特殊な事情があって、結構強いんだよ」


「メシュア……いい名前なの! 気に入ったなの! 私のペットにするなの!!」


「いやだね!」


 メシュアはきっぱりと断った。


「ぼくは タークと ぼうけんするんだい! なんたって ぼくは タークに ”ていむ” されたんだからね!!」


「そんな、なの」


 ヴェロニカは落ち込んだ様子だったが、これに関しては仕方がないというものだ。俺としてもメシュアを他の誰かに渡すだなんてことは御免だからな。例え億単位のクリスタを積まれたって手放すものか。


「ま、そういうことだ。……で、勝負はどうするんだ? 今のがヴェロニカの必殺技だったみたいだけど」


「……悔しいけど、私の負けなの。あれを防がれたら、さすがにお手上げなの」


 ふう。

 とりあえず、面倒事は解決したらしい。これで美味い酒が楽しめるというものだ。だが、俺には『ぺレスロウレ』の街に戻る前に、ヴェロニカに約束してもらわねばならないことがある。


「ヴェロニカ、一つだけ約束して欲しいんだが?」


「約束なの?」


「ああ。この戦いのことは内緒にしておいて欲しいんだ」


「内緒になの?」


「そうだ。理由は話せば長くなるから省くけどね。でも分かるだろ? メシュアはどこからどうみても、なにをどう考えても普通のスライムじゃない。明らかに常軌を逸した存在なんだ。そんな危険な存在を国がみすみす見逃すと思うか?」


「……なんだか難しい話だけど、分かったなの。このことは私たちだけの秘密なの」


 ヴェロニカはしゅんとしたかと思うと、「ん? んんんんん?」と首を傾げ満面の笑顔を浮かべた。


「秘密! 秘密なの! 私たちだけの秘密なの!! 良い響きなの! 秘密を共有する私たちは蜜月な関係なの!!」


 蜜月の意味が違うだろ!

 てかどこで覚えたんだそんな言葉!

 まあいいか。なんだか分からないが、メシュアの強さは黙っててくれるみたいだ。




 帰り際、俺はひそひそ声でメシュアに語り掛けた。


「これでまた武器が増えたな」


 メシュアが取り込んだあの一撃は、間違いなく最強の武器になる。


「つかいどころを かんがえないとね!」


 俺はメシュアに同意し、ヴェロニカと共に『ぺレスロウレ』の街へと戻ったのだった。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

面白いと感じて頂けた方には☆☆☆☆☆とブクマで応援して頂きたいです!

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