カウント3
今回の一件で生き残ったのは30人。その内戻ってこれた人間が15人。おそらくこの15人は全員グルなのだろう。そして残された15人はこの舞台を作りだすためのサクラだと考えられる。でなければ、生き残りがいた場合、本当のことがバレてしまうからだ。
汚名返上に『ギガスグランド』討伐達成というのは少し弱いと考えたのかもしれない。『ギガスグランド』を討伐した上に人の命を助けた、という実績が欲しいのだろう。
「それにしても どこまで くずなんだ!」
全く以って同感だ。
マッチョスは金だけは持っていた。そもそも実家が金持ちで、生まれた時からなんの苦労もしたことがないのだとか。それはそれで羨ましい限りだが、その結果として我儘な人間になってしまった。
「この世の全ては俺の思い通りにならなければならない!!」
とでも思っているのだろう。呆れるばかりだ。そんなくだらないことの為に殺された70人のことを考えると余計に怒りが湧いてきた。
『ギガスグランド』の下へ辿り着く為には『闇の神官』というモンスターを討伐する必要があるが、その討伐はもう済んでいるのだろう。
「やみのしんかんは げんかくを つかう からね! つみをかぶせるには うってつけさ!」
「一体いくら積まれたんだか」
おそらく1000万や2000万の話ではないだろう。これは億単位の金が絡んだ話だ。でなければシャルロード程の人物が、例え演技ではあろうとも「クエスト失敗」だなどという汚名を被ることはないはずである。たとえそれが難易度の高いレイドクエストだったとしてもだ。
偽りの苦難。
偽りの壁。
それを打ち破り仲間の仇を討った最高のヒーロー!!
そんな称号がもらえる上に億単位の金も貰える。相乗効果でマッチョスも注目され個人クエストも殺到するだろう。この好循環でさらに名誉と金が手に入る……か。
「そんなこと、させないさ」
「そうだそうだ!」
☆ ☆ ☆
『ギガスグランド』が生息するのは『マハの洞窟』と呼ばれる場所である。岩壁や土にも純度の高い『マハの黒鉄』含まれているらしいが、ここが『マハの黒鉄』の最終スポットに選ぶ人間は少ない。
足場は悪く道のりも険しい。天候や気温も不安定で、出現モンスターも邪悪かつ凶暴で強いのだ。月に1体は死体が見つかるというのだから、その危険度は火を見るより明らかだ。
「作戦決行は三日後!! 俺たちは必ず残されたメンバーを助け出し、『ギガスグランド』を討伐する!!」
マッチョスはそう結び、シャルロードと二人、噴水広場を後にしたのであった。
宿屋に戻った俺は早速作戦を練ることにした。
どうしたらあの二人の作戦を完璧に潰せるか? それを考え出す必要がある。頼れる人間は酒場のマスターやよろず屋のおっちゃんなどである。道具屋のおばさんは……話がややこしくなりそうだ。
「で、どうすんの? じかんは みっかしか ないみたいだぜ?」
「そうだな。一番効果的なのはこのクエスト失敗が「演技だった」という確実な証拠を白日の下に晒すこと、なんだけど。物証なんて残ってないだろうなぁ」
ここまで綿密に立てられた計画だ。マッチョスの個人的な計画ならまだしも、シャルロードまで関わっているとなると、墓穴を掘っている可能性は低い。道具屋のおばさんに盗み聞きされたのは単純に運とタイミングのどちらかが悪かったのだろう。
「けっこう なかま いるみたいだから そいつらを つかまえちゃえば?」
その方法を考えなかったわけではないが、多分徒労に終わるだろう。
なんたってそいつらはマッチョスとシャルロードの計画に加担しているんだ。裏切り行為はそのままイコールで死に直結する。そんな危険を犯すような馬鹿はいないだろう。
「きっと何かいい方法があるはずさ。とりあえず、よろず屋のおっちゃんに会いに行こう」
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