メシュアで情報を集めよう(後)
まさかあんなことになるだなんて
ああ、俺も驚いたよ。生き残ったのはたったの30人なんだろ? 酷い有り様だ
なんたってこんなことになっちまったんだかな
……は?
生き残ったのがたったの30人だって!?
そんなバカな!!
なにがあったらそんなことになるんだよ!? 確かに討伐対象は『ギガスグランド』という強力なモンスターだ。一筋縄ではいかないだろう。でも、話によるとシャルロードたちは『ギガスグランド』と戦っていないと言うではないか。それなのに70人近くが死んだってのか!?
なんだか悪い夢でもみているみたいだ。
もしかしたら『ギガスグランド』は俺が思っている数百倍も強くてヤバいモンスターなのかもしれない。だからその部下も強くて……? うう、そう考えると、やっぱり様子見にしたのは正解だったかもしれないな。
「なんだか すごいことに なってるね」
「凄いなんてレベルじゃないよ。メシュアは知らないかもしれないけど、あのシャルロードって男は凄い人なんだ。こんな事態は異常だよ」
「それだけど ほかの みにめしゅあが おもしろいことを きいたらしいよ」
「というと?」
「なんでも かれらは なかまわれを はじめたみたいだね!」
メシュアの口から耳を疑いたくなるような言葉が飛び出した。
「仲間割れだって!?」
「ああ いきなりひとりのおとこが あばれだしたらしいんだ」
「いきなり?」
「そうさ それで ほかのひともあばれて ぱにっくに なったみたいだね」
想像できないな。彼らはクエストに出発する前に噴水広場で集まり、そこでシャルロード統率の元、『ギガスグランド』討伐という目標を掲げ一致団結していたではないか。それなのに仲間割れ? しかも70人近くが死んでしまう程の?
「何か裏があるんじゃないか?」
「うーん、どうだろうね? もうすこし さぐってみるかい?」
「悪いがそうしてくれ。もう少し情報を集めたい」
「りょうかい!」
☆ ☆ ☆
俺はメシュアに情報を探らせながら、自分でも情報を集めることにした。盗み聞きするだけでは集められる情報に限界があるだろう。とりあえずは、よろず屋のおっちゃんにでも会いに行くか。
「あら、いらっしゃい」
そこには知らないおばさんがいた。優しそうな雰囲気全開のお母さんタイプといった感じだ。声の感じも柔らかい。
「あれ? ここ、よろず屋なんじゃ?」
「あら。知らなかったの? このよろず屋は夜になると道具屋になるのよ」
そういえばそうだった。すっかり失念していた。この時間、よろず屋のおっちゃんは弟さんと二人、工房で作業に勤しんでいるんだったな。熱心なことだ。
「少し聞きたいことがあったんですが、仕方ないですね」
「聞きたいこと? 私でよければ喜んで聞くわよ? 人と話すのは嫌いじゃないもの」
このタイプは話し出すと長い、ような気がする。偏見ではあるけれど。
「いえ、大丈夫です。ちょっと武器のことについて聞きたかっただけなんで」
「そう? でも、私こう見えて武器のことにも詳しいのよ? なんたって昔は父が経営するよろず屋の看板娘だったんだから」
「ははぁ」
「今じゃこんな風になっちゃったけど、昔は結構モテたのよ? 懐かしいわねぇ。あの頃の私は、まだ何も知らなかったんだわ。生きていくということ。そして死んでいくということ……」
この流れはマズイ。
なんとか切り抜けなければ。
「そう、なんですか。さぞ苦労されたんでしょうね。それじゃ、俺はこれで」
「こらこら、そんなに急ぐことないでしょう? 急いては事を仕損じるって言うじゃない?」
「いやしかし……。これからちょっと用事がありまして」
「まったく、最近の若い子は。あぁ、若い子と言えば、近頃珍しい子を見たんだったわ。ここら辺じゃあんまり見かけない子でねぇ。それにすごく強そうだったし? なんていうかこう、筋骨隆々! というか? それで印象に残っててね。誰かとコソコソ話してるみたいだから、悪いとは思いつつも、ついつい話を盗み聞いちゃったのよ――」
はぁ、疲れた。まさか三十分も拘束されてしまうとは。
でも、おかげで良い情報を得られた。
もう少しだけ情報を集めたら宿屋に戻ろう。そしてメシュアと作戦を練ろう。今回の一件、うまく立ち回れば、一石二鳥どころか一石三鳥くらいは狙えるかもしれない……。
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