メシュアで情報を集めよう(前)
俺がクエストを終えて戻ると、『ぺレスロウレ』の街はなにやら騒がしい雰囲気に包まれていた。俺がクエスト攻略に費やした時間は移動時間も含めて八時間程度ではあるが、その間に何かあったのだろうか? そう思っていると、街ゆく人たちの声の中から驚きの言葉が聞こえてきた。
まさかあのシャルロードでさえ失敗するだなんて!
ああ。なんでも雷が通らなかったらしいぞ!?
雷神化は!?
仲間を巻き込むわけにはいかないだろ! やれるならやってるって!
なにやら耳触りの悪い言葉ばかりが並べ立てられているが、まさかシャルロードたちは『ギガスグランド』の討伐に失敗してしまったのだろうか? そこまで考えて俺は首を振った。そんなバカな。あのシャルロードに限ってそれはないだろう。
シャルロードはその凄まじい能力で『雷帝』の称号を授けられたほどの男だ。
いくら相手が鋼鉄の外皮を持つとはいえ、負けるとは思えなかった。それに、雷は鉄を通り抜けるはずだ。相性的にはシャルロードの方が有利じゃないか。
まさか『ギガスグランド』にすら辿り着けなかっただなんて!
その一言を耳にした俺は思いもせずに硬直してしまった。
なんだって? 『ギガスグランド』に辿り着けなかった!?
それは一体どういうことだ!?
……とりあえず宿屋に戻ろう。
メシュアを分裂させて情報を収集する必要がある。
一体全体シャルロードたちにどんな不測の事態が起きたというのだろう?
俺は急ぎ足で宿屋に戻り詠唱した。
「サモン!」
召喚するのはもちろんメシュアだ。
「さっそくだね! つぎのあいては だれだい!?」
メシュアは戦う気満々である。冒険を夢見ていたとは言うが、メシュアはある意味では戦闘狂的な一面も備えているのではないだろうか? 俺はそんな気がしてきた。
「残念ながら次の相手はまだいないよ。それより、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだ」
俺はメシュアに分裂するよう命じた。
以前マッチョスを見かけた時には盗聴器的な役割をしてもらったが、今回、その対象は『ぺレスロウレ』の街全域である。
「シャルロードたちになにがあったのか、集められるだけ情報を集めてきて欲しいんだ」
「なるほど! つまりそれは すぱいというやつだね?」
違うが?
とつっこむのも野暮かもしれない。メシュアがそのつもりなら、それはそれで問題ないだろう。
「ま、そういうことかもしれないね。とにかく、メシュアは誰にも見つからずに情報を集めること! そして何か問題があったら……」
俺の言葉を遮ってメシュアは先回りした。
「ちゃんとしらせるよ! その みにめしゅあにね!」




