謁見
* * *
空を飛ぶこと数時間、レイリアはある城が見えたところで高度を落とした。
『あれがイセリナ様の居城、ファーセリア城よ、エディ』
やがてレイリアは着地して、俺とエセルナーダを下ろした。
レイリアは再びエルフの女の姿に戻る。
「いつもは報告はエディの役目だけど、今回はわたしが現状をイセリナ様に話すわ」
「そうしてくれ。全て話して構わない」
俺とエセルナーダはレイリアの後ろを歩き、城内に入る。
謁見の間に俺は通され、エセルナーダとレイリアは奥に通された。
三〇分くらい経っただろうか、謁見の間に三人が現れたのは。
イセリナ姫殿下は三〇代半ばで、貴族としては質素にも見えるドレス姿で現れた。
「現状はお伺いしました。エドワード・クリスティーンに代わってエセルナーダを救っていただき感謝します。名前は?」
「覚えてはいません。気が付いたら、その、エドワード卿の肉体に……」
「あなたのことは、クリスティーン家の秘術が関連しています。わたしの口から言ってもよいか迷いましたが、言いましょう。あなたの魂が取り込まれたその肉体は、人間ではなく、戦闘用ホムンクルスなのです」
「ホムンクルス? 人造人間ということですか?」
「ええ。クリスティーン家に代々伝わる錬金術の賜物。作られた騎士。それが今のあなた」
流石に俺は言葉を失った。
「とりあえず、しばらく本国に帰して様子を見よう、という話になってはいるけど、状況が予断を許さないだけに、緊急招集はありうる。あなたに無理強いしてよいものかどうか迷うけど、これからもあなたがエドワード・クリスティーンであってくれると助かるわ」
イセリナ・ファーディガンはそう締めくくった。俺は城内の客間に通され、そこで眠った。
と言っても横になっただけで、いつになっても眠くはならなかった。
寝て、目が覚めたらあの懐かしい二〇二〇年の東京に戻っているかもと期待して、ただひたすらに神に祈った。
「この悪夢から覚めますように」と。
しかしいつになっても眠れず、そのまま朝を迎えた。