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断罪機神ヴェストリアーク  作者: 木村さねちか
ネームレスマン
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塔とドラゴン

 塔の最上階の窓から月明かりが漏れる。最上階には下の騒ぎが伝わってなかったのか、衛兵が一人いた。

「なんだ! 貴様ら!」

 衛兵は剣を抜き怒鳴った。

「悪いが、殺したくない。鍵を開けて傍観してくれ」

 俺はそう言った。流れに任せて人を殺めてきたが、殺人狂になったわけじゃない。

「悪いけど、エディ、説得は無理よ」

 レイリアはそう言うが、俺は黙って男に手を差し出す。男がわずかに腰を落としたのを見て、俺は剣を突き出して男の腹を刺した。

「くそっ! 殺せ!」

「そうするさ。君のためにも」

 俺は男の首を一撃で落とした。

「時代が悪いのよ、エディ、あなたのせいじゃない」

 レイリアはそう俺を慰める。人を殺すごとに黒い何かが自分を犯すような気がして、俺は吐いた。

「慣れてもらわないと、困る。あなたをみんなが必要としてる。あなたは平和な国からきたのね? わかるわ。こんなの慰めにもならないけど」

「いや、大丈夫だ」

 そう、大丈夫だ。この状況が今の俺の現実。かつて俺が社会に対して抱いた復讐の舞台。俺が、英雄になれる約束の地だ。

「そういえば、聞いてなかった」

 鍵を探すレイリアに後ろから尋ねた。

「なにを?」

「この世界の名前だ」

「ゆっくり話したいけど、簡潔に言うわ。人類と地球は滅びた。神と悪魔の戦いで。でも、わずかだけど生き残った人類もいた。彼らを助けたのはニューワールドオーダーズ。人類救済のために結成された魔王ルシファーの軍団。彼らは人類のために戦い、ここ、『地獄』を人類の住まう地とした。ここから帰還したら全て話すわ」

「ふっ、くくっ! じ、地獄か!」

 俺は思わず笑ってしまった。あの竜女王フェイトは、とっくに俺の願いを叶えたのだ。俺はもう既に地獄にいるのだから、これ以上俺が人の業に責められることはない。地獄の法は力なのだから。

「大丈夫? 本当に……」

「大丈夫だ、レイリア。気にしないでくれ。鍵は?」

「あったわ。急がないと」

 レイリアは尖塔の頂上の部屋の鍵を開け、中に入った。月の薄明りの向こうに、ベッドに腰かける女が見える。

「エセルナーダかい?」

 俺は女に問いかけた。

「ええ、クリスティーンね? それにレイリアも。わたしのせいで危険な目に」

「無礼を承知で訊きたい。手遅れじゃないだろうか? 意味をはき違えず言ってくれ。その言葉次第では、俺はここの主を殺す」

「大丈夫です。本当に。あなたは本当にクリスティーン? なんだか声の感じが違うわ」

「話はあとで、エディ、エセルナーダ。とっておきを使うわ」

 そう言うとレイリアは首に嵌めていたチョーカーを外した。赤い閃光に包まれてレイリアの姿が赤い光球に変わり、それは別の者になり始める。爬虫類のような鱗、長い首、長い尾、大きな一対の翼、ドラゴンの頭、赤い爬虫類の瞳。

 ドラゴンが咆哮して、尖塔の壁を尾で打って破壊する。

『乗って、エディ、エセルナーダ』

 テレパシーのようなレイリアの声が聞こえる。

「お前、エルフじゃなくドラゴンだったのか……」

 俺は彼女にまたがり、エセルナーダの手を引いて竜と化したレイリアの背に乗せた。

『たてがみにつかまって。竜化して飛んでいられるのは夜だけなの』

 レイリアはそう言うと尖塔の頂上から飛び立った。

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