燃える塔
「いくわ! 剣を抜いて!」
レイリアの合図に合わせて俺は剣を抜き、門の吹き飛んだ尖塔に足を踏みいれる。その中央には炎の巨人が鎮座し、塔の中は焼かれていた。俺は炎の巨人の右を通り抜け、二階に続く階段に足をかけた。二階から慌てた様子で一階に降りてくる衛兵の一人目を袈裟懸けに切り殺し、死体を足で蹴り、階段からどける。
「待ち伏せだ!」
二人目の衛兵が抜刀しながら叫ぶ。俺は階段を三つ登って、その衛兵の大上段の斬りをかろうじて剣で受け止めて、剣を横にないだ。
「サラマンダーを出すわ!」
そうレイリアの叫びが聞こえて、俺は中腰になった。その上を飛ぶように、炎でできたオオトカゲが、俺の脇を通り抜けて二階へと回った。二階からは熱風が吹き付け、肉の焼ける匂いがした。
「もういいわ。上に行きましょう。この騒ぎで衛兵が増える前に、事を済ます」
いつの間にか俺の背後にいたレイリアがそう声をかける。俺は抜刀したままで煌々と輝く炎に焼かれる二階に入った。数人の衛兵が炎に焼かれて踊っている。俺は彼らの苦しみを想い、まだ動いている炎に包まれた衛兵に止めを刺して回った。
「行きましょう。この階段をひたすら上よ」
レイリアの指示に一つの疑問が湧き、質問してみた。
「行くのはいいが、どう逃げる? この騒ぎだ」
「奥の手を使うわ。心配しないで。下はイフリートとサラマンダーが守る」
「わかった」
俺はレイリアの後ろに回り、尖塔を上に上った。