表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪機神ヴェストリアーク  作者: 木村さねちか
ネームレスマン
6/76

侵入

「終わったようね」

「何とか……な。表を見張ってくれ。俺は奴らの衛兵の服に着替える」

 そう言うと俺は首を折って殺した衛兵の服をはぎ取って着替えた。

 手が殺人の罪に震え、ボタンがうまく外れずに苛立って舌打ちをした。

「変わるわ、あなたは脱いで」

 レイリアはそう言うと俺の代わりに衛兵の服を脱がせて、俺に手渡す。

 少しサイズが大きいが、違和感を感じるほどではない。

 俺は上着に袖を通し、レイリアが次いでズボンを渡す。

 下のボロのその下には下着さえなかった。

「この国では下着はないのか?」

 そんなことを俺はレイリアに訊いた。

「あるけど、昔のあなたは履かなかったらしいわね」

 そう言いながらレイリアは俺の男性器を見て微笑んだ。

 こいつは絶対にビッチだ。

 ズボンを履き、深呼吸をして、俺はレイリアに言った。

「もう大丈夫だ。落ち着いた」

 レイリアは「どういたしまして」とブーツを揃えて俺の足元に置いた。

 俺はブーツを履きながら訊いた。

「で、その尖塔はどこにある?」

「ロレイヌ城塞の地図もあなたの記憶にあったはずだけど……簡単な地図を書くわ」

 レイリアはそう言うと羊皮紙とペンで地図を書いていった。ここはロレイヌ城塞の東側に位置し、エセルナーダが幽閉されているであろう尖塔は北西にあるらしい。

「ここか。うまいこと行けばいいが……」

「さっきの様子なら多少の戦闘には耐えられそうね。地図が頭にあるわたしが先導する。あなたはわたしに付いてきて」

「わかった」

 そう言うとレイリアは城塞外壁に沿って廊下を歩く。俺はどうしようもなく喉が渇き、唾を飲んだ。通りがかる衛兵に怪しまれぬように、堂々と胸を張ってレイリアの後に続く。問題の尖塔前までは無事にたどり着いた。

「ここね。少し待って。使い魔に中を偵察させるから」

 レイリアはそう言うと、両手を合わせるようにして短い呪文を唱える。おそらく使い魔を呼んだのだろう。青い炎のようなものに包まれた妖精が両手の中に現れ、レイリアの手から離れて尖塔の頂上の窓に入った。

「いたわ。エセルナーダは無事。少し待って、中の衛兵を調べるから」

「ああ。それより喉が渇いたんだが……」

「ふふ、あなたはエディと違って人間らしいわね。前のあなたはまるてゴーレムのような男で、そんな弱音は吐かなかったわ」

「そいつはどうも」

「これでもあなたを心配してるのよ。これ」

 そう言うとレイリアは水筒を差し出す。革袋の飲み口を口につけて喉を潤す。

「中の様子は?」

「一階に衛兵が四人。二階に八人。一階の衛兵はさっき放ったイフリートに始末させるわ。あなたはまっすぐ奥の階段に行って、そこでなら囲まれないから一対一よ」

「八人抜きか」

「さっきの様子なら大丈夫。実際に戦うのは数人でいいわ。サラマンダーを呼んで二階も焼くから」

「そうしてくれると助かる。俺にとってはさっきのが初めての戦闘なんだ」

「大丈夫。判断も適切だったし、あなたはパニックにならなかった。イフリートに先制攻撃させるわ。門から離れて。爆炎で門を吹き飛ばす」

「わかった」

 俺は尖塔の門から横に三メートルほど離れ、剣に手を添えて待った。

 レイリアは門を挟んで反対側に立ち、大きく頷いて合図を出す。

 轟ーーという爆音とともに、尖塔の門が吹き飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ