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君の心は曇り、時々幸せ。  作者: シュート
第2章
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はじめての友達

 事の始まりは三時間目の時だった。

 斜め前の席のやつが消しゴムを落とし、それがコロコロと俺の足もとまで転がってきた。知らんぷりしようと思ったその時、「人の役に立ちなさい」ふとその言葉を思い出す。

「はい。落としたでしょ」

 俺は足元の消しゴムを拾い上げていた。

「こんな丸っこいのすぐ転がってどっかいっちゃうよ。新しいの買いなよ」

 おまけに余計なことまで口走ってしまう。

 しかしそんな俺に彼は優しく笑って見せた。

「そうするよ! ありがとう須藤!」

 クラスにこんな人いただろうか。

 彼の笑顔につられて微笑みがこぼれそうになるのを堪え、慌てて板書を写しているかのような態度を取ると、彼は再び前を向いた。

 しかし、彼はその後も何かと俺に話しかけて来た。

 教科書を見せてくれだとか、昼飯一緒に食べようだとか。そしてそれは下校の時間まで続いた。 

「須藤! 一緒に帰ろうぜ!」

 俺は彼の厚意に素直になれず、強く当たってしまう。

「何が目的だ」

 彼は一瞬困ったような顔をしたが、すぐに笑顔に戻って答えた。

「君と仲良くなりたいだけだよ!」

 果たして友達というのはこんな簡単にできるものであっただろうか。それとも本当に神様が俺への幸福を許してくれたというのだろうか。

 下駄箱で聞いた話によると、彼は藤崎というらしい。藤崎智也。

 帰り道俺はどうしても気になって藤崎に尋ねる。

「藤崎は気にしないの?」

「何が??」

 コンビニで買ったコロッケをかじりながら怪訝そうにこちらを眺める。

「知ってるだろう? 俺がみんなから嫌われていること」

 すると藤崎はコロッケを食べるのをやめてこちらをじっと見つめる。

「少なくともそのみんなの中に俺は入っていないな。誰が誰を嫌いでも知らない。俺が仲良くしたいと思った人と仲良くするだけさ」

 正直、俺が苦手なタイプだ。偽善者が言うようなセリフを素で言いやがる。顔もそこそこかっこいいし、その気になればクラスの一軍になれるだろうにそうしないのはその正義感からだろうか。

 けれど、思ったより早く第一段階が突破出来た。

 そう。味方を一人付けること。

「なあ少しおかしな話かもしれないが聞いてくれるか?」

 結果、俺は相崎を裏切る道へと進んだ。

 俺は崩れた人間関係を修復する手伝いがしたいという自分の意図を喋った。ここで折れたらこいつとは終わりだなって戦場に行くような気持ちで打ち明けた。

 しかし結果は思っていたものとは違っていた。

「そうか! やっぱりお前はいい奴だな! それでお前の名誉が挽回できるなら喜んで協力するよ!」

 ダメだ……こいつお人よしすぎる。それともただバカなだけなのか? いじめの対象である俺と一緒にいることでターゲットが自分にも来るという可能性を考えないのだろうか。

「それじゃあ連絡先教えてくれよ!」

 こうして俺はまた一人メール相手が増えた。

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