「思えば、なろう主人公みたいな人生じゃった……。だが、こんな自分も許してやるわい……」 〜シサマさん御臨終です〜
皆様今晩は!シサマという者です。
以前の私のエッセイでも述べた事があるのですが、私は所謂「氷河期世代」の人間で、30代半ばまで正規職員の経験がありませんでした。
今回は、そんな私の生き様が意外にもテンプレ的「なろう小説の主人公」とダブる所が多かった点を振り返り、なろう主人公の幸せ、作品そのものの幸せについて話していきたいと思います。
私は子どもの頃から、性格的に良く言えば穏やかなマイペース、悪く言えば好きな事以外は怠け者なタイプでした。
従って、Fラン大学在籍中の就職氷河期発生で自らの将来に乗り越えるべき障壁が現れる等とは微塵も考えておらず、普通に3回位就活に失敗しただけで楽な方へと逃げてしまいます。
具体的に言えば、好きな音楽を続けて将来の可能性があるかの様に自らを納得させ、収入は少ないが責任も小さい「フリーター」の世界に逃げ込んだんですよね。
勿論、氷河期世代には私の様な人間ばかりではなく、一生懸命努力しても報われず、家庭環境の問題や生活費、就活費の不足からやむ無くフリーターを続けざるを得なくなった人の方が寧ろ多いです。
その様な人達と比較して、自分は氷河期世代という現実に余り怒りを感じず、真面目に頑張る学生時代の仲間達に申し訳無いという気持ちになっていました。
ですから、仲間が落ち込むと励ましに行ったり、カラオケ等ではスキル的にも率先してバカをやっていましたよ。
私自身も、好きな事をやれてさえいれば貧しさや周囲の視線に耐えられる年頃だったから出来たのでしょうね。
そんな私も、自分のミュージシャン、ソングライターとしての能力の限界を痛感し、地元の北海道に帰省して介護の資格を取得します。
ここまでの私を「なろう主人公」に例えると、現実世界でうだつの上がらないほのぼの系キャラが、介護業界という異世界に転生したと言えますよね(笑)。
そして、デイサービスという介護業界に転生した後、私は予想外のスピードで人気者になれました。
あくまで現実世界ですからチート能力等は貰えませんでしたが、持ち前の音楽スキルで演歌カラオケやパーティー弾き語りで利用者様の喝采を浴び、加えて大学の勉強を真面目にやってきたが故の雑学知識を活かす事で、現役時代はインテリだった利用者様や、社会的な地位が高かった利用者様からも気に入られたのです。
更には仲間を励ましたり、時には率先してバカをやってきた経験を活かせた事で、介護福祉士の資格と念願の正規職員の座を挫折無しでゲットする事に成功しました。
ここまでの私を「なろう主人公」に例えると、徐々に成り上がりの成果を上げ、周囲に「シサマさん凄い!」と持ち上げてくれる人が現れてくれたと言えますよね(笑)。
しかし、ここから私の試練が待っていました。
パーティーを盛り上げたり、笑いを取ったりする事は得意でも、肝心の介護スキルが正規職員としてはやや劣っており、正規採用の条件だった夜勤もある小規模多機能施設では、叩き上げの先輩職員から厳しい叱咤を受ける事となります。
仕事のストレス故なのか叱咤はエスカレートし、休み時間の話し方や机の手の置き方まで皆の前で罵倒される様になった私はノイローゼ気味になり、夜勤中の失神をきっかけにその職場を退職する事になりました。
それから鬱状態が少しの間続きましたが、家族関係が良好だった事も幸いし、回復後は給与と負担の少ない施設でリハビリ的に働き、正規職員に復帰した近年はスキル最優先の真面目な態度はキープしつつも、少しずつ以前のキャラに戻して行く過程にチャレンジしています(笑)。
しかしながら、今冷静に振り返って見ると、私に厳し過ぎると感じていた先輩職員は特養老人ホーム出身の叩き上げで、常に命の危機や利用者様の修羅場と隣り合わせの経験を積んでいましたし、40代の男性正規職員として採用された私に対し、将来的な経営参画の可能性も含めてスキルや責任感を厳しく指導するのは当然とも言えますよね。
私はこの時初めて、30代半ばまで責任の少ないフリーターだった弊害を思い知る事になりましたし、自分の人生に納得出来ずに60歳位でいきなり周囲にブチ切れる、迷惑ジジイになる可能性にも気付けて良かったと思います。
正規職員になれないのは当時の経済・社会情勢に問題がある場合もありますが、迷惑ジジイになるのは完全なる自己責任ですからね(笑)。
さて、ここまでの流れを「なろう主人公」に例えてみましょう。
私に厳しい先輩職員は、時に「なろう小説」の悪役の様な存在感を見せていましたが、この先輩職員をチート能力で瞬殺してしまっても良いのでしょうか?
いや、良くないですよね(笑)。
「ざまあ」に近いレベルで見返す為に長く因縁を持たせるか、主人公の成長とともに分かり合い、力を合わせてラスボスと戦う、そんなレベルの「魅力的な悪役」にした方が良いですよね。
私自身を「なろう主人公」に例えたとしても、憎んでいた悪役の苦悩を知り、対等に渡り合ってから共存出来るストーリーとともに人生を歩めた方が幸せだと思うのです。
賛否両論のテンプレ的「なろう小説」でも、なろうユーザー以外からも評価される作品の多くには、瞬殺するには惜しい魅力的な悪役が登場しているはず。
私自身はテンプレ的「なろう小説」に余り興味は無くとも、生き様が既に「なろう主人公」なので否定は出来ません(笑)。
主人公と作品の「幸せな未来」(書籍化やアニメ化、或いは長く愛されるという結果も含みます)の為に、チョロい障害物レベルや、背景の掘り下げも無いゲスなだけのレベルとは違う「魅力的な悪役」の存在から目を逸らさずに、キャラクターとストーリーを磨いていただけると嬉しいです!